企業インタビュー
[ 関西電力株式会社 ]
関西電力の土木力――一気通貫で“つくる×守る”を担う技術者

左から株式会社タイズ 担当コンサルタント 柳 貴一朗
関西電力株式会社 土木建築室 土木部長 小坂 馨太様
株式会社タイズ 担当コンサルタント 松岡 千代之介
関西の電力供給を支えるインフラ企業、関西電力。電力販売量は国内第2位、関西エリアでは圧倒的なシェアを占めています。関西電力の土木部門では、水力、火力、原子力、風力などあらゆる電力に関わる設備といった幅広い領域で、計画・調査・建設・保全に携わります。
今回は土木建築室の小坂様に、関西電力の土木部門で働くやりがいや関西電力ならではの強み、効率化の取り組みについて伺いました。
01. 社会インフラを支える誇り。関西電力で歩んだ技術者の道

――これまでのご経歴を教えてください。
関西電力で約27年間キャリアを重ね、その大半を水力発電の分野で歩んできました。計画立案から設計、施工、保全に至るまで、多岐にわたる業務を担いました。その中でも、海外でラオスの水力発電所の建設に携わったことは、非常に大きな思い出となっています。
現在は土木部門全体の調整や長期的な戦略の策定、地震など自然リスクへの対応を行っています。また、発電所建設プロジェクトも進行しており、その立ち上げにも携わっています。
――現在、主に担当されている業務領域を教えてください。
土木部門は約400名の体制で、そのうち半数以上が水力発電の保守を担当しています。水力はこれからも社会に欠かせない重要なインフラであり、引き続き大きな役割を担う分野です。
今後は「原子力の後継機」に関する調査業務の拡大が見込まれています。建設フェーズに進む際には、多くの土木技術者の力が必要です。さらに洋上風力にも取り組んでおり、再生可能エネルギー分野での活躍の場も広がっています。
――印象に残っているやりがいのある経験を教えてください。
大きく分けると「建設」と「保全」の2つのやりがいがあります。まず建設では、ラオスに3年間駐在し、ダムと発電所の建設に携わりました。海外特有のトラブルも多かったですが、仲間と協力して一つずつ解決していく過程に達成感があり、完成したときの喜びは格別でした。
保全では、「設備を守り続ける責任」を強く感じます。私は黒部川の発電所群を担当していましたが、その中には有名な黒部ダムもあります。先輩から「任せた」と引き継いだ瞬間、背負う責任の重さを実感しました。自然災害があれば確認・修繕を行い、設備を次の世代に受け継ぐ――その積み重ねが、社会に安定した電力を届けることにつながっており、守り続けるやりがいを感じました。
――黒部にまつわる印象的な出来事はありますか?
所長を務めていた際の黒部川第3発電所での出来事です。約80年前の建設中に亡くなられた方のご遺族から「慰霊をしたい」と連絡を受け、現地をご案内しました。
88歳のその方は、当時5歳で父親を事故で亡くされたとのこと。涙ながらに語るお姿を見て、「今ある設備は多くの犠牲と努力の上に成り立っている」と改めて感じました。この経験を通じて、設備への愛着と次世代へつなぐ使命感がより一層強まりました。
――ラオスでのエピソードで、現地ならではの思い出はありますか?
現地では工事と同様に、地域の方々との信頼関係づくりが重要でした。村に道路やダムを建設することは生活の大きな変化を伴うため、最初は賛同を得るのが難しい場面もありました。
そんな中で、お祭りに招かれて村長を中心に焼酎「ラオラオ」を回し飲みするなど、地元の風習を尊重して交流を深めました。強いお酒に苦戦しながらも(笑)、その時間が信頼を築くきっかけとなり、地元と一体になってプロジェクトを進めることができました。
――技術的な面で特に印象に残っていることを教えてください。
黒部ダムに匹敵する規模の工事だったため、関係者との連携が欠かせませんでした。私たちが中心となり、日本の建設会社や現地企業と協力して施工を進めました。
海外では安全意識が日本ほど高くないため、まずは安全教育から始めました。また、日本の品質基準は非常に厳しいため、現地でもそれを実現できるよう徹底的に管理しました。
その結果、技術・品質ともに誇れる成果を残すことができたと感じています。
02. 業界をリードするDX推進――常に「最初の一歩」を踏み出す関西電力
――関西電力ならではの強みについてお聞かせください。
関西電力の特徴は、常に「最初の一歩」を踏み出してきた会社であることです。黒部ダムの建設をはじめ、日本で初めて原子力発電所を建設したのも関西電力です。
また、ラオスのナムニアップ1水力発電所は、海外でゼロから大規模水力発電所を完成させた日本初の事例となりました。
「新しいことに挑戦する精神」が社内文化として根付いており、その姿勢を間近で感じながら働けるのが魅力です。挑戦心を持つ方にとって、大きなやりがいを感じられる環境だと思います。
――特に土木領域で、他社と異なる取り組みはありますか?
設備自体に大きな差はありませんが、私たちは業界の中でも早くからDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に導入しています。
点検や工事をより効率的に行えるよう、現場の声を本店が取りまとめ、仕組みとして全社に展開する――このサイクルを素早く回しているのが特徴です。こうした取り組みは業界の中でも先進的だと自負しています。
――DXへの取り組みについて、具体的な事例を教えてください。
一例として、「スノージャム」と呼ばれる寒冷地特有の現象への対策があります。雪が取水口に流れ込み、詰まってしまうと大きなトラブルにつながるため、以前は人が常駐して監視していました。
現在ではカメラやセンサーを用いて自動で状況を検知し、危険があれば遠隔で水の流れを止められる仕組みを導入しています。
また、ダム周辺や人が立ち入りにくい高所ではドローンを活用。これにより、点検の安全性・効率性の両方が大きく向上しました。
03. 伝統と革新が共存する――関西電力 土木部門の強い組織力

――組織体制について教えてください。
土木部門全体では約400名が所属しています。そのうち、私が所属する「土木建築室」は約50名。部門全体の統括や社内調整のほか、原子力関連の審査対応、地震・津波などの専門分野、さらには長期戦略や研究開発まで、幅広い役割を担っています。
また、設備の保守・運用を担当する事業本部もあり、全体の約6割が水力発電、残りの約2割が火力や原子力に配属されています。そのほか、変電・風力・国際事業を担当する部署もあり、原子力の将来戦略を検討する機関へ出向するケースもあります。
「出向」と聞くとネガティブに感じるかもしれませんが、社外で新しい経験を積み、成長して戻ってくるための前向きな制度として位置づけています。
――組織の年齢構成や雰囲気を教えてください。
年齢層は40代後半以上と30代半ば以下の若手が多く、35〜45歳の中堅層がやや少ないのが現状です。
この世代は経験豊富で現場の中核を担う層なので、今後の課題でもあります。
ただ若手社員が続々と入社しており、職場全体には活気があります。ベテランが中堅層の不足をカバーしつつ、若手にノウハウを積極的に伝えているのが現在のスタイルです。
――世代を超えて共通している特徴はありますか?
どの世代にも共通しているのは、「挑戦する姿勢」「組織への愛着」「周囲との信頼関係を大切にする文化」です。
関西電力の良さを次世代に引き継ごうという意識が強く、ベテラン社員が率先してその姿勢を示しています。
――キャリア採用を進める中で、組織をどのように変えていきたいとお考えですか?
この3年ほど、継続的にキャリア採用を行ってきました。
入社された方々には、前職で培った経験や視点をそのまま活かしてほしいと思っています。私はいつも「関電に染まりすぎないでください」と伝えています。最初の“違和感”や“気づき”こそが組織を成長させる大切なエネルギーになるからです。
実際、キャリア採用者の意見をきっかけに、事務作業を派遣スタッフに任せ、技術者が本来の業務に専念できる体制を整えることができました。
関西電力にとって、外からの新しい視点は貴重です。これからも、キャリア採用の方々には“新しい風”として組織を刺激し、進化を支えてほしいと思っています。
04. ゼネコンとの違いは「一気通貫」――建設から保全まで携われる環境

――土木部門では、具体的にどのような業務を担当されているのでしょうか?
関西電力の電源は、水力・火力・原子力・風力と多岐にわたります。さらに変電所などの設備も対象で、土木技術者はそれぞれの分野で計画・調査・建設・保全といった幅広い工程に関わります。
現在は保全業務に携わる人が多い一方で、新規プロジェクトも始動しており、建設や調査に挑戦できる機会も増えています。
――ゼネコンやメーカーと比べて、どんな違いがありますか?
最も大きな特徴は「最初から最後まで一貫して関われること」です。
ゼネコンでは建設完了後に次の案件へ移ることが多いですが、関西電力では建設よりも保全の期間が長く、設備をつくるだけでなく“どう長く安全に使うか”まで関与します。いわば「一気通貫」で経験を積める環境です。
――やりがいを感じる瞬間について教えてください。
長く関わるほど設備への愛着が生まれます。入社前から稼働していた設備を先輩から引き継ぎ、自らの手で守り、次の世代へつなぐ――その責任感とやりがいは非常に大きいです。ラオスで建設を担当した水力発電所も、今でも「自分の設備」という思いがあり、無事に動いていると聞くと嬉しくなりますね。
――技術面や、それ以外で身につくスキルにはどのようなものがありますか?
技術面では、水理学やコンクリート構造、耐震・津波対策など、幅広い専門知識をOJTを通じて学べます。
一方で、技術以外に重要なのが「調整力」です。改修や点検では協力会社や官公庁とのやり取りが欠かせず、社内でも電気系部門など多くの関係者と連携します。多様な立場の人々と調整しながらプロジェクトを前に進めるスキルが身につきます。
――中途入社の方には、どのようなキャリアパスを用意されていますか?
多くの方がまず現場からスタートします。設備の保全や建設を経験し、2〜3年後には希望や適性を踏まえて設計や計画部門へステップアップすることも可能です。
柔軟にキャリアを築ける仕組みが整っており、さまざまな業界から転職された方が活躍しています。
――「総合職」と「プロフェッショナル職」の違いを教えてください。
総合職は将来的な幹部候補として採用し、まずは現場を経験。その後、設計や全体計画を担当し、段階的に役職へとステップアップしていきます。
一方、プロフェッショナル職は現場の第一線でキャリアを重ね、現場責任者を目指す職種です。設計や施工を中心に、専門性を磨けるポジションです。ただし、各職場では総合職とプロフェッショナル職を区別することなく配置し、一緒に仕事をすることになります。
――プロフェッショナル職から総合職に切り替わることはありますか?
制度としては設けていませんが、実力次第ではプロフェッショナル職でも通常より速いスピードで昇進するケースがあります。
形式的な区分に関わらず、意欲と成果次第で総合職と同じステージに昇進することが可能です。
05. DXとクラウド活用で業務をスマートに。無駄のない働き方へ

――土木の仕事はハードワークなイメージもありますが、実際はいかがでしょうか?
実際には、平均の時間外勤務は月20〜30時間程度です。基本的に完全週休二日制で、祝日もお休み。有給休暇は年間24日あり、しっかり取得するよう会社からも推奨されています。もちろん現場ですので、気象災害や設備トラブルが発生すれば急な対応が必要な場合もありますが、その際は代休をきちんと取得できる仕組みがあります。
「土木=ハードワーク」という印象を持たれる方も多いですが、実際はメリハリをつけて働ける環境だと思いますね。
――残業が少なく抑えられているのは、やはり工夫があるからですか?
はい。近年は会社全体で「効率的に働く」という意識が高まっています。例えば、会議の議事録は「結論だけを共有する」ように簡素化。資料もクラウド上で共同編集できるようにして、手戻りを減らしています。
上司とのやり取りもこまめに行い、行き違いを防止。メールやチャットツールの活用も進めており、こうした小さな取り組みの積み重ねが、残業時間の削減につながっています。
――発注側ならではの業務コントロールについてはいかがですか?
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んだことで、以前は紙で行っていた手続きや確認作業が、今ではパソコンやiPad上で完結できるようになりました。
現場に足を運ぶことも大切ですが、必要に応じてウェブカメラでの確認も可能です。
現地とリモートをうまく使い分けることで、時間の使い方をより柔軟にコントロールできるようになりました。
――ジョブローテーションの頻度や異動範囲について教えてください。
一般的には2〜3年に一度の頻度で異動があります。
原子力なら福井県若狭地方、水力なら富山・長野・岐阜・和歌山・兵庫など、幅広い地域に拠点があります。そのため、これらの地域を中心に異動の可能性があります。
ただし、会社が一方的に決めるわけではありません。
毎年「キャリアデザインシート」を提出して、自分の希望や挑戦したい仕事を申告します。 その内容を上司と相談し、可能な限り希望を反映しています。
もちろん会社として必要な経験を積んでほしい領域に配置する場合もありますが、個人の意思を尊重する仕組みになっています。
――家庭の事情なども考慮されるのでしょうか?
もちろんです。最近は女性技術者も増えており、結婚や出産などライフイベントに合わせて働き方を見直すケースも増えています。
そうした場合には、勤務場所や業務内容を柔軟に調整し、長く安心して働けるよう配慮しています。
06. 関西電力でしかできない経験を、あなたのキャリアに

――どのような方に来ていただきたいですか?
技術分野のバックグラウンドは問いません。コンクリート、土木、水力、原子力――どんな経験も活かせるフィールドがあります。特定の専門分野に限定せず、幅広い方に活躍のチャンスがあります。
何より大切なのは、「元気で前向きに取り組めること」。
関係者との調整も多い仕事のため、時には思うように進まない場面もあります。そんなときでも諦めず、前向きに粘り強く取り組める方と一緒に働きたいですね。
――最後に、応募を検討されている方へメッセージをお願いいたします。
関西電力に入社すれば、本当にさまざまな仕事に挑戦できます。新しいことにチャレンジしたい方、共感してくださる方は、ぜひ応募してください。お待ちしています!