品質管理と品質保証の違いとは?自分にはどちらが向いている?

製造業において、品質管理と品質保証は製品の質に関わる重要な役割を果たします。 しかし、どちらにも共通している点があることから違いがはっきり分からないという方も多いでしょう。 そこで今回は、ふたつの違いを仕事内容や必要な知識、向いている人といった観点から詳しく解説します。

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仕事内容の違い

品質管理と品質保証の仕事は、企業によって業務範囲が異なることがあります。そのため、中には品質管理部門が品質保証部門にあたる業務をすべて担うケースもあるのです。

今回はあくまで一般的な定義としての違いについて説明します。転職を検討する場合は、あらかじめ会社に業務内容を確認しておきましょう。

品質管理

品質管理は、英語では「Quality Control(品質 管理)」といわれQCと表現される場合もあります。製品の品質に問題がないよう製造工程の検証を行うことや、不良品が発生した場合の原因追求とトラブルの解決及び未然防止をすることがメインです。

具体的には、以下のような業務を担当します。

・作業標準書の作成
・検査のチェックシートの作成
・製造工程で起きた不良・不適合に対する対応

まず社内での製造工程における作業標準を作成して、効率的で安定した製造ができる手段を確保します。

そして、現場スタッフの誰もが問題を適切に見つけられるようにするため、検査のチェックシートの作成を行います。異常の早期発見は品質の維持に関してとても重要な要素です。

製造工程で起きた不良や不適合に対しては、どのような問題が起きているのかを正確に確認し、どこの工程が不具合の原因になっているかを究明しなければなりません。

不具合には公差を超えていたり要求事項を満たしていなかったりと、さまざまなケースが考えられます。それぞれ原因はひとつとは限らず、すぐに特定するのが難しいため、専門的な知識やスキルだけではなく注意力や観察力が必要となる仕事でしょう。具体的な向いている人については、記事の後半で詳しく説明しています。

基本的には社内で活躍する部門であり、製造に直接関わる部分もあることから技能職に分類されることが多くあります。

品質保証

「Quality Assurance(品質 保証)」の頭文字をとってQAと呼ばれ、社内だけでなく社外とも接することが多い総合職です。製品の質を保証するための管理や改善を行う部門で、納品後にも品質に関わる対応をする役割があります。

具体的には、以下のような業務を行います。

・客先対応
・品質の評価

客先でのクレームが発生した際、その不具合状況をヒアリングして、生産技術などと調整しながら再発防止の提案を行います。

不良品であれば真因を突き止め、その内容によって設計そのものの変更や調整、工程を増やすなども検討しなければなりません。

最終的には取引先に納得してもらえるよう、議論を繰り返しながら最善の提案を行い、承諾が得られるように取り組む姿勢が求められます。

そして、品質を保証するためには法律や国際規定の基準をクリアすることが必須で、要望によっては原材料から質を確認して条件を満たすか判断するため、さまざまな情報やデータの分析を行うことがあります。

開発フェーズでは品質の評価を行い、テスト後の分析結果を基に適切なアドバイスを行うのも重要な役割です。

品質保証は、顧客との直接的な関わりが多いため、会社の信頼や損益にも大きな影響を与える存在であり、幅広い知識と業務に対応する必要があります。

働き方の違い

ふたつの仕事の働き方にはどのような違いがあるのか見ていきましょう。

品質管理

品質管理は自社製品の品質を支える仕事で、高い質を求められる現代において、企業のブランドを保ち信頼を高めるためには必要不可欠な存在です。

ものづくりとしては裏方として支える立場ですが、企画や開発、製造などさまざまな部門と協力しながらチームとして働きます。

社外に不良品を出すとクレームの原因になり、会社の信用にも関わる問題に発展する可能性もあるため、大きな責任を負いながら業務に当たることになります。

給与水準(年収)としては以下のようになります。

年代 年収
20代 400~650万円
30代 550~750万円
40代 600~850万円

※2023年度タイズ経由での決定者・理論年収データ

各部署と協力するためには品質管理が仲介に入り、折衝役として立ち回らなければなりません。高いコミュニケーション能力が求められるため、仕事としては苦労する点でもあります。

また品質を決める重要な立場になることから、自身の判断が欠陥や不備につながり、その後の工程にも影響を与え、ひとつひとつが責任の大きな仕事です。この点も、働く人のストレスや負担になる原因といえます。

品質保証

品質保証は、ニーズを満たす製品ができているか確認してクオリティを保証する役目を担い、顧客の満足度を高めるためにも欠かせない存在です。

会社を陰で支えるという点では品質管理とも共通しており、技術者のようにものづくりを直接行うことはありません。

しかし、顧客に対して直接対応を行い、要求を満たす品質や安全性を確保することで、信頼を獲得できるかどうかは品質保証にかかっています。

クレームの対応も業務のひとつですが、要望に応えて最終的に満足のいく製品に仕上がると客先でも感謝されるようになり、大きなやりがいを感じる部分でもあるでしょう。

同時に、自身の顧客への対応によっては会社の信用や取引状況にも関わるため、さまざまな葛藤が生じることもあります。

クレームで発生する要求に対して、すべてを自社の責任として解決にあたると、企業の損失は大きくなり現場スタッフの負担も増えるため、適切に対応する範囲を見極めなければなりません。

要求に応えられない場合は、信用を失い取引がなくなる可能性もあるため、慎重かつ迅速に判断する必要があります。

また問題改善のためとはいえ、生産技術などの部署へ厳しい指示を出すと反発を受けることもあり、社内に対しても上手に依頼することが大切です。

給与水準としては品質管理と大きな違いはなく、以下のようになります。

年代 年収
20代 400~650万円
30代 550~750万円
40代 600~850万円

※2023年度 タイズ経由で転職された方の実績

扱う知識の違い

必要となる知識の違いについて解説します。

扱う知識はほぼ同じ

実はふたつの職種は共通している点も多く、業務上必要となる知識にあまり違いがありません。

主には以下のような知識を扱います。

知識 内容
PDCAサイクル Plan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)を繰り返してより良い品質を目指す
QC7つ道具 特性要因図、パレート図、グラフ・管理図、チェックシート、散布図、階層、ヒストグラムなどを用いた分析方法
5ゲン主義 現場、現実、現物、原理、原則の5つの「原」に従った行動
なぜなぜ分析 問題に対して「なぜ」を繰り返し真因を見つける手法

RoHS指令とはEUの法律のひとつで、水銀、鉛、六価クロム、カドミウム、ポリ臭化カビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルの6つの物質にかけられた使用制限を意味します。違う点といえば、品質保証では品質の評価や開発試験などを行うため、材料に関する知識やRoHS指令についての知識が必要になることです。

向いている人の違い

どのような人が品質管理や品質保証に向いているのか紹介します。

適正の要素もほぼ同じ

両者でほぼ同じ適正が求められます。具体的には以下の要素があれば向いているといえるでしょう。

・観察力がある
・数字に強い
・コミュニケーション能力が高い
・責任感が強い
・忍耐力がある
・仮説的思考ができる

まず、問題を発見できる観察力はどちらの職種でも必要とされ、さらに原因の追求を続けられる探求心もあわせ持っていることが重要です。

データを分析する機会が多いため数字に強い人材が求められますが、他部門との連絡調整から折衝役まで果たせるほどのコミュニケーション能力の高さも必要とされます。特に品質保証はクレームに対しての交渉や的確な提案が重要なため、より高い折衝能力が求められるでしょう。

企業の信頼や現場スタッフの業務への影響力が強い仕事であり、強い責任感を持っていることと、他部署や顧客からのクレームに耐える忍耐力を持つ人でなければなりません。

トラブルを解決するためには、原因分析や状況から考えられる仮説を立てる仮説的思考ができる力も重視されます。

まとめ

品質管理と品質保証は、製品の品質に関わる重要な役割を担う点で共通している仕事です。しかし、主な活動範囲が社内の製造に関連するか、社外も含めて総合的な対応をするかによって違いがあります。転職する場合は、共通する知識や適性を把握して、企業が求めている役割についてしっかりと確認しておくことが重要です。

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この記事を書いた人

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安達 篤史

株式会社タイズ

これまで17年間、転職エージェントのコンサルタントとして従事し、これまで1,000名以上の転職支援を実施。
技術系を中心に幅広い知識・経験があり、納得感のある転職を実現している。

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