誰も書いていない転職ノウハウ(その3)面接で企業の「風土」や「人」を理解するための確認事項

<細井智彦> 細井智彦事務所代表 転職コンサルタント 大手人材紹介会社にて20年以上転職相談や模擬面接などの面接指導に取り組む。企画し立ち上げた面接力向上セミナーは12万名以上が受講する人気セミナーとして現在も実施中。採用企業の面接官向けにも研修・講義を開発し、人事担当から経営者まで、260社、面接官3000人以上にアドバイスをしている。2016年3月に独立し、フリーな立場から、引き続き個人と企業の面接での機会創出に取り組んでいる。著書『転職面接必勝法(講談社)』ほか多数


前回までのコラムでは、企業を選ぶときに役立つ情報として、「働きがい」(やりがい、仕事の面白さ、誰かの役に立っているという実感がどう得られるか、といった仕事情報)、「働きやすさ」(残業や休日休暇や福利厚生面の制度などの主に就労環境に関する情報)に加えて、「働き心地」にも目を向けるべきだということを提案してきました。今回のコラムでは、「働き心地」を判断するための情報をいかに集めるか、ということについて書きます。

■目次

1.働き心地を決めるのは「風土」と「人」
2.会社そのものの性格―「風土」は単純な言葉だけでは理解できない
3.会社で働く人との相性―どんな「人」と働くか
4.「風土」や「人」の理解には会社や組織の行動特徴をとらえる
5.面接で居心地や働き心地情報を引き出す質問例

 

働き心地を決めるのは「風土」と「人」

「働き心地」を推し量るために必要な情報はどんなものでしょうか。それは2つあると思います。

①会社そのものの性格「風土

②会社で働く「人」との相性

社風とか風土と昔から呼ばれているような、会社や社員のキャラクターやカルチャー、あとは理念、ミッション、ビジョン、バリューと呼ばれる会社や組織として大事にしている価値観や行動規範のようなものです。

会社そのものの性格―「風土」は単純な言葉だけでは理解できない

この社風というもの。気にする人は多いものの、いざそれを言葉にすると「風通しがいい」みたいに抽象度が高く、どの会社からも出てきそうなものになりがちで、判断材料にはしづらいものです。前回も書きましたが、立派な理想を掲げていても組織がついていってない、って可能性もあります。

あと、ここで気をつけなければならないのは、一言で「風通しがいい」といってもその実態は様々だということです。

例えば、お互いの個性を尊重し、不満を含めて上司であろうが遠慮なく言いたいことが言えて仕事で健全な喧嘩ができる会社もあります。一方で、仕事はトップダウンだけど上司がメンバーのプライベートまでズカズカと踏み込んでしまうような、公私を混同した踏み込んだコミュニケーションをとることを風通しがいいと表現する会社もあります(それをいいと思う人はいまの時代、少ないでしょうが)。

ということで、社風を探るために必要なのは、社風を表す言葉を問うことではなく、社風を司っている人たちや、社風が反映されたエピソードや現在の仕事の進め方、過去から形成されてきた風土のヒストリーを探ることです

会社で働く人との相性―どんな「人」と働くか

働き心地に大きく影響するのは人間関係です。周りの人たちとの関係にストレスがなく、周囲から認められ自分が必要とされていると感じることができるか、あるいは、なにか居心地の悪いようなときに、逃げ場所となる安全地帯がつくれるか、といった、自分の居場所があるかどうかを推し量ることができるといいですね。

どんな「人」と働くのか。社長、社員、取引先、自分が関わる人達。その人たちがどんな思いで、なにを拠り所に働いているのか。どんなにおしゃれな勤務地で綺麗なオフィスであってもそこで一緒に働く人が合わなかったら?仕事は面白くても上司との関係がうまくいかなかったら?どうでしょうか。逆に、仕事はハードでつらいことも多いが、周りの人達との関係性がとてもよかったら、もうひとふんばりできるのではないでしょうか。

さて、どうやったら会社やそこに関わる人達のキャラクターをチェックできるのでしょうか?

「風土」や「人」の理解には会社や組織の行動特徴をとらえる

これには前回書いたとおり、面接での本質をつかむための「実際の行動事実を確認するという」技術が役立ちます。その会社らしさが現れそうな場面や、そこで働く人達の日常行動を、もし自由に企業を面接できるとしたら、という感覚でとらえてみると、次のような確認事項が浮かんできます。

■従業員に関する情報

・自分と同じような人間が活躍できているか
・どんな人が働いているのか、部門の性別や年齢構成、勤続年数
・転職者の声、入社前後のギャップ
・転職者の比率や転職者の前職の業務内容

■ マネジメントの癖・会議体・組織の作り方

・会議の進め方、決裁の流れ、意思決定のプロセス
・決定事項がトップダウンかボトムアップか
・部門への権限委譲の状況
・よく使うフレームワーク
・組織図や組織づくりのコンセプト
・派閥の存在は?

■従業員のタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションの状況・壁

・組織間・上下間のコミュニケーション状況
・メンバーの話を聞くしくみや習慣
・役職者との接触頻度や対話内容
・飲み会の頻度やメンバー、会話の内容、参加の自由度

■人材育成

・育成のしくみ、OJTの中身、導入の流れや教育ツール
・マネジャーへの研修内容
・報連相や(不満を含めて)意見の言いやすさを担保するしくみ
・異動の可能性 希望の実現性
・チャレンジを促すしくみ、失敗のエピソード

■評価

・人事評価のフィードバックの仕方
・社長やマネジャーからの発言、経営情報の共有
・人事配置の方針、昇進・昇格、昇給、異動

■会社としての倫理観や価値観、意思決定での優先順位

・会社の方針、事業計画と具体性
・仕事をするうえで優先される価値観
・どんな人が評価されているか、評価指標
・目標設定にビジョン、ミッション、バリュー、ゴールなどがどう組み込まれているか、会社が謳う価値観が目標になっているか
・意思決定の際にでる口癖、よく出てくる言葉や社内用語
・上司や社員はどのような理念や価値観で仕事をしているか
・コンプライアンス組織の影響度、リスクマネジメント体制

■事業環境

・カイゼン、新規事業の提案数と実現数
・成長性 持続・継続性
・需給状況・発展性
・シェア 競合環境
・収益状況 予算のとりやすさ
・事業遂行上求められること

面接で居心地や働き心地情報を引き出す質問例

上にあげたような視点から企業の状況を把握できればそこでの「働き心地」のイメージが浮かんでくるはずです。さらに上記の確認事項を質問にすると以下のようになります。

・わたしと同じようなキャリアの人は入社されていますか?
・部門の責任者の方(中小企業なら社長)はどんな方ですか?どんなタイプの方だと思われますか?
・私の配属される予定の部門のみなさんはどんな方々ですか?(年齢、性別、勤続年数、転職者の有無といたら転職者の前職は?)
・自社らしいな、と思うのはどんなときですか?

など

ただ、これらの質問をそのまま無邪気にしてしまうと印象が悪くなることがあるのが実際の面接の悩ましいところです。そこで、次回は面接という特殊な場面で質問する際のコツについて書きます。

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この記事を書いた人

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細井 智彦

細井智彦事務所代表
転職コンサルタント

大手人材紹介会社にて20年以上転職相談や模擬面接などの面接指導に取り組む。
・12万名以上が受講する面接力向上セミナーを立ち上げる
・採用企業の面接官向け研修・講義を開発、これまで人事担当から経営者まで350社、面接官3000人以上にアドバイスを実施。
現在は独立し、フリーな立場から、引き続き個人と企業の面接での機会創出に取り組んでいる。
著書『転職面接必勝法(講談社)』ほか多数

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