企業インタビュー
[ 倉敷紡績株式会社 ]
技術で社会課題に応えるクラボウ―環境メカトロニクス事業部で挑む“一気通貫”のものづくり

左から
株式会社タイズ 担当コンサルタント 阪口 晴基
倉敷紡績株式会社 環境メカトロニクス事業部 エンジニアリング部長 下田平 芳明様
倉敷紡績株式会社(クラボウ)は、化成品、繊維、環境メカトロニクス、食品・サービス、不動産と、幅広い事業を展開する総合メーカーです。なかでも環境メカトロニクス事業部では、ライフサイエンス、エレクトロニクス、エンジニアリングの3分野を中心に、人々の暮らしや社会を支える事業を推進しています。
今回は同事業部のエンジニアリング部長 下田平 芳明様に、営業から設計を経て引き渡しまでを一気通貫で行うプラント、設備づくりに挑むやりがい、部署の雰囲気、そして求める人物像についてお話を伺いました。
01. 営業に始まり、新事業の立ち上げも経験

――まずはご経歴について教えてください。
大学院で機械工学を専攻していました。2000年に研究室の先輩が紡績業界に就職したことがきっかけで、紡績業界に興味を持ちクラボウの面接を受けました。当時の部長の人柄に強く惹かれたことが入社の決め手になりました。
2001年4月に入社し、大阪の環境部門(現在のエンジニアリング部 環境エネルギー課)に配属後、東京支社のエンジニアリング営業課で8年間、官公庁・民間企業向けの排ガス処理・排水処理技術営業を担当しました。2009年には大阪の技術部門に戻り、排ガス・排水処理を商品とする環境システム課で設計業務に9年間従事。2019年4月からは環境エネルギー課長として、バイオマスボイラー、産業設備の拡販や家畜排せつ物処理装置「FUNTO(フント)※」、水族館向けビジネスの立ち上げに取り組みました。2024年6月から現職のエンジニアリング部長を務めています。
入社当時の部長が新卒の私にも「今後こんなことをしていこうね」と将来ビジョンを語ってくれたことが印象的でした。未来を見せてもらい、達成感を共有できる雰囲気から「この部署はおもしろそう」「いろんなことに挑戦できる」と強く感じたことを覚えています。現在は部長として、その感動を次世代に伝えていきたいという思いで取り組んでいます。
――現在の役割や具体的な業務はどういったものでしょうか?
エンジニアリング部長としては、個別の業務を担当するというより、部全体の方向性やこれからの方針を決めていくのが主な役割になります。特に重視しているのは人材育成ですね。次の世代を担う人材を育てて登用していくことが、一番大事な仕事だと考えています。
それに加えて、これまで自分が培ってきたお客様との関係や、商品に対する考え方を次の世代のメンバーにきちんと引き継いでいくことも、部長としての大切な役割だと思っています。
02. 環境とメカトロ技術を融合し、新たな価値を創出
――環境メカトロニクス事業部について、具体的な仕事内容やミッションを教えてください。
エンジニアリング部は1970年代に設立されました。当時、当社は製造業として自社工場の環境対策を行っていましたが、工場の環境対策を目的に、その専門部署として創設され、現在では自社だけではなく社外にも展開しています。
その後、2016年に「環境メカトロニクス事業部」として組織が再編されて、ライフサイエンス(バイオ関連)、エレクトロニクス、エンジニアリングという大きな3つのセグメントが集約されました。横串の技術としてはセンサーなどが共通の要素になっています。
「環境メカトロニクス」という名前が示すように、私たちは環境とメカトロニクス技術を融合させた革新的な事業を創出し、発展させていく部署です。エンジニアリング部門では、「環境」をコアテクノロジーとして、環境配慮型設備や省エネルギー化システムの開発・導入を通じて、お客様の多様な課題に技術的ソリューションを提供しています。
廃棄物削減や省エネルギー化といった現代社会が直面する重要な課題に、エンジニアリング技術で応える——それが私たちのミッションです。技術者として、社会に真に貢献できる仕事に携われる環境となっています。
――環境メカトロニクス事業部は、今後さらに成長が期待される部門だと感じています。将来的には、会社全体の売上に対してどの程度の規模を目指しているのでしょうか?
現在、環境メカトロニクス事業部の売上は二百数十億円規模に達しています。クラボウと聞くと社名から「紡績」をイメージされる方が多いのですが、現在は半導体装置向け高機能樹脂製品や太陽電池向け機能フィルムなどの生産・開発を行う化成品事業が売上高の43.1%を占めています(2025年度中間期)。そして利益面では、私たち環境メカトロニクス事業部が第2の柱として重要な役割を果たしています。
私たちの目標は明確です。環境メカトロニクス事業部を化成品事業部と肩を並べる規模にまで成長させることです。会社全体を「3枚看板」で支える強固な事業ポートフォリオを構築し、将来に向けた成長の新たな柱となることを目指しています。
――今回のポジションで働く上での魅力や面白さについて、他社に比べて特に優れている部分を教えてください。
エンジニアリング会社には様々な形態がありますが、多くの企業では業務が役割分担されています。一方、当社の大きな特徴は、営業段階から設計、製作、施工、試運転、引き渡しまで、すべてを自社で一貫対応できることです。
この一貫体制により、「設計だけ」「工事だけ」「営業だけ」といった限定的な業務にとどまらず、どのポジションにいても自分のやりたいことに幅広く関わることができます。また、小規模な案件から複数年にわたる大規模な案件まで多岐にわたるため、若いうちから案件に携わることができ、責任を持って取り組めます。これは大きなやりがいにつながっていると思いますね。
また、何より、自分が計画したものが現場で形となり稼働を始めた瞬間の達成感は本当に大きいものです。成果がしっかりと目に見える形で残っていく点が、この仕事ならではの魅力だと感じています。
――印象に残っているプロジェクトやエピソードはありますか?
一般家庭のごみ処理施設で、排ガス処理・排水処理設備を営業として受注し、その後異動で設計も担当したことがあります。同じ案件を、受注から完成まで一貫して携われたのは、本当に大きな経験でした。
また、2019年の異動では、これまでとは全く違うバイオマスボイラーや産業設備に挑戦しました。仲間と一緒に水族館向けの案件や「FUNTO※」を立ち上げ、ゼロから事業化まで実現できたときは格別でしたね。
03. 専門分野を超えてスキルアップできる環境

――入社によってどのようなスキルアップが可能でしょうか?
基本的に経験者採用では、ある程度近い分野の経験をお持ちの方をターゲットにしています。これまでの技術や経験を活かしながら、営業・設計・施工といった幅広い工程に携わることができるので、今までの専門分野にとどまらず、未経験の領域にも関わることができます。自然とスキルアップにつながりますね。
また、お客様や協力会社と近い距離で働くので、実践的なエンジニアリング力も身につきます。さらに「やりたいことがあれば挑戦できる」環境があり、目標や希望があれば会社も全力でサポートします。分野を限定せず、積極的にチャレンジしたい方には絶好の環境です。
――実際に過去にキャリア入社された方が入社当時と比べて成長されたと感じたエピソードがあれば教えてください。
もともと料理人だった若手社員もいます。料理人の経験が工事の計画・施工管理にピッタリはまり、配管工事は未経験だったにもかかわらず、今では数千万円規模の工事を一人で担当するまでに成長しました。
新しく入社した方には必ず教育担当がついて技術や仕事の進め方を丁寧に指導しますので、日々スキルアップしながら確実に力をつけていける環境になっています。
また、電気関係の経験を持つ方が、機械の据え付けや配管といった新しい分野に挑戦し、電気の知識を活かしながら活躍の幅を広げています。今では東京の水族館の案件を一人で任されるまでに成長しています。
このように「やりたいことを学べる体制」と「チャレンジできる土壌」が整っていますね。部署には現在50名ほど在籍しており、そのうち約20名は経験者採用です。若手からベテランまで幅広い人材が集まっており、経験者採用で入社された皆さんが馴染みやすい職場環境です。
――教育体制としては、基本的にはOJTの形なのでしょうか?
相談できる相手がいないと不安だと思いますので、当社では所属長に加え、先ほども述べたように、責任をもって教育を担当する者を必ずつけています。
異分野からの転職でも安心して業務に取り組める体制になっています。
――OJTを経てどのくらいで一人立ちになるのでしょうか?
経験年数によって異なりますが、約3年でプロジェクトをお任せします。もちろんいきなり全てを一人に任せるのではなく周りがフォローをしながら進めていってもらいます。
当社には様々な商品があるため、入社後は幅広く経験していただき、適性を見ながら最適な配置を考えます。入社時の部署が合わなければ、よりマッチする分野への異動も可能です。
まずは3年間、幅広く学んでいただくスタンスです。
04. 一気通貫で届ける“本当に使える設備”が生む格別の達成感
――苦労もあると思うのですが、仕事を通して得られる達成感や仕事の面白さを感じたエピソードをお伺いしたいです。
正直、何度も壁にぶつかりました。お客様も協力会社もプロフェッショナルばかり。分からないことで不安になったり、大きな責任に押しつぶされそうになることもあります。
でも、そんな中でも「良いものを作ろう」という共通の目標に向かって取り組み、完成した製品をお客様に引き渡す瞬間—その達成感は何ものにも代えられません。苦労があるからこそ、この瞬間の喜びが格別なんです。
さらに嬉しいのは、自分が手がけた設備が数十年間も稼働し続けることです。導入して終わりじゃない。その後も数十年にわたってアフターフォローが続き、新たな技術習得やお客様との深いつながりが生まれていきます。
過去に担当した設備を振り返りながら最新技術で新提案する—お客様との関係を深める中で、自分自身の視野も人としての幅も広がっていく。これこそ「人と人との仕事」の醍醐味ですね。
――御社の技術の強みや他社優位性はどのようなところにあるのでしょうか?
私たちは営業段階から技術部隊が参加する「営業技術」スタイル。単に装置を作るだけでなく、「どう使いたいか」「メンテナンスは?」まで考え抜いて、お客様が本当に欲しい設備を形にします。
多くの会社では営業・設計・施工が縦割りで、お客様の細かいニュアンスが伝わらないことも多いです。でも私たちは最初から最後まで一気通貫。だからこそ「本当に欲しい設備」が実現できるんです。
加えてアフターメンテナンスも全て自社対応。お客様が実際に使う中で得た経験を改良に活かし、設備を常により良く、使いやすく進化させています。これが他社にはない信頼の源泉ですね。
05. 自分のペースで進められる、裁量ある働き方

執務室の様子
――普段の働き方はいかがでしょうか?出張についてもお聞かせください。
部署によって働き方は少し異なります。設計や技術部門であれば、お客様との打ち合わせで短期の出張が発生します。一方、施工や工事部門では現場対応が中心となるため、数か月に及ぶ出張や、場合によっては年単位の長期出張になることもあります。
仕事の進め方としては、個人の裁量が大きく、スケジュールを自分で組み立てられる点が特徴です。お客様と相談しながら進めるため、「誰かに決められて動く」というよりは、自分のペースで働けることが多いですね。
もちろん、設備は常に稼働しているため、突発的なトラブルが発生すれば休日でも対応が必要になることがあります。ただ、そうした場面こそ助け合い、協力することで信頼関係が深まります。「お互いさま」という意識が根付いているのが当社の特徴です。
――残業時間や出張の期間について詳しく教えてください。
残業時間は月20時間前後、多くても30時間程度です。案件によってはゼロの月もありますし、繁忙期には増えることもあります。
出張は月に3回程度が目安です。特徴的なのは「やらされる出張」ではなく、「この案件に関わりたい」という本人の意思で動ける点。自分がやりたいから行く、という感覚に近いですね。
働き方改革の流れもあり、時間外労働や休日出勤は極力抑えています。長期出張でも土日は自宅に戻れるよう調整したり、大規模現場では複数人でローテーションを組んで休みを確保したりしています。突発的な事情があればメンバー同士で交代できる体制があり、「現場に行きっぱなし」ということはありません。
――在宅勤務やフレックスタイム制度は導入されているのでしょうか?
はい、どちらも制度として導入しています。週末に出勤した場合は代休を取得でき、平日に休みを振り替えることも可能です。
在宅勤務については、コロナ禍をきっかけにテレワーク制度として導入し、現在も多くの社員がリモートワークを活用しています。
さらに「遠隔監視」や「設備診断」に力を入れ、出張を減らせるよう取り組んでいます。現場のデータを事務所から確認できるようにしたり、iPadでのリアルタイム共有や、3Dスキャンやカメラで状況を把握できる仕組みの導入を進めたりしています。こうした取り組みにより、より計画的かつ効率的に出張できる体制が整ってきています。より働きやすい環境になってきていると思います。
――部署としてはどういった雰囲気でしょうか?
規模は50人弱で、顔と名前が一致する距離感です。そのうち約20人は経験者採用ですが、新卒や中途の垣根もありません。協調的でフラットな雰囲気が魅力ですね。
メンバーは若手からベテランまで幅広く、新卒採用も積極的に行っています。働き方も人それぞれで、早く出社して早く帰る人もいれば、遅めに出て夜まで働く人もいます。リモートワークも含めて、ライフスタイルに合わせて柔軟に働ける環境が整っています。
06. 活躍の鍵は“人との関係を大事にできること”

――入社して活躍できるのはどういった方でしょうか?
年齢によって求めることは多少変わるかもしれませんが、共通して大切なのは「人との関係を大事にできること」だと思います。扱うのは機械ですが、実際に向き合うのはお客様や協力会社の方々です。だからこそ、相手に配慮し、コミュニケーションを取れることがとても重要です。
特別なスキルが必要というよりも、「やってみよう」という前向きな気持ちを持った方に、ぜひ仲間になっていただきたいですね。
――最後に、応募を検討されている方にメッセージをお願いいたします。
「クラボウ」と聞くと、私たちエンジニアリング部隊が取り組んでいる環境設備系の仕事は、なかなかイメージが湧かないかもしれません。ですが実際には、水族館をはじめ、皆さんの身近な場所で活躍しているんです。普段は見えにくいかもしれませんが、私たちの仕事は確実に社会や暮らしを支えています。
ものづくりをしたい方には、ぜひ来ていただきたいですね。私たちの仕事は、決まった製品を大量に作るのではなく、お客様の要望に応じて自分で考え、仲間を集め、周囲を巻き込みながらプロジェクトを形にしていく――そうした醍醐味があります。これこそが環境メカトロニクス事業部の魅力です。
皆さんがこれまで培ってきた経験は、とても大切な財産です。それを存分に活かせる環境を、私たちもしっかり整えていきたいと考えています。ですので、同じ分野の経験がなくても大丈夫。やる気を持って一緒に頑張れる方であれば大歓迎です。何かしらの共通点を見つけながら、一緒に成長していけると思いますので、ぜひ仲間になっていただきたいです。
※FUNTO(フント)…牛の使用済み敷料を殺菌・乾燥し、再利用可能な堆肥として再生する装置。敷料費削減、衛生管理向上、畜産経営の効率化に貢献。