企業インタビュー
[ 住友電気工業株式会社 ]
「選択と集中をしない」多角化が生む強さと安定感――伸銅から繋ぐ、住友電工・情報通信部門のイノベーション

左から
住友電気工業株式会社 人事部 人材採用部 キャリア採用グループ 主幹 和泉 茂一様
住友電気工業株式会社 人事部 人材採用部 キャリア採用グループ グループ長 高橋 健一郎様
株式会社タイズ 担当コンサルタント 矢田 尚也
株式会社タイズ 担当コンサルタント 杉山 周平
株式会社タイズ 担当コンサルタント 西山 翔大
住友電気工業株式会社は、祖業である伸銅技術を原点に、電線事業から電力、通信、自動車など多岐にわたる事業を展開しています。特に情報通信部門においては、上流の材料・デバイスから下流のネットワーク機器に至るまでを一貫して手掛ける体制に強みを持っています。
今回は、情報通信部門が社会インフラの中で果たしている役割や「選択と集中をしない」という独自の経営戦略、異業種出身者が活躍できる懐の深さまで、住友電気工業株式会社、ひいては、その情報通信部門で働く魅力を人事部のお二人に伺いました。
01. 情報通信の研究開発の最前線から人事へ――お二方のキャリア
――まずは、お二方のこれまでのご経歴と、現在の役割について教えてください。
高橋様:1992年に新卒入社し、約30年間、横浜製作所の情報通信関連の研究開発部門に在籍しました。大学で学んだコンピューターシミュレーションを活かしつつ、実際にモノに触れる仕事をしたいという思いから、最初の配属先は光通信研究所でした。そこでは光ファイバ製造設備のセンサー開発や、光ファイバ融着接続機の画像認識の設計、光コネクタや部品の設計・開発を担当していました。
その後、解析技術研究センターに移り、CAE(コンピューターシミュレーションによる解析・設計)を担当しました。情報通信部門における光ファイバ断線対策や無線デバイスなどの歩留まり改善に携わりました。
研究開発でのマネジメントを経て、2025年に人事部へ異動し、現在キャリア採用を担当しています。異動前には新卒採用の面接官を数年経験していたこともあり、人事部への異動打診は前向きに受け止めました。
和泉様:私は2001年にキャリア入社しました。前職では電子デバイス関連の業務を行っていました。当時、前職は住友電工のGaAs基板を利用している顧客という立場でしたが、前職を離れてから教員経験を経てご縁があり、入社に至りました。
入社後は横浜製作所のフォトニクス事業部で長波系半導体レーザに関する業務に携わり、3年目に電子デバイス部門へ移りました。その後、2004年に設立された富士通株式会社との合弁会社(現在の住友電工デバイス・イノベーション株式会社<SEDI>)で可視レーザ製品の立ち上げやクリーンルーム構築を長年担当しました。2012年に施設設備部長、2017年に安全環境部長を経て、2020年に住友電工東京本社の人事部へ異動しました。
2021年からの4年間は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)へ出向し、スタートアップ助成金支援事業に携わりました。2025年4月に再び人事部へ戻り、キャリア採用を担当しています。
02. 上流から下流までを網羅する強み ―― 「選択と集中をしない」独自の事業戦略

――御社の情報通信部門が社会インフラの中で担っている役割と強みについて教えてください。
和泉様:現代の生活に欠かせないWi-Fiや、海外の情報を日本でリアルタイムに閲覧するのに不可欠な海底ケーブルなど、通信ネットワークにおいて当社の情報通信部門の製品は極めて重要な役割を担っています。
大きな強みは、光信号を生成する半導体レーザなどの最上流のコンポーネントから、光ファイバ、海底ケーブル用の光増幅器(アンプ)、それらを繋ぐコネクタ、さらには下流のネットワークシステム機器に至るまで、ワンストップで一貫して手掛けている点です。また、FTTH(通信基地局に設置される通信機器、Fiber To The Home)に繋ぐ部分は光も無線も手掛けています。つまり上流である光の生成から、下流の高周波半導体デバイスを通じて情報に変換するところまでを一手に担っているのです。
例えば光ファイバについても、外部から材料を調達して加工するだけではなく、元となるガラスの母材(プリフォーム)の段階から自社で製造しています。一貫して技術を内製化しているからこそ、市場において確固たる地位を築くことができています。
――開発から製造まで一貫して手掛けることで、現場ではどのようなメリットが生まれるのでしょうか?
高橋様:異なる部門同士が密接に連携し、製品の性能を根本から引き上げることができる点です。分かりやすい例が、光コネクタの低ロス化(通信損失の低減)です。光コネクタは大きく分けて機構部品と光ファイバから構成されます。コネクタの性能向上は、機構設計の工夫だけでは限界があります。
しかし当社には、光ファイバの開発・製造部門が同じ社内に存在します。そのため、コネクタの開発担当者が光ファイバの担当者に「低ロス化のために、より光コネクタに適した光ファイバを作ってほしい」と直接リクエストを出せます。
社内に多様な技術が揃っているからこそ、局所的な改善にとどまらず、根本的なアプローチで付加価値を生み出すことが可能になっています。
――多岐にわたる事業を展開されていますが、激変する市場環境の中で、どのように事業の安定性を保っているのでしょうか?
和泉様:当社ならではの「選択と集中をしない多角化」こそが、事業の安定性を支える最大の強みです。
当社の多角化は他社と一線を画しており、電力線や自動車のワイヤーハーネス、情報通信の光ファイバ、さらには産業素材に至るまで幅広く展開しています。一見バラバラに見えるかもしれませんが、すべての事業は創業の原点である伸銅技術と電線事業から脈々と繋がっています。
一般的に企業経営では、収益性の高い事業に「選択と集中」を行うのがセオリーです。しかし当社の場合、土台となる技術の根幹が共通している事からこそ領域を広げることができており、売上高を5兆円超まで成長させることができました。
――選択と集中をしないことが、事業の強靭さや社員の働き方にどう影響しているのでしょうか?
高橋様:技術の根幹が共通しているからこそ、ある事業が苦境に立たされても他の好調な事業で補い合うことができます。だからこそ、当社はリーマンショックやITバブル崩壊といった社会的にも重大な局面も含めて、過去に一度もリストラを行っておりません。
過去の経済危機においても、好調な事業部へ一時的に人材を受け入れてもらうなど柔軟に対応し、社内全体で雇用を守りながら局面を乗り越えてきました。
「選択と集中をしない」独自のアプローチこそが社員一人ひとりを大切にし、誰もが安心して腰を据えて働ける環境を守り続ける土台になっています。
03. 柔軟な制度と高い生産性意識――仕事の面白さを支える環境づくり
――情報通信部門、特にデバイス領域においては、仕事のスピード感が他部門と比べて非常に早いと伺いました。
和泉様:おっしゃる通りです。電力や自動車向けの事業は安全・信頼性が最優先されるため、長期的なロードマップで進みます。一方で情報通信のデバイス領域は、顧客のロードマップに沿って速いスピードで技術がアップデートされていきます。極端な例ですが、数ヶ月に1回ほどのペースで製品仕様が更新されることもあるほどです。
高橋様:その背景には、毎年のように行われる価格交渉があります。一般的に製品の価格は安価になっていく中、常に技術をアップデートし、顧客要請に応え付加価値を付け続けなければ利益を確保できません。凄まじいスピードで変わりゆく市場の要求に応え続ける、非常にダイナミックな事業環境です。
――それほどのスピード感で開発が進むとなると、「激務なのではないか」と懸念される求職者の方もいらっしゃるかと思います。実際の労働環境はいかがでしょうか?
高橋様:会社として労働時間を管理しており、月平均残業時間は15.7時間(2024年度全社平均)にとどまっています。もちろん開発のピーク時など時期によって波はありますが、常に働き詰めということはなく、メリハリをつけて働くことが徹底されています。また、会社として「社員が能力を発揮できる環境づくり」に非常に力を入れています。
さらに人事部では年収の上昇率をKPIに設定しており、直近でもインフレ率を大きく上回る6%以上のベースアップを実現し、社員にしっかりと利益を還元しています。
――育児休業や多様な働き方の推進についてはいかがでしょうか?
高橋様:男性の育児休業取得率が非常に高く、ほぼ100%です。また、出産や介護を理由に一度退職した社員が復帰できる「ジョブリターン制度」も導入しており、実際にこの制度を利用して当社に戻ってくる社員もいます。
和泉様:人事部をはじめ、社内には育児と両立しながら働く社員が多くいます。フレックスタイム制や時短勤務、在宅勤務といった制度が浸透しており、各々が柔軟に働き方を択しています。限られた時間の中で最大のパフォーマンスを出すべく、時間当たりの生産性高める意識が社内全体に根付いていますね。
働く環境が整っていてこそ、仕事への面白さを感じられるので、近年は特にこうした環境づくりに力を入れています。
04. 求めるのはスキルの完全一致ではなくプロセスの「再現性」――異業種出身者がもたらす「変え幅」とイノベーション

――様々なバックグラウンドを持つ方がご活躍されていますが、選考で注目しているポイントについてお聞かせください。
和泉様:半導体のデバイス開発など一部の領域では、やはり専門性のマッチングが求められます。しかし光通信関連の開発や生産技術といった領域では、必ずしもピンポイントの技術経験だけを見ているわけではありません。
注目するポイントは、これまで取り組んできた仕事への姿勢や、成果を出すプロセスの再現性です。業界や製品が違っても課題に向き合い困難を乗り越えた実績には、必ず共通する仕事の進め方や思考が表れます。真剣に書かれた選考書類からは本気度と論理性が伝わりますし、実際にお会いしても、そうした方は経験に基づいた明確な軸があり話がブレません。技術的専門性が完全に一致していなくても、「この考え方なら当社の環境で活躍できる」と確信できれば積極的に採用しています。
――異業種出身の方々は、組織にどのような変化をもたらしているのでしょうか?
高橋様:当社の文化で長年育ってきた新卒入社社員は、良くも悪くも社内の常識や枠組みで物事を考えがちです。そこにキャリア入社の方が全く新しい視点を持ち込むことで、数々のイノベーションが生まれています。
――研究所やCAE(シミュレーション)を担当する部署と、製造現場とのコミュニケーションは活発なのでしょうか?
高橋様:非常に活発ですね。やはり現場の人が一番状況をよく分かっているので、私も現場の方に指導いただきながら、一緒に仕事をしてきた感覚があります。もちろん、最初からすべて上手くいくわけではありません。例えばセンサーによる検知を試みても、誤検出で使いものにならず、へこむようなこともありました。
現場の方々は、たとえ物理や理屈の部分は詳しくなくても、「実際はこうなる」という肌感覚や経験を持っています。だからこそ、そうした現場の意見を聞いてシミュレーションの計算条件を直したり、開発の思考プロセスを見直したりしながら、みんなで答えにたどり着く。現場と一体となって試行錯誤を繰り返し、答えを導き出すカルチャーがあります。
――大企業だと新しい提案や変更に対して抵抗が強いのではないか、と懸念する求職者の方もおられるかと思います。実際はいかがでしょうか?
高橋様:そういったことは全くありません。むしろ周囲を見て違和感を抱いた点があればどんどん言ってほしいですし、建設的な議論ができる方を求めています。当社においてもイノベーションは重要な活動です。当社の既存の仕組みや技術に、新しい視点・新しいアイデアを組み合わせることで是非イノベーションを起こしてもらいたいです。
情報通信部門に限った話ではありませんが、当社の事業部と研究所は非常に密接な関係にあります。いきなり製品を作っている事業部のラインで新しい手法を試すのは難しいですが、研究側に事前検証ができる組織や試作環境がある。だからこそ、現場で出たアイデアを柔軟かつスピーディに検証し、実現へと繋げることができています。
05. 「住友事業精神」に根ざした人材育成と、これからのインフラ事業を共に創る求める人物像

――中途採用を強化されている背景をお聞かせください。
高橋様:情報通信領域において新聞報道にもあるように増産の計画があり、それに備える形で採用を強化しています。事業を拡大しつつ、将来の社員の働き方がハードなものにならないよう、先んじて手を打っている状態です。
――御社の社風や、社員の方々の共通点についてお聞かせください。
和泉様:真面目で実直な人が多いですね。楽しようとしたりごまかしたりせず、全員が仕事に真摯に向き合っています。
高橋様:一方的なトップダウンではなく、「一緒に頑張ろう」と働きかけてくれる上司が多い印象です。上司や部門長が仕事の目的を示し、事業の背景や姿勢を含めてしっかり動機づけをしてくれます。
私自身も「解析だけをするのではなく、事業部と一緒になって会社の役に立とう」「今の分析が会社や社会にどういう意味を持つのか考え、次の工程へ繋げて成果を出していこう」と声をかけてもらってきました。目の前の業務がインフラを支え、社会貢献に繋がっているという実感を持てるよう導いてくれる環境がありますし、自分自身もそういう上司でありたいですね。
――人を大切にし、育てる風土の根底にはどのような考え方があるのでしょうか?
高橋様:当社に受け継がれている「住友事業精神」をはじめとした経営姿勢が、大きく影響しています。具体的には、人間として何事にも誠心誠意を尽くす「萬事入精(ばんじにっせい)」、お客様やお取引先含め社会からの信用に応える「信用確実」、目先の安易な利益を追わず信用を重んじる「不趨浮利(ふすうふり)」、そして長期的・社会的な視点で事業を見据える「企画の遠大性」といった考え方です。
これらの精神は、私たちが日々の業務や経営判断を行う際の基準として深く根付いており、長期的な視点で人を育てる文化が受け継がれています。
和泉様:また、節目ごとに自身の業務を振り返り報告書にまとめる昇進審査があります。これは単なる審査ではなく、上司からの指導を通してこれまでの仕事を肯定的に捉え直してモチベーションを高める、重要な育成機会として機能しています。この経験を次の仕事や昇進審査に活かすことができるなど、組織として個人の成長を支援する環境が整っています。
――今後、新たに仲間として迎え入れたい「求める人物像」について教えてください。
和泉様:現状に満足せず、「どうすれば良くなるか」を自ら考え、周囲を巻き込みながら実行に移せる方に、ぜひ来ていただきたいですね。情報通信部門で、これからのインフラ事業を共に創り上げていける方からのご応募を心よりお待ちしております。