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2019.05.09「現職への不満は転職理由として話せないのか」~企業側からみた面接の問題提起シリーズ~

<細井智彦> 細井智彦事務所代表 転職コンサルタント 大手人材紹介会社にて20年以上転職相談や模擬面接などの面接指導に取り組む。企画し立ち上げた面接力向上セミナーは12万名以上が受講する人気セミナーとして現在も実施中。採用企業の面接官向けにも研修・講義を開発し、人事担当から経営者まで、260社、面接官3000人以上にアドバイスをしている。2016年3月に独立し、フリーな立場から、引き続き個人と企業の面接での機会創出に取り組んでいる。著書『転職面接必勝法(講談社)』ほか多数

 

「現職への不満は転職理由として話せないのか」

前回の「『御社は第二希望です』と話すことについて」(https://www.ee-ties.com/magazine/44161/)には、かなりの反響をいただいたので、今回も企業目線でみた、いまの面接に対して感じていることを書きます。テーマは「転職理由」にします。


面接官が転職理由を聞く理由と判断基準

中途採用面接ではほぼ間違いなく聞かれる「転職理由」。ではいったいなぜ転職理由を聞く必要があるのでしょうか。面接官向けの研修で、わたしはよく面接官に、当たり前のように聞いているその質問はいったいなんのための質問か?目的を問うのですが、もぞもぞしてなかなか回答が出てこないのが転職理由です。回答を求めると「どんな理由で辞める人なのか、人となりが知りたい」というような、ぼわっとしたものが多いのですが、まとめるとほとんどは、再び辞める要素がないか、再離職のリスクをチェックするため、という回答です。能力は再現性を求めますが転職理由は再現されると困るというわけです。では、聞いた転職理由がどんなときにGOサインをだすか、その判断基準は「納得感があるか」ということにほぼ集約できます。

ホンネが聞きたいのは騙されたくないから。

そして、そのために面接官がやっきになること、それは「ホンネ」をひっぱりだすことです。このホンネを引き出すことで、納得感を得られればよいのですが、そうなりにくい、ってところが実に悩ましいところなのです。

なぜ、面接官がホンネを引き出すことにやっきになるのか、これはまだ候補者との間に信頼関係が成立しておらず、騙される可能性があるから、ということになります。転職理由を聞く目的をシンプルな質問にすると「あなたは当社に入社したら前職のように辞めないですか?」「なぜそう言えるのですか」と聞けばよいことを回りくどく探っているわけです。だから突き詰めると面接する側が転職理由を聞く理由は「安心できるか」を確認するとも言えるのです。

 

ホンネが聞きたい面接官にホンネで応えたら不採用になる現実

では候補者がホンネ丸出しで臨んだらどうなるか。話は信用できても今度は内容に離職の再現性を感じてしまったり、実現したいことの可能性が見えてこなかったりと、これはこれで不安になってしまうのです。代表的なのは上司と合わない!という理由。そりゃそうですね。上司と合わないということで辞めちゃうということは、入社後も合わない上司と仕事をすることになればまた辞めてしまうかも、、、合わせる努力はちゃんとできるのかな、、、と本人にも問題がないか探りたくなります。このように、ホンネは知りたいけど、知ったら知ったで逆に不安が増してしまうという、なんとも煮詰ってしまうパラドクス状態が面接では発生してしまいがちです。

 

転職アドバイザーの方法論

このような不満が理由で転職したい人に向けて転職エージェントのアドバイザーがよく用いる手法が、不満をそのまま伝えてしまうのではなく、「現職では叶えられないけど転職先では叶えられそうなこと」として不満を前向きな意見に変えてしまう、というものです。

いまの仕事がいや、ではなく、新しくやりたい仕事がみつかった、で行きましょう!同じことでも裏側からとらえることで、心のありようを変える作戦です。詭弁のようなロジックかもしれませんが、どちらもホンネにできてしまうのです。鉄板アドバイスですね。10日あるゴールデンウィークがのこり3日になったとき、まだ3日もある、と思うのか、あと3日しかなくなったと思うのか、起こっていることは変えられないFACTだが、捉え方は変えることができる、という作戦です。これがいまの転職面接場面での転職理由の伝え方のロジックです。

確かに耳障りはとてもよくなりますが、いまの世の中ではきれいごとに聞こえてしまうこともあるのではないでしょうか。あとこの場合、論理的にみると、もし転職理由が先に書いた人間関係の不満に起因するのであれば、その不満が解消できないと転職しても離職する可能性は否定できないことになり、そのままでは転職理由としては成立しなくなってしまいます。

大事なことは退職理由と転職理由を混同しないようにすること

このなんとも手詰りな状況を打破する方法はないのか。実はないわけではありません。それは「きちんと離職理由と転職理由を分けてとらえ説明できるようにしておく」ことです。不満や不安は転職理由ではなく離職理由です。そして面接では離職理由と転職理由は同義語としてうけとめられがちなので、ここは理由という言葉ではなく「きっかけ」つまり「機会」となった出来事としてとらえます。そしてその機会を得て叶えようとしていること、これが真の転職理由として語るべきことです。転職理由について触れるたびに書くことですが、面接官に納得してもらえるようにするためには、一問一答を考えるのではなくきっかけから実現したいこと、そして応募先を選んだ理由までのストーリーを伝えられるようにしておきましょう。企業と転職者双方がきちんと理解しておかなければならない重要なこと、それは「離職理由と転職理由は一致しない」ということです。


「転職理由」調査結果:一位「ほかにやりたい仕事があるから」

「退職理由のホンネ」の調査結果:一位「人間関係」

 

これらはそれぞれ別の人材会社が実施した転職者への意識調査の結果です。

転職サイトなどでの意識調査をすると日本での離職理由のホンネは、人間関係や給与、休日への不満や、会社の将来への不安によるものが上位を占めており、これが実情だ、ということも転職に関わる者の公知の事実となっています。しかし、このホンネの不満は、面接ではそのまま語られることは少なく、面接までにかなり消失してしまいます。いったいどこに消えてしまうのでしょうか。 これは、消えるというより思考そのものの転換が生じているのです。つまり辞めるきっかけは不満や不安でも、いったん転職を決意したら、あらためて自分と向き合って将来ふさわしい場を選ぼうと前向きになる、ということです。ここを個人と面接側が双方ちゃんとわかっておかないと、先に書いたようなホンネを話すと不採用にされてしまうというなんとも不条理な事態が生まれてしまうのです。言葉が変わると全然理由が変わってしまい退職理由と転職理由が一致していないことにお気づきいただけたでしょうか。この混同こそがいまの面接の問題点なのです。だから退職理由と転職理由は似て非なるものであるという認識を面接官にもきちんと持って臨んでいただきたいと強く思うわけです。

 

面接官を安心させるための準備

候補者側のみなさんにもわかってあげて欲しいことがあります。面接官も採用したいけど不安だ。ということです。だからなんとかして面接官を安心させてあげられるように、以下3点を意識して話せるように準備をしておくといいでしょう。

1:「不満や人間関係の状況を客観的に話せるようにしておく」

2:転職理由、志望理由、それぞれ単体でとらえるのではなく「転職しようと思い立ったきっかけから、応募先を選んだ理由までのストーリーを、理解してもらえるように整理しておく」

3:自分を信じてもらえるように、誠心誠意向き合う。

 

転職理由を話す際に一番大事なこと

実は一番大事だと思うことは、3番目の信用してもらうこと、です。いくらストーリーがきちんとして話が破綻していなくても、なんとなく、この人心の底からこんなこと思ってるのかなあ、と思うことは少なくありません。逆になんか口下手でいまいち論旨もつっこみどころあるけど嘘は言ってなさそうだし、きっといい人なんだろうと思うこともあります。

特に地方に多いのですが中小企業の面接で「私は君のことを信じて本当に大丈夫なのか!」なんてことを真顔で迫って確認してくる直球社長の話はけっこう聞きます。結局人間が人間を判断する場なんて最終的には、信用できるかどうかを全身で感じ取る場であることで、これはAIにはできない原点だと思うのです。

いままでに不本意な転職をした方もおられると思います。そんなときに無理に整合性のあるストーリーを作り上げて話すことよりも大事なことは、「ここならきっと長く働ける」と思って応募している、という理由を自分なりに見つけたら、あとは信じてもらいたいという意思を込めて誠心誠意話すこと、意外に思われるかもしれませんがわたしは、これが人と人とが出会うための原点だと思っています。

 

面接官は、私を信用させて!!と願いながら面接しています。特に関西のメーカーの採用担当者は論理一辺倒ではなく、文脈を理解してくれる人が多く、現職の不満が理由というだけでは不採用にはしません、納得感があるかどうかがポイントです。どうか、薄っぺらな前向きなことばかりで説明するのではなく、自分がどんなきっかけで転職を考えるようになって、どんなことを叶えようとしているのか、そのためになぜ応募先を選んだのか、を理解してもらえるように整理して思いをもって話せるようにして臨まれることをお勧めします。

 

ある会社の採用担当者の名言をご紹介します。

「どうせなら、気持ちよく騙されたい」

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