【クラボウ(倉敷紡績株式会社)】技術研究所長と主席研究員に研究所の役割や活躍できる人物像についてインタビュー!

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(写真左)八木 克眞様 常務執行役員 技術研究所長

(写真右)西井 昌一様 技術研究所 基盤技術グループ 主席研究員

01. 会社概要

1888年、地域産業の振興を目指し、岡山県倉敷市に「有限責任倉敷紡績所」として誕生したクラボウ。

以来、基盤となる技術を磨き、応用しながら事業を多角化してきたクラボウは、繊維から化成品、エンジニアリング、エレクトロニクス、バイオメディカルなどさまざまな事業分野へ進出。社会のニーズを鋭敏にとらえ、自社の技術が活かせる分野を見極めながら、事業開拓を続けています。また、若手にも責任ある仕事や大きなプロジェクトを任せ、「人を大切にし、育て伸ばす」社風が受け継がれています。創業130年以上の歴史があって堅実でありつつ、チャレンジングな人財にできる限りの努力を惜しまない、そんな会社です。

02. ご経歴について

お二方のプロフィールについてお聞かせください

八木様:1982年に新卒で入社して、情報開発部(現在:環境メカトロニクス事業部)にSEとして配属になりました。そこではソフトウエア開発や納入後の顧客サポートを行っていました。1996年に上司から突然、新規事業の開発を担当するようにと言われ、当時、技術研究所に併設されていた事業化推進部に転勤となりました。そこで研究所のメンバーと仕事をすることになり、研究所がつくった製品のマーケット開発を担当。

2010年には企画室に転勤して、今後の新規事業や技術研究所のあり方などを構想して、2013年に技術研究所の所長を拝命しました。ミッションは研究所を会社の業容拡大に貢献する部署にすることです。商品開発だけではなく、事業部のサポートも行い会社の将来を担える研究所へと変革させることを目指して改革を行い現在に至ります。

西井様:1990年に新卒で入社して、技術研究所に配属になりました。そこから32年間研究所で勤務を続けています。大学では機械系でしたが最初の配属は情報処理グループでした。そこでソフトウエア開発を5~6年経験し、社内でフッ素樹脂の表面開発プロジェクトが立ち上がったタイミングで、生産装置の開発技術者として参画することになりました。そこから自社工場やバイオメディカル関連の装置開発を20年間担当して、2012年に管理職になり3年前から基盤技術グループ全体のマネジメントをしています。

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03. 技術研究所の役割について

技術研究所のこれまでの役割についてお教えください

八木様:1960年代から技術研究所が中心となって新規事業の研究開発支援を行い、化成品やエンジニアリング部門が育ってきました。研究所から新規事業が生まれ、事業部が立ち上がった段階は、まだ、事業部単独で新しい商品や技術をつくることはできない段階です。この時期は、研究所が事業部をサポートします。その後、事業部が独り立ちすると、また新しい事業を研究所が起こし、今度は事業部の業容拡大をサポートします。大体、10年から15年単位で研究所の研究内容が変わってきました。エンジニアリングの次は情報処理(コンピュータ)、画像センシング(カラーセンサー)、バイオメディカル(細胞工学・遺伝子工学)、機能性樹脂(フッ素やスーパーエンジニアリングプラスチック)などを研究して、それを80年代後半から技術研究所発の事業をリリースしてきました。

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現在の技術研究所の役割についてお教えください

八木様:会社の業容拡大のために2つの役割があります。1つ目は中央研究所的な役割です。新規商品の開発というより、クラボウの5年後10年後の将来に向けた新規事業や新規技術の探索ですね。新しい枠組みや新しい技術を積極的に導入して、クラボウがこれまでに蓄積した技術や経験と融合して、まったく新しい自社の技術を創出する活動です。コーポレート視点で技術開発に取り組んでいます。

2つ目は事業部の収益に直接貢献することです。事業部の商品が抱える課題に新しい技術を導入して問題を解決し、他社にはない商品を開発することです。

いろいろ調査・探索して新しい技術を生み出す「研究」と新しい商品や素材をつくる「開発」、そうした研究と開発で会社に貢献する役割を担っています。

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技術研究所の組織体制についてお聞かせください

西井様:技術研究所は基盤技術と応用開発という2つのグループに分かれています。様々な技術を検証するのが基盤技術グループで、応用開発グループは基盤技術グループが蓄積した技術を新規製品や新規事業にして市場にリリースしていく活動を行っています。約55名が所属する基盤技術グループがしっかりとした技術の土台を作り、15名の応用開発グループが新規製品を生み出しています。

研究所は管理部門なども合わせて80名から90名の組織ですが、新規事業の生産活動に入るときには100名程度の組織体制になる時期もあります。

技術研究所の研究開発体制の特徴についてお聞かせください

八木様:クラボウでは繊維だけでなく化成品や、検査計測や画像に関する情報処理を扱う装置、ロボット、バイオ、環境システムなど、さまざまな事業に取り組んでいます。専業メーカーであればその技術分野だけの専門の研究員を配置すれば研究開発に対応することができますが、クラボウの研究員は、多くの事業に対応するために、繊維、化成品、あるいは半導体関連や計測装置といったようにマルチプレーヤー的に研究活動に取り組む必要があります

そのために2016年に竣工した技術研究所の新建屋は、研究員が複合的な仕事ができるように、フリーアドレスのレイアウトにして、実験室はプロジェクトに関係なく専門分野ごと部屋を設けて、組織体制も組み替えました。

応用開発グループはロボットセンシング、セミコンソリューション、ライフサイエンス、マテリアルソリューションの4つのグループに分かれています。そのプロジェクトに参加する基盤技術グループの研究員は大学の研究室のように専門分野ごとに数理科学、物理科学、光電工学、情報工学、物質科学、生命科学の6つのグループに分かれています。

まず応用開発の研究員がマーケット調査して、こんな製品をつくろうと意思決定すると、その製品をつくるためにどんな人材が必要なのかを考えます。そして基盤技術グループの各専門分野のリーダーに必要なメンバーの選抜を依頼してプロジェクト体制を整えて開発を進めていきます。

基盤技術グループだけでは市場との接点がないため技術をビジネスにすることが難しいです。応用開発グループは、これをコーディネートする役割と言えます。プロジェクトの枠を超えて専門分野の基盤技術の研究員が協力し合える体制と、事業化を見据えてプロジェクトを企画・推進する応用開発グループを持っていること。これがクラボウの研究開発体制の特徴となっています。

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業務内容についてお聞かせください

西井様:現在、技術研究所ではロボットセンシング、セミコンソリューション、ライフサイエンス、マテリアルソリューションの4つのプロジェクトに取り組んでいます。

ロボットセンシングでは、これまでに培ってきた色彩工学や画像処理の技術を発展させて、高速3Dカメラによるビジョンセンシング事業の創出に取り組み、ケーブルなどの動いている物体や形が定まらない柔らかい素材をハンドリングするために、瞬時につかむ位置を探す“ロボットの目”や、AIを活用して対象物を的確に認識する頭脳を開発しています。この技術をもとにして開発した3Dビジョンセンサ「クラセンス」を用いたフラットケーブル高速挿入ロボットシステムを2020年にリリースしました。

セミコンソリューションでは、In-Lineで測定していた半導体洗浄装置内の薬液の濃度や温度を、洗浄やエッチングしているその場でダイレクトに測定するIn-Situ(イン・サイチュ)計測の実用化に取り組み、2021年には製品のリリースを予定しています。

ライフサイエンスでは、核酸分離に関連する生化学と機器制御の技術を発展させた遺伝子応用事業の創出をテーマとしています。この事業に関連する再生医療や新規細胞培養を含めた新規事業の創出を目指しています。

マテリアルソリューションでは、高機能スーパーエンプラフィルムや繊維強化複合素材関連の事業の強化を目指しています。特に、独自の強化繊維素材で、より成形加工しやすい中間加工品(セミプレグ)や金属など異素材と複合化させた新規素材の創出に取り組んでいます。

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04. やりがいや社風について

技術研究所で働くやりがいや魅力についてお聞かせください

八木様:創意工夫しながら納期を守って、自分のペースで仕事ができることですね。

ミッションは与えられますが、プロセスでの時間管理は個人の裁量に任せています。研究所のマネジメントをしていて感じるのは個々人の独自の発想やアイデア、そしてチャレンジ意欲が研究成果に大きな影響を与えるということです。だから、メンバーには労働時間の70%を与えられたミッションで使って、残りの30%は自分の発想を大切にする自由な時間としてもらっています。自分の興味や課題、将来のカメラや電池など仕事と関わりのあることでもいいし、まったく別のAIとかバイオの勉強をして、自分で何か新しいことを見いだせないかチャレンジして欲しいと伝えています。

面白いことをやってみようという「チャレンジ精神」から新規事業や新規技術に展開してもらえるような環境をつくっています。キャリア採用の方はスキルを持っているので、やりたいことを提案してもらえれば自由にチャレンジできますよ。

西井様:研究所には基礎研究(差別化できる技術基盤の整備)と製品開発の2つの仕事があります。新しい事業を起こすには困難な課題が多く出てきますが、キャリア採用の方は即戦力として、前向きな姿勢で課題解決に取り組んで欲しいと思います。自分の専門スキルを活かして課題をクリアした時の達成感がやりがいにつながると思います。

会社の風土、職場の雰囲気についてお聞かせください

西井様:研究員はこだわりが強いイメージがありますが、リーダーがこれをやろうと決めると、研究員それぞれが自分の思いを大切にする一方で、決められた方向に向かって舵を切ってベストを尽くします。研究所全体がチームワークや協力する姿勢を大切にする雰囲気がありますね。

どのようなスキル経験、志向をお持ちの方が活躍していますか

西井様:例えばセミコンソリューションなら、半導体関連事業の経験を持って業界に詳しい知見を持つエンジニアが必要ですし、ライフサイエンスなら遺伝子解析の知見が必要です。

クラボウでは「こんな技術が必要だ」と提案し、プロジェクトを引っ張るリーダーシップを持った方を求めています。失敗したりコンペで負けたりしてがっかりするよりも、敗因を分析して次はこんな製品をつくれば勝てると次のアクションを起こせる人が活躍すると思いますね。

八木様:目標や将来像、あるべき姿を描くことのできる人が活躍していますね。

「今、市場はこれを求めています」とか「今、これをすれば儲かります」といった直近の目利きはあまり求めていません。世界を含めたいろんな情勢を見極めて、10年後にどこでどんな事業ができそうかといったことを考えて、新しい事業を企画して欲しいと思っています。最初に10年後の事業を描いたら、10年後に事業化するために5年後には最低1つの製品をつくって、2~3社に売れるくらいになっていないといけません。ありたい姿やあるべき姿から逆算してゴールやマイルストーンを設定してもらいたいです。この発想で「技術をしっかり身に付ける」「パイロットになってくれるユーザーを見つける」「自社だけで無理ならパートナーになってくれる企業や大学を探す」といったことは大切です。この調査や開発シナリオの立案は重要で、開始0年目の仕事になってきます。

「今はこれで、次はこれをやって、その次はこうして」といった積上型でプロセスを組み立ててしまうと、なかなか思惑どおりに進みません。取り巻く状況は必ず変化するために、仮に計画通りにプロセスが進んでも、少しずつずれが積み重なって、10年後にはとんでもなくずれてしまう可能性が高くなります。10年後のゴールをしっかり描いて、そこから逆算すれば、目標に向かってずれは軌道修正できると考えています。

注力分野や今後の展望についてお教えください

西井様:事業部門と違って、研究部門は受け身の組織になりがちです。会社から予算をもらっているとか支援してもらっているという考え方ではなくて、研究開発が会社にとっていかに重要なのかということを、自らが発信して従業員全員に分かってもらえる組織にしたいと考えています。研究員の中には、社長や事業部の方針に従って上意下達的な発想でミッションを考える人もいますが、研究所が会社の将来を生み出し、自分たちが主役になって事業部に製品や技術を提供できる組織にしていくことを目指しています。

八木様:若い人たちを育成して、最終的には会社に貢献できたという実感を持ってもらいたいです。研究所で働いていることに喜びを感じてもらって、会社の今ではなく将来に貢献していると実感してもらえるように研究員をリードしていきたいと思います。

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05. 求職者へメッセージ

最後に求職者にメッセージをお願い致します。

西井様:専門的なスキルを活かしていただくことはもちろんですが、新しい風をどんどん吹き込んでほしいと思います。前職で経験した会社の仕組みややり方を積極的に提案して欲しいと思います。

八木様:キャリア採用者の最終面接に同席したときに、ある役員が応募者に「魳(カマス)になれ」と言いました。水族館で同じ方向に泳ぐ魚の群れにカマスを入れるとその群れを無茶苦茶に乱すそうです。キャリア入社の方には、そんなカマスになってもらって、惰性的な群れを乱して問題を解決するためのあるべき方向に向かって泳ぎ出し、かつ群れをリードして欲しいと思っています。そんな心意気をもって、クラボウに染まることなく、自立心をもってプロジェクトを率いてください。これまでの自分のキャリアや経験を活かして、研究所のメンバーを事業に誘導してくれる人材に期待しています。

キャリア採用が増えたのはここ数年のことです。その背景は、新規事業として半導体関連のシステムをやっていこうと新規テーマをスタートしたときに、業界の知見がないために半導体業界で開発経験のあった人材を採用しました。そのメンバーが業界の常識を注入してくれ、全員が共有できたおかげでスムーズに開発が進み、半導体製造装置メーカーにもルートができました。キャリア採用の方にはそんな活躍を期待しています。

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この記事を書いた人

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釜瀬 里佳

株式会社タイズ

  • 関西メーカーへの高い合格率に自信あり。メーカーへの深い知見、太いパイプを活かした転職のご支援をさせていただきます
  • 「勤務地・給与」といった条件だけではなく「働きごこち・忙しさ・社風」など転職の軸を丁寧にヒアリングさせていただきます。
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