ヤンマー株式会社・特機エンジン統括部・開発部の仕事内容や、中途採用について技術管理部の部長様と中途採用のエンジニアにお話を伺いました

ヤンマー株式会社 エンジン事業本部 特機エンジン統括部 開発部 技術管理部 部長 塩入基之様
ヤンマー株式会社 エンジン事業本部 特機エンジン統括部 開発部 第三開発部 川本崇彰様

メーカー専門の転職サイト「タイズ」に求人を掲載しているヤンマー社エンジン事業本部の塩入基之様と川本崇彰様に、開発部での仕事内容や特機エンジンについて、コンサルタントがインタビューさせていただきました。

インタビュー

特機エンジン統括部 開発部 技術管理部 部長 塩入基之様

特機エンジン統括部 開発部 第三開発部 川本崇彰様

お二人のご経歴と現在担当されているお仕事内容について教えて下さい

塩入様(技術管理部 部長)

入社後、小形エンジン統括部に配属され、舶用と陸用エンジンの開発設計業務を担当しました。その後、ヤンマーアメリカ(北米現地法人)に4年間駐在。そこではOEMのお客様の仕様にあわせた、トラクター等の農業機械や建設機械等に搭載するエンジンのアプリケーション設計業務を担当してました。日本に帰国後は、ヤンマーアメリカの経験を活かしながら、同じようにOEMのお客様に向けたエンジンアプリケーション設計を行いました。その後、2年間品質管理部に所属した後、今年の8月に特機エンジン統括部 開発部 技術管理部に異動しました。技術管理部では、対外的業務への対応と部内展開、開発部内管理業務、排気ガスエミッション(排気ガス規制)対応、全般の統括を実施しています。

川本様(第三開発部)

2016年11月に中途採用で入社しました。前職では、LEDの高効率化といった光学設計の開発や、音声認識コミュニケーションロボットの筐体設計を担当しました。会社の経営状況が悪くなったことをきっかけに、「設計を勉強するにはどういった環境がベストなのか」を考え、強度だけではなく、燃焼や化学などトータルの技術が必要になるエンジンをつくっている環境で勉強していきたいと思い、転職しました。

入社後は「特機エンジン統括部 開発部 第三開発部」に配属されました。第三開発部では、10L~20Lクラスから最大40Lクラスの舶用エンジンを開発しております。私はベースエンジンの開発がメインの業務で、現在は舶用エンジンのなかでも、主に漁船などに使用されるエンジンの開発を、塚口工場で担当しています。

――――具体的に、エンジンはどんな漁船に搭載されますか?

刺網、はえ縄、一本釣りなど近海で漁をする中・小型の船が中心になります。乗船される人数は、数名~10名程度です。また、漁船以外にもフェリーや客船に使用されることもあります。

ベースエンジンの開発について教えて下さい

一機のベースエンジンの開発には、だいたい3~5年かかります。新しいエンジンの開発には、プロジェクトを立ち上げることが多いですが、だいたい設計者で5人程度のメンバーが必要なイメージですね。プロジェクトのメンバーには、エンジン設計や解析、試験を行うメンバーの他に、中央研究所や電子制御部隊の方など、開発部以外の場所からもプロジェクトのメンバーに入ってもらいます。図面作成に関しては、一部外注することもありますが、主要部品はすべて社内で作成しています。

――――ベースエンジンの開発は、お客様の船に載せる前にテスト運行もされるのでしょうか?

基本的には、ベンチ試験で問題がないことを確認した上で、お客様にモニター評価をしていただくことがはあります。その後、1年程度お客様に使って頂き、問題のないことを確認していきます。

――――漁船などに搭載される中形エンジンは、受注量が多いと思いますが、どのように対応されているので
しょうか?

汎用性が高く、様々な場所で使えるエンジンを量産することで対応します。従いまして極力、海だけではなく、陸にも対応できるようなエンジンを作ることが大事だと思ってます。

「特機エンジン統括部 開発部」の組織体制について詳しく教えて下さい

全体で約200人を超える組織になります。開発部の中には7つ部門があり、それぞれ業種やエンジンの大きさで分けられています。

第一開発部:尼崎工場で作っている最大300Lクラスまでの大きさのベースエンジン設計を担当しています。

第二開発部:ガスエンジン、ガスタービンなどの設計を担当しています。

第三開発部(川本様所属):塚口工場で中形クラス型のエンジン(尼崎工場よりも小さく、びわ工場よりも大きなエンジエンジン)の設計を担当しています。

技術管理部(塩入様所属):※塩入様ご経歴参照

先行開発部:新しい技術を開発します。一例として説明しますと、IMO※やEPA(米国環境保護庁)が制定する排気ガス規制の対応を目的としたSCR(排気ガス浄化技術の一つ)の開発を行っています。

※IMO 国連の専門機関、「国際海事機関」の略称。船舶の安全や海洋汚染防止などの観点から、船舶の構造や設備などの安全基準や排ガスの排出規制などに関する基準の作成と改訂を担う組織

システム開発部:例えば、第一、第二、第三開発部で開発されたエンジン、及び先行開発部にて開発されたSCRを、お客様の船に搭載するための仕様設計業務を行っています。

試験部:設計部隊で設計、試作したエンジンを評価し、エンジンに魂を吹き込んでいます。

船舶の排ガス規制が厳しくなってきていますが、エンジンの開発に影響はありますか?

川本様:私が現在関わっている仕事ではないのですが、約700kwもの出力が出る6AY※というエンジンにSCRを適用させようと取り組みました。排ガス規制の波が押し寄せる中でのエンジン開発は、大気汚染の原因となる排ガス中のNOx(窒素酸化物)やPM(排気微粒子)を無害化するための後処理装置の制御に工夫を凝らすなどの配慮が必要です。しかし、なかなかその規制値に入らない、目標とする耐久性を満足しないといった課題があり苦労しました。お客様へベストなソリューションをいち早く提供するため、日々試行錯誤してます。

マリンエンジン6AYシリーズ(公式HPより)

ヤンマーの6AYエンジンは、欧州の内陸水路で航行される船舶に必要とされている排ガス規制の認証を取得しています。また同時に低燃費エンジンとして、オランダ内陸水路用エンジンとしても登録されており、低燃費とNOx(窒素酸化物)低減を同時に実現した、クリーン燃焼のニューエンジンです。

競合他社メーカーさんのエンジンと比較して、御社のエンジンが選ばれる理由はなんですか?

タフで信頼性が高いエンジンであるというところです。また、サービス面で、何か不具合が起こったときに、すぐに駆けつけてくれるのがヤンマーであるというのが選んでいただける理由だと思います。迅速な対応を心掛けて、不具合対策を行う・応急処置を行う真摯さは、他社にはない強みかなと思います。

川本様は中途採用でご入社されたということですが、周りのサポートや教育体制、ご入社されてから印象に残っている仕事はありますか?

川本様:基本的には、半年間OJTの方にサポートしていただけるので、エンジンに関する分からないところなど、なんでも質問できる環境があります。また、はじめは技術的にわからないことも多いですが、社内の基礎研修に加えて、外部の研修にも積極的に行かせていただけるので、最低限の知識は補えると思います。あとは業務の中で覚えていくというイメージですね。

印象に残っている仕事としては、今年の5月に6AYE※本ンジンの開考えられる可能性を上げしたりないなと感じています。というマリンエンジンの、新しい仕様の商品化をプロジェクトリーダーとして完了することができました。具体的に、6AYEの耐久性を伸ばすことに取り組みました。市場のエンジンを回収して、ある弊社の基準値に対して市場回収品が入っているかどうかを評価した結果、予定通り基準値内に入ってくるというところを証明し、プロジェクトを成功させることができました。ヤンマーのエンジン事業本部に貢献できたと感じた仕事ですので、印象に残っております。

塩入様:私はいつも中途採用でご入社された方に、お伝えしていることがあります。みなさんヤンマーのことがわからない、エンジンのことが分からない、といったことで苦労されるようですが、それは当たり前のことです。自身を新入社員のようだと考える必要はなく、中途採用者の方は、新卒からヤンマーで働いている者にはわからない経験を持っていますので、その強みを発揮して頑張ってほしいと思っています。

御社の製品試験に対する意識の高さは飛びぬけていると感じます。ご自身が設計した製品を試験する際は、現場に立ち会うのでしょうか?

人にもよると思いますが、なるべく現場に行って、自分で設計した部品は自分で触って、試験にも可能な限り立ち会うようにしていきたいと思っています。また、製品の試験方法についても、設計目線で、漏れている項目がないか、他の試験方法はないかなどを考えます。

―――やはり質の高い試験を行うことによって、製品の完成度は変わってきますよね

最終的な判断が試験評価にゆだねられるので、私にとって製品の試験は最後の砦という感覚です。生みの親が設計、育ての親が試験であるというイメージを持っています。最近は制御系の試験でできることの幅が広がりました。例えば製品の適合性をより高めるための微妙なチューニングなども、試験部で行います。

品質対応で苦労された経験についてお教えください

ギアに不具合が発生した事例がありまして、その原因究明から対策までをプロジェクトリーダーとして任せていただきました。やはり原因はすぐにわからず、まずは解析手法を用いて、過去の経験から考えられる可能性を挙げていき、導き出した答えを試験検証してようやく研究の段階に至ります。ここまでのプロセスに4カ月間かかり苦労しました。しかし、同じエンジン事業本部の方や研究所の方など、相談に乗っていただいたこともあり、無事プロジェクトを完了することができました。


1939年製 立形水冷4サイクルディーゼルエンジン(尼崎工場史料館にて)
1939年(昭和14年)大型ディーセルエンジンとして最初に製作され、
以降10余発電機原動機として稼働していたもの

中途採用者の視点から、川本様は御社の社風についてどう感じますか?

川本様:一言でいうと、「技術真面目」ですね。論理的な思考をできる方が多いと思います。

川本様はご入社されて2年目ということですが、今後、挑戦してみたい仕事はありますか?

川本様:新エンジンの開発に携わりたいと思っています。とくに「耐久性の高いエンジンとは何か」をテーマに、取り組んでいきたいです。やっぱり新しいものを作りたいという気持ちが強くありますので、世の中にないエンジンを作っていきたいなと思います。

これから中途採用で応募される方にメッセージをお願いします。

川本様:初心者の方でも、積極的に学ぶ姿勢があれば仕事についていけますし、責任ある仕事も任せてもらえます。実際に、私も入社して一年経った頃に、小さなプロジェクトリーダーを任せていただきました。当社には、誰でも挑戦できる環境があります。

塩入様:「エンジンをやってみたい」という、本当に熱い気持ちを持った方に来ていただきたいですね。是非、ご応募お待ちしております。

本⽇は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

-担当コンサルタントより-

JR東海道線で営業活動をしていると、常に尼崎駅付近で目に入るヤンマー社の尼崎工場で、初めて史料館やエンジニアの方にお話を聞くことが出来ました。

特機エンジンということで、小形エンジンとは違った難しさがあると考えてお話を伺ったのですが、実際のところは特機も小形エンジンの部隊もエンジンへの取組姿勢や業務内容はよく似ていると感じました。

一方、史料館で実物の特機エンジンや、排ガス後処理装置を拝見し、同じ大きさのエンジンでも過去と現在では出力や環境性能が大きく異なる話をお伺いし、エンジニアの方々が日々挑戦を重ねながら成果を積み上げてきた歴史を感じることが出来ました。

また、エンジンの開発において、塩入様・川本様双方がエンジン開発経験者ではなくても、エンジンの開発をしたい人・積極的に学ぶ姿勢のある方であれば歓迎と仰っていたこと、実際に川本様のご経歴を伺って、人を育てるヤンマー社ならではの採用であると感じました。

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この記事を書いた人

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安達 篤史

株式会社タイズ

  • 関西メーカーへの高い合格率に自信あり。メーカーへの深い知見、太いパイプを活かした転職のご支援をさせていただきます
  • 「勤務地・給与」といった条件だけではなく「働きごこち・忙しさ・社風」など転職の軸を丁寧にヒアリングさせていただきます。
  • 転職成功者の満足度は92%! ※当社経由でご転職に成功された方へのアンケートより

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