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2019.06.02企業の「働き方改革」を面接でどう読み取るか

<細井智彦> 細井智彦事務所代表 転職コンサルタント 大手人材紹介会社にて20年以上転職相談や模擬面接などの面接指導に取り組む。企画し立ち上げた面接力向上セミナーは12万名以上が受講する人気セミナーとして現在も実施中。採用企業の面接官向けにも研修・講義を開発し、人事担当から経営者まで、260社、面接官3000人以上にアドバイスをしている。2016年3月に独立し、フリーな立場から、引き続き個人と企業の面接での機会創出に取り組んでいる。著書『転職面接必勝法(講談社)』ほか多数

 

企業の「働き方改革」を面接でどう読み取るか

今回は「働き方改革」について思うことを書きます。

本来「働き方改革」には、非正規労働者の処遇改善、賃上げ、ダイバーシティの推進としての女性、高齢者、外国人の活用、病気治療中や介護しながらの就業、副業、勤務形態の多様化など、雇用問題の解決課題のほとんどすべてが網羅されているのですが、ここではそのなかから、残業や休日といった労働環境の改善に絞ります。

 

「働き方改革」という言葉は正直好きではありません。理由は、なんとなく、です。よくわかりません。ただ、この改革が従業員のほうから湧き上がってきたルネサンス的なものではなく、過労死問題に端を発した、どこか犯罪を犯してきた人の更生のような、よくないものを元にもどすために、とにかく残業を減らさないと人も採れないし社員のメンタル不調が増えてしまう、といった企業主体の論理で、当の従業員が主体的になれず巻き込まれてしまうような押し付け感を覚えてしまい、反発しているのかもしれません。それに残業を減らすことの企業にとっての目的は単に従業員の人間らしさの回復ではありません。時間あたりの生産性の向上であり、体調不良になる従業員によるロスを減らすことです。労働時間の削減を理由に売上目標を減らしているメーカーは見たことがありません。だから、ワークライフバランスのとれた会社を目指す!とか言われても、どこかきれいごとに聞こえてしまうのです。

 

大手メーカーは残業削減や休日創出にガチで取り組んでいる

いきなり文句炸裂状態で熱を帯びてしまいましたが、それはさておき、誰かルールを決めてくれたほうがなにかにつけて楽ちんということもあり、残業が減り休日が増えるのはいいことです。そして実際、関西の大手メーカーのほとんどすべてが、労働環境の改善に真摯に取り組んでいます。面接官向けの仕事でも、自社の魅力のなかに、働きやすさを改善するための取り組みが必ず出てきます。そして、大手メーカーは、一度決めたらそれを徹底させることには従来から相当がんばれます。だから働き方改革も同様に、数値目標を決めてぐいぐい進めているところがたくさんあるわけです。面接時のPRにも働き方改革の波は押し寄せています。

 

ある会社の面接で面接官が

 

「当社はいま残業や休日出勤が減っており、働き方改革を推進している」

 

とPRのつもりで説明したら、候補者が

「じゃ、売上げは減っているのですか?無駄が多いのか、売上げ減らさないと労働時間はなかなか減らせないと思うのですがどうやって実現しているのですか?」

とカウンターパンチを浴びせました。そこで面接官はしばし、言葉に窮したといいます。

 

目的より手段に着目すべき

この件は、私の残業を減らせ!の大合唱状態の働き方改革に対するもやもやを見事に表してくれました。物事を実行するにはWHYやゴールを意識することが大事なのですが、こと働き方改革については手段がとても重要だということに、です。大事なことは残業を◯時間減らすということではなく、どうやって残業を減らすのか、HOWを考えそれが従業員の働きやすさの改善になることである、ということが前提条件だということです。2020年には残業をゼロにする、と宣言している会社がありますが、最初にこれを聞いたときに、うわ、きびしそう、きっと業績を伸ばしながらだろうし、時間効率を限界まで追い込まれそう、と思いました。

 

大事なことは、減らすことより減らし方

残業を減らすことは数値化しやすいので、いつのまにかそれ自体が目標化してしまいがちです。そして、ひたすらその達成にこだわり、もうだめ、早く帰れ!とオフィスを消灯するとかで残業規制に走って「工夫しろ」と現場に丸投げしているだけでは、だらだら仕事していれば別ですが、いまどきそんな会社もあまりなく、「ただでさえコスト削減と言われ続けてそのためにやむを得ず残業しているのに、こっちに無駄があるとでも言うのか!伸び伸び仕事できなくして誰が喜ぶねん、好きなようにさせてくれ!それより、出張旅費精算の伝票起票とか手間かかるし面倒くさいしなんとかならんのかい!」と私なら逆ギレするでしょう。フリーランスになったいまとなっては、大きな会社のように働き方改革を進めてくれる親切な人など周りにはいませんが。

 

面接では、減らすのではなく増やそうとしているかに注目

さてここで注目したいのは、残業の減らし方について、です。先の例にあげた質問した候補者の指摘はごもっともですが、無駄を減らすだけでなく、効率を上げる、という視点があるということも忘れてはなりません。

 

例えばどんなことがあるかというと

・WEB会議の導入

・サテライトオフィスの開設

・リモートワークの実現

・出張精算処理、経費伝票処理の自動化

・稟議・決済システムの見直し

・会議資料のフォーマットの見直し

・社内SNSの導入

 

などですが、こうやってみると、ほとんどがAIやITを活用したアプローチですね。働き方改革によって残業を減らし休日を増やす歩みは、経費を減らすためのシステムから付加価値や儲けを生み出すシステムに領域をひろげてきたIT化の歴史になぞらえながら進むということかもしれません。

 

大事なことは

「減らすため」ではなく

「生産性をあげるため」になにができるか、

という思想があり、それが行動に結びついているか、です。

 

現場の工夫で無駄をなくしたのか

お金をかけて新しい施策をとりいれているか、

 

この違いに着目すれば、その企業の思想が見えてきます。

 

これから関西のメーカーに応募する人は、面接で、残業がどれだけ減った、休みが増えた、という結果だけを聞かされて終わるのではなく、その背景にある、それをどうやって実現させて、これからさらにどうやって改善させようとしているのか、という取り組み状況を聞いて、そこにお金をかけて生産性を高める新しい取り組みがあるかどうか、といった視点をもって企業選びをすることをオススメします。そして、面接する面接官のみなさんも、どうやって実現させているのか「HOW」がとても重要だ、ということを認識し、候補者に説明できるようにして臨んでいただきたいと思います。

 

おまけ

実は、世の中ですでに究極の時間効率を意識して働いている人達がいます。その一例が、時短勤務の子育て中のマザーたちです。前職ではワーキングマザーが沢山働いていましたが、ほとんどの人はメチャクチャ仕事できるし、実際にします。4時までしか時間がないからなんとかそれまでにしなければならないことに必死で集中します。もともと主婦というのは家事や育児を限られた時間、しかもデイリーでやりきらなければならず、さらにそこに仕事が加わってくると、それはもう、いやがおうにも効率の最大化が求められます。世の人事のみなさんは、偉大なるワーキングマザーたちに時間あたりの効率化のコツを聞けば多くの学びがあると思います。