企業インタビュー
[ オムロン株式会社 ]
オムロン ドライブ事業部が担う「動きの中核」──技術優位性と技術者を伸ばす開発環境に迫る

左から
株式会社タイズ 担当コンサルタント 高山 聡
オムロン株式会社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部ドライブ事業部 事業部長 鈴木 亮平様
オムロン株式会社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部ドライブ事業部 開発部 部長 中村 敏之様
株式会社タイズ 担当コンサルタント 杉山 周平
オムロン株式会社は、制御機器事業、電子部品事業、データソリューション事業、ヘルスケア事業、社会システム事業という多岐にわたる事業を展開しています。
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニーでは、制御機器事業を主に担っています。
なかでも商品事業本部ドライブ事業部開発部では、「ものづくりにおける“動かす”シーンの革新をリードする」というミッションのもと、サーボシステムとインバータを中心としたモーションコントロール機器を開発しています。
今回はドライブ事業部のお二方に、制御事業の中核を担うドライブ事業部で働く魅力ややりがい、オムロンの“構造改革”による変化について、お話を伺いました。
01. ドライブ事業部の中核を担うお二方のキャリアの軌跡

――まずは、お2人のご経歴をお聞かせください。
鈴木様:インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー(IAB)の商品事業本部にあるドライブ事業部で、事業部長を務めています。
2002年に新卒入社し、国内営業を経て販売促進・販売戦略を担当しました。その後3年間は中国に駐在し、日本国外で初のオートメーションセンタ立ち上げに携わりました。
帰国後は画像処理関係の商品企画を経て、IAB企画室での事業計画を約8年、社長秘書を3年間経験し、今年(2025年)4月からドライブ事業部全体を統括しています。
中村様:1991年に新卒でオムロンに入社して以来、一貫して開発職でキャリアを積んできました。入社後の10年間は産機用コンポーネントの開発を担当、その後はセーフティコントローラ事業の立ち上げに開発として参画し、海外メーカーとの協業や海外駐在を経験しました。2012年にドライブ事業部へ異動し、現在はドライブ事業部 開発部長として、サーボシステムとインバータを中心としたドライブ機器の開発全般を統括しています。
02. 「“動かす”を革新する」──ドライブ事業部の役割と今後のビジョンとは

――制御機器事業とドライブ事業部の概要についてお聞かせください。
鈴木様:オムロンの制御機器事業(IAB)は、約20万点のコンポーネント・制御商品で、ものづくり現場のオートメーションを支えている事業です。センサーなどの入力機器、コントローラなどの制御機器、ロボットやセーフティ機器、そして私たちが担当するモーションなどの出力機器まで、製造業の自動化に必要な機器をすべてそろえているメーカーはオムロンだけです。
その中で、ドライブ事業が主に扱っているのが、サーボシステムやインバータといったモーションコントロール機器です。「ものづくりにおける“動かす”シーンの革新をリードして、人・産業・地球の持続的な発展に貢献する」というビジョンのもと、サーボシステムとインバータを通じて世界中の生産現場に価値を届けることが、ドライブ事業部の役割です。
――製品・技術面では、どのような強みでそのビジョンを実現されているのでしょうか?
鈴木様:今、製造現場ではエンジニアや熟練作業者の不足、技術継承の難しさが深刻化しています。「人がいないから作れない」という切実な声もよくうかがいます。
私たちは「設備そのものを高度化する」ことで、その課題に向き合っています。核となるのが、高い制御性能を実現する同期制御技術です。さらに、サーボシステムには誰もが装置性能を引き出すために自動で最適調整が可能なオートチューニング機能も搭載しています。
また設備稼働率と安全性を両立させる安全機能をモーション側に組み込んでいること、FSoEなどを活用した省配線により、現場の配線作業の負担を下げていることも強みです。
人手不足やスキル継承といった社会課題に対し、これらの技術を組み込んだ商品・ツール群で応えていく――それがドライブ事業のミッションだと考えています。
――現場の声はどのように商品に反映されているのでしょうか?
鈴木様:ドライブ事業部のメンバーが直接お客様先に伺うことも多くあります。マーケティング目的の訪問もあれば、「設備がうまく動かないので見てほしい」といったご相談で呼ばれることもあります。営業やセールスエンジニアだけで難しい場合は、ドライブ事業部の開発メンバーが現場に入り対応を行うことも多いですね。
中村様:既存商品の使いこなしで解決できる課題であれば、その場で対応策を提案し、難しい場合は、新商品の仕様に反映することを検討します。
新商品の企画段階では、仕様の妥当性を確かめるためにこちらから検証に伺い、上市後は実際に使っていただいた感想や改善要望をヒアリングしています。フェーズごとに濃淡はありますが、企画から発売後まで一貫して「現場の声起点」で商品を磨き込んでいます。
――設計を詳細にしていくタイミングで、試作品段階のものをお客様に見ていただくこともあるのですか?
鈴木様:あります。後戻りを減らすためにも、「こちらが狙った仕様がお客様に本当に受け入れられるか」は、できるだけ早い段階で確かめたいと考えています。内容に応じて、試作段階からお客様と一緒に検証するケースもありますね。
――ターゲットや業界について教えてください。
鈴木様:かなり幅広いです。サーボシステムは、ユーザー様が自ら取り付けて使うというよりも、まず設備メーカー様が採用し、その設備を通じてエンドユーザー様に届くケースがほとんどです。
導入される業界も、食品・日用品などのフード&コモディティ、二次電池、半導体、スマートフォンやイヤホンなどのデジタル機器、自動車分野まで本当に多岐に渡ります。「何かを動かす設備」があるところには必ずサーボシステムやインバータが必要になるので、非常に多くのお客様に使われている機器だと言えます。
――その中でも特に得意としている業界と、その理由をお聞かせください。
中村様:特に強みを発揮しているのは二次電池の領域です。理由の1つが、先ほど触れた同期制御技術です。
二次電池の製造では、電極シートを巻いたり重ねたりする工程(積層巻回工程/セル組立工程)があります。その際、シートのテンション(張力)を一定に保つことが非常に重要です。特に薄膜化・高速化が進むと、わずかなテンションの乱れでシート破れや巻き込み不良が起き、最悪の場合は発火など重大な品質問題につながりかねません。こうした工程で、高精度なテンション制御を実現できる同期制御は大きな武器になります。
加えて、調整が簡単であることも大きな強みです。当社のサーボシステムにはオートチューニング機能があり、熟練者でなくてもスムーズに立ち上げ・調整ができます。この特長が評価され、二次電池だけでなく食品包装機など、立ち上げ工数を重視する多くの設備で採用いただいています。
参考
オムロンは、変種変量生産を実現するうえでの装置のタクトアップと立上げ時間の短縮という課題に着目し、安定性解析とシミュレーションを活用したサーボドライバパラメータ調整技術を開発しました。その結果、専門知識がなくても装置の安定性を定量的に評価でき、短時間で装置の最大性能を引き出すことが可能になりました。その技術力が評価され、令和7年電気工業技術功績者表彰・奨励賞を受賞しました。
参照:令和7年(第74回)電機工業技術功績者表彰・奨励賞を受賞
03. 「もう一度、徹底的に顧客起点へ」──オムロン全社で進む“構造改革”の真意

――現在のドライブ事業部組織構成と、開発部の体制について教えてください。
鈴木様:現在のドライブ事業部の組織構成は、企画を担うPMグループ、事業計画課、開発部という構成になっています。
中村様:開発部は、ハードウェア、ファームウェア・ソフトウェア、モーター・アクチュエーター、商品技術の4課体制です。
着任当初はハードウェアとソフトウェアの2課構成で、その中に商品技術とモーター・アクチュエーターの機能も含まれていました。しかし、扱う商材が増え、「お客様により安心して継続的に使っていただく」ことに専念する必要が出てきたため、商品技術を独立組織にしました。
また、自社製に限らず幅広いアクチュエーターを提案できるように、接続できるラインナップを増やすことが重要になり、そのエコシステムを支える体制として、専任のモーター・アクチュエーター課も新設しました。
――「お客様のニーズに応える」「価値貢献する」という目的で組織強化されてきたのだと感じました。御社全体として、顧客意識や目的意識を大切にされているのでしょうか?
鈴木様:そうですね。とても大事にしています。
ただ、過去を振り返ると、常に顧客視点で動けていたとは言えず、反省もあります。そうした背景もあって、2024年4月からオムロン全体で“構造改革”を進めています。
“構造改革”では、「もう一度、徹底的に顧客起点に立ち返る」ことを掲げ、知らず知らず内向きになっていた様々なことを改めて、顧客を中心とした考え方や行動に見直している段階です。
――“構造改革”前後の考え方の変化や、具体的な取り組みについて教えていただけますか?
鈴木様:当社が構造改革で取り組んだ1つが、「制御機器事業の早急な立て直し」でした。 IAB全体としては10個のタスクフォースを実行し、変革に向けた様々な取り組みを実行しました。
全ての事業オペレーションにおいて顧客を起点とし、そこに企画開発や営業、人事や組織文化の構築に至るまでを連結させた改革に取り組んできました。先ほどお話しした通り、全ての起点を「顧客」に定めて取組みを徹底しています。その中の1つに企画開発プロセスの改革があります。以前は情報収集に過剰な時間をかけていたり、社内の承認プロセスの複雑さなどを背景に、顧客への価値提供のスピードが遅くなりがちでした。そこで、例えば「お客様の声(Voice of Customer)」をいかに収集し企画へと繋げるかについて、生成AI技術を活用した仕組みを導入するなど企画開発プロセスの変革に取り組んでいます。実際に企画スピードが大幅にアップした事例も出てきています。
また、今年の9月に構造改革NEXT2025は完了しました。次に2026年から始まる新たな中期ロードマップを迎えるにあたり、全社として成長投資の考え方を大きく転換しています。オムロン全体には52の事業があり、以前はそれぞれの事業に投資が分散していたため成長事業に十分な投資が出来ていませんでした。これからは投資を注力する13事業にフォーカスし、成長の土台を築いていく方針に変えました。成長事業に積極的に投資することで、キャッシュを創出し再投資するサイクルを回していく狙いです。
この注力する13事業の中に「コントローラ」事業群があり、ドライブ事業もそこに含まれています。
進化し続ける技術を先行的に獲得し、それを商品に実装すること、そして今ある商品を継続的に進化させることにきちんと投資ができるようになったというのは、事業や開発を担当する者にとって大きな変化だと感じますね。
――新商品開発の今後の方向性を教えてください。
鈴木様:まったく新しい分野に飛び込むというよりも、既存の私たちのお客様における信頼を獲得し続けるため、どれだけ新しい価値を提供できるか、という考え方が基本です。
私たちが提供する価値は大きく2つあります。
1つは、サーボシステムやインバータ、PLCなどを組み合わせた「ハードウェアとしての価値」。もう1つは、その上にさらに乗せていく「データビジネスとしての価値」です。
ただ、データビジネスは立ち上がりに時間がかかるため、2030年頃までは前者――ハードウェアと他商材の組み合わせによる価値提供が“1丁目1番地”になります。お客様により高い付加価値を提供するために、どの機器をどう組み合わせ、どんな新商品を足していくかが重要です。
私たちは、業界において「チャレンジャー」であると自認しています。その分、既にお付き合いのあるお客様の中にも、まだ大きなホワイトスペースが残っている。そこに正面から向き合ってシェア拡大に愚直に挑み続けるのが、ドライブ事業部のスタンスです。
中村様:従来、解決が難しかったお客様の課題を、新商品で解決できるようにすることにこだわる一方で、忘れてはならないことは、既存商品からの「継承性」だと考えています。既存商品から新商品へ移行に伴い、商品の機能や使い勝手が大きく変わったり、お客様の既存設計資産が使えなくなったりすると、お客様に不要な負担を強いることになります。お客様が本来の開発業務に集中できるよう、私たちは継承性の高い商品を提供することを徹底していきます。
04. 技術の幅も深さも妥協しない──ドライブ事業部で磨ける技術とは?

――ドライブ事業の製品開発に携わることで、候補者の方が身につけられる技術・スキルにはどのようなものがありますか?
中村様:エンジニアのやりがいのひとつには、技術を深く広く追求し専門性を高められることがあると思います。その点で、ドライブ事業部はとても恵まれた領域です。
サーボシステムやインバータのコア技術はパワーエレクトロニクスです。メカ(筐体設計)、エレキ(デジタル/アナログ)、ソフトウェア、制御アルゴリズム、さらに熱設計・放熱技術やノイズ対策まで、さまざまな技術の結集で成り立っています。1つの部門にいながら、多岐に渡る技術分野に触れることができるのは、ドライブ事業部の大きな特徴です。やる気次第で、複数領域をまたいだエンジニアへと成長していける環境だと言えます。
そしてもう1つの魅力は、自身の専門性を活かしてお客様の課題解決に貢献できることです。自分たちが開発した製品を通じて、お客様の課題を解決できたことを実感しながら働ける。この「専門性を高めること」と「顧客への貢献」の両方を味わえるのが、ドライブ事業部で働く面白さだと思います。
――技術領域の垣根なく、普段から議論を重ねながら最適化しているようなイメージでしょうか?
中村様:はい、その通りです。たとえば担当はエレキ/メカと分かれていても、熱設計のように領域が重なる部分は一緒に議論しながら進めることが多いですし、デジタル設計とファームウェアなどについても同様です。
鈴木様:部門をまたいだコミュニケーションもスムーズです。
着任後にメンバーと1on1をした際に、組織の壁を感じるかをヒアリングしたのですが、若手から50代まで全員が「ないと思います」と答えていて、正直驚きました。
ドライブ事業部にはキャリア採用のメンバーが多く、さまざまなバックボーンを持つ人材が集まっている、という共通認識があります。
そのおかげでセクショナリズムが生まれにくく、課の壁より「一緒に良いものを作る」という意識が強い。そういった意味でも、とても働きやすい環境だと感じています。
――中途入社の方の割合を教えてください。
中村様:部門全体ではおよそ3分の1が中途入社の方です。部署によっては半数程度のところもありますね。
――IABにおけるドライブ事業部は、どういう立ち位置なのでしょうか?
鈴木様:ドライブ事業部は「オートメーションの中でも最終的なアウトプットの役割である“動き”を担う部門」という立ち位置だと考えています。
自動化は、センサーで状況を検知し、コントローラで「どう動かすか」を決め、最後に装置を実際に動かして完結します。どれだけセンサーや制御が完璧でも、最後に狙い通りに動かなければ、お客様への価値にはなりません。
その“最後の一手”を担うのが、ドライブ事業部が手がけるサーボやインバータといったモーション機器です。オムロンは入力から出力まで一通りのラインナップを持っていますが、その中でも「思った通りに動かしきる」という、自動化の価値提供の肝になる部分を担っているのがドライブ事業ですね。
中村様:エンジニアの視点では、今まさに注目を集めているパワーエレクトロニクス領域で仕事ができるのは、IABの中でもドライブ事業部ならではの魅力だと思います。技術的にも非常にやりがいの大きいポジションですね。

休憩スペース

ドライブ事業部で開発を行うさまざまなモーション・ドライブ
05. 技術愛・顧客視点・やり切る力──3つの軸に共感してくれる方へ

――最後に、どんな方に来てほしいか、応募を検討されている方へのメッセージも含めて教えてください。
中村様:私からは3つあります。
1つ目は、「ものづくりや技術が心底好きな方」。
寝ても覚めても技術のことを考えてしまうくらい、純粋に開発が好きな方。同時に自身の専門性を磨き続けられる方。
2つ目は、「自分の意思で、お客様や社会課題の解決に関わっていきたいと思える方」。
困難な場面でも、そこから逃げずに向き合い続けられる志や想いを持っている方です。
3つ目は、「チームで成果を出すことを大事にできる方」。
一人では仕事は完結しません。仲間とのコミュニケーションを大切にしながら、自分の専門性や強みを生かしてチームに貢献しようとする方と、一緒に仕事がしたいと思っています。
鈴木様:私も3つ挙げるとすると、まず1つ目は「顧客視点を持って開発できる人」です。
自分の関わった技術や製品について、「お客様がどう使っているか」「どう喜んでくれているか」を知りたい・実現したいと思える人ですね。そういう方は、お客様が本当に望む機能や、その一歩先の価値を捉えられるようになっていきます。
2つ目は、「自分の意思や想いを持って行動できる人」。
違う意見がぶつかり合う中から新しい価値は生まれますから、私たちの意見と掛け合わせて、一緒に新しい価値をつくっていきたいと思っています。
3つ目は、「アウトプットにこだわってやり切れる人」です。
最後まで粘り強くやり切れること。相手の理解や納得するまできちんとやり切ること。何としてでも形にしようとする、そんなアウトプット志向のある方と、ぜひ一緒に働きたいですね。
チャレンジャーであるドライブ事業には、これからの成長に果敢に挑戦できるフィールドがあります。そんな私たちに共感してもらえる方と一緒に働ければ嬉しいです。皆さんの応募をお待ちしています。