企業インタビュー
[ 関西電力株式会社 ]
耐震からZEB化まで――多様な建物を支える関西電力建築部門の社会的使命

左から株式会社タイズ 担当コンサルタント 松岡 千代之介
株式会社タイズ 担当コンサルタント 柳 貴一朗
関西電力株式会社 土木建築室 建築部長 木場 将雄様
同社 土木建築室 自然リスク・構造評価グループ リーダー 奥中 良佑様
同社 土木建築室 建築統括グループ リーダー 松岡 紗矢佳様
関西の電力供給を支えるインフラ企業、関西電力。電力販売量は国内第2位、関西エリアでは圧倒的なシェアを占めています。
土木建築室には土木部門と建築部門があり、建築部門では各電源の発電所や送配電関連の建物の保全を統括しています。原子力発電所の耐震化やZEB化の検討などの領域まで担っています。
今回は土木建築室の木場様、奥中様、松岡様に、関西電力の建築部門で働く魅力ややりがい、原子力発電所の耐震化をはじめとした印象的な業務、求める人物像について伺いました。
01. 社会インフラの根幹・未来をつくる、関西電力 建築部門

――皆様はどのような業務や役割を担当されているのでしょうか?
木場様:建築部長という立場で、建築部門全体の統括と運営を担っています。約250名のメンバーにとって働きやすい環境を整えることが私の役割です。
奥中様:私は原子力部門や水力部門、火力部門と渡り、建屋の耐震評価を実施する業務や建物の維持管理を行う業務に従事してきました。現在は、建築構造に関わる業務を担当しています。主に、福井県の原子力発電所施設における耐震評価を中心に業務を進めています。
松岡様:私は長年、建築設備系の部署に所属し、社有建物やお客様建物のエネルギーマネジメントを中心に担当してきました。加えて、ZEB化(ゼロ・エネルギー・ビル)の検討業務などにも取り組んでいます。発電所関連の建物だけでなく、事業所やオフィスなど幅広い建物を手がけています。
――組織体制と役割について教えてください。
木場様:建築部門全体では約250名が在籍しています。そのうち、私たち3名は「土木建築室」に所属しています。
当社の建築部門のメンバーは、ベース業務として発電所(火力・原子力・水力)や送配電関連の建物ごとに保全を担当する部署に配属されており、そこで日々の保全業務を行います。その全体を統括しているのが私たち土木建築室です。
保全工事が多い時期は保全現場に、原子力の審査が集中する時期は原子力審査対応に人員を重点的に配置するなど、状況に応じた最適なリソース配分を行っています。そうしたマネジメントが私の主な役割です。
――建築部門の業務領域について教えてください。
木場様:大きく分けると「保全」「建設」「原子力の耐震など高度技術」「エネルギーマネジメント」の4領域です。土木建築室としては、特に高度技術対応や保全ルールの策定を担っています。
現在は、南港発電所のリプレース工事や、外部企業と連携したデータセンターの建設などにも携わっています。
新しいプロジェクトが始まる際には、必ず建物の建設が必要になります。その際、私たちは社内外の関係者をつなぐハブとして、設計会社やゼネコンとの調整を行い、プロジェクト全体をマネジメントする役割を担っています。
――原子力と他の電源や建築事業者との違い、そして関西電力ならではの特徴はありますか?
奥中様:関西電力は原子力発電所を多く所有しており、その安全性を継続的に社会へ示す責任があります。特に耐震評価は重要で、一般的な建築物とは比較にならないほど高いレベルの性能が求められます。そのため、建築構造の知識に加えて原子力特有の知見も必要です。
こうした複合的なスキルを磨けるのは、当社ならではの魅力だと思います。
松岡様:建築設備の分野では、ZEB化の推進やエネルギーマネジメントの強化を通じて、カーボンニュートラルの実現を目指しています。社内施設だけでなく、お客様の建物に対しても支援を行っています。
ZEB化の推進は、エネルギー会社の建築部門として「カーボンニュートラル」を実現するための重要な取り組みです。社有建物の中には築年数の古いものも多く、それらも対象にZEB 化を進めています。その過程で生じる技術的な課題をどう乗り越えるか――それが今、私たちの大きなテーマになっています。
――印象に残っている業務ややりがいを感じた案件はありますか?
奥中様:私にとって特に印象深いのは、原子力発電所の再稼働に関わる新規制基準審査対応に関わったことです。東日本大震災後、新たな規制基準のもとで安全性を国に示す必要があり、その対応を進める中で既存の原子力発電所の耐震評価や特定重大事故等対処施設の設計にも携わりました。安全性が認められて再稼働が実現したとき、そしてニュースで自分の携わったプロジェクトが報じられたときの達成感は、今でも忘れられません。
木場様:私も同じく、原子力発電所の再稼働に関わる新規制基準審査対応が最も印象に残っています。検討作業の一部はゼネコンや設計会社に依頼しますが、原子力規制庁への説明や議論は私たち建築部門の役割です。安全性を論理的に示し、国民の皆様に安全だと納得してもらえるように取り組む。その過程に大きなやりがいがありましたし、我々にしかできない仕事だと感じました。
実際に発電所が実際に再稼働したときには、「自分たちが貢献できた」という実感が湧き、大きな喜びにつながりました。
奥中様:一般的な建築では地震時の安全性を確認しますが、原子力の場合はそれに加えて津波や竜巻など、複数の自然災害に対する安全性も検証する必要があります。多様なリスクをどう想定し、どんな評価を行うか――そこが難しく、やりがいのある点です。
松岡様:関電病院の評価プロジェクトに長く携わってきました。「オール電化のモデル病院」として建設され、50年にわたって導入技術の評価や運用改善を継続。その成果が認められ、省エネ大賞や学会賞など多くの賞をいただいたときは大きな喜びを感じました。
また、新設の市役所プロジェクトも印象深い案件です。“ZEB Ready”(建物のエネルギー消費を50%以下に削減)を設計目標に掲げていましたが、私たちには「運用努力で“ZEB Ready”を上回る省エネを達成する」というミッションがありました。
職員の働き方や議会の運営スケジュールを丁寧にヒアリングし、運用改善を重ねた結果、目標を達成し感謝の言葉をいただけたのは印象的でした。
――直近で重要になっている案件やテーマはありますか?
奥中様:耐震関連では、長年稼働している原子力発電所のメンテナンスのための改造工事の影響を評価・確認し安全性を継続的に示す業務が現在の重点テーマのうちの1つです。
――マネジメントを統括される立場から見て、この10年ほどでの変化や今後の展望はありますか?
木場様:これまで電力会社の建築技術者として発電所の保全を中心に取り組んできましたが、近年は仕事のあり方が大きく変化していると感じます。例えば、社内施設だけでなく、これまで培ったノウハウを社外のお客様へのコンストラクションマネジメントとして提供し始めていることや、DXやAIといった新しい技術の導入により、社内建物の管理をより効率的に行えるようになってきたことです。今後は、社員が調整や計画といった付加価値の高い業務に集中できるよう、仕事のスタイルをさらに進化させていきたいと考えています。
02. 「仕事が回れば場所は問わない」自由度の高い働き方
――残業時間や働くスタイルはいかがですか?
奥中様:建設業界全体と比べると残業は少ない方だと思います。
チーム内では、私がリーダーとして業務量を見ながら配分し必要に応じて補助します。バランスを取りつつ効率的に進めることを心がけています。
テレワーク環境も整っており、私自身も子育て世代として柔軟に働いています。週3日ほど在宅勤務ができる環境で、会議もWebで対応していることが多いです。
松岡様:私は入社11年目で、これまでの半分以上は子育てのため時短勤務でした。フレックスやテレワークなどの柔軟な働き方が浸透しており、引け目なく活用できています。最近は男性の育休取得率も上がっており、女性側だけが負担するという感覚が薄れてきたのも良い変化だと思います。
木場様:私も週1回ほど在宅勤務を取り入れています。対面のほうが効果的な場面もあるため使い分けていますが、柔軟に働けるのは大きな魅力です。
テレワークの頻度や運用については、基本は自由です。個人の事情やグループのスタイルに合わせて運用しています。月ごとの変動も含めて本人に任せていますね。仕事がきちんと回っていれば、場所は問題にならないというスタンスです。
――テレワークの導入は会社全体の方針でしょうか?
木場様:そうですね。部門ごとに多少違いはありますが、建築部門はリモートを積極的に取り入れています。
03. 建築部門の風土はオープン、多様性と意見交換で進化する組織

――チームの年齢構成やコミュニケーションの雰囲気はいかがですか?
奥中様:私のチームは4人編成で、上にマネージャー、私がリーダー、担当者が2名という体制で、30代~40代が中心です。新しい取り組みが多いですが、経験豊富な方も多く在籍しているので、担当者も含めて様々な意見交換を活発にし、学びながら業務を進めていますね。テレワークが中心ですが、TeamsやZoomで常に相談できる環境があり、コミュニケーションに困ることはありません。
松岡様:私の部署は統括業務が多く、40〜50代が中心ですが、部門全体では20代から50代まで幅広い世代が在籍しています。キャリア採用も増え、多様な価値観が交わる環境になっています。新しく入社した方を紹介する専用チャットを設けるなど、交流の工夫もしています。
――キャリア入社者の意見の通りやすさや風通しはいかがですか?
木場様:会社全体で風通しの改善を進めていますが、建築部門は特に良いと思います。実際に、キャリア入社の方からも「想像以上に何でも言える」と言われます。
私からは「最初の2ヶ月で感じた違和感をリストアップしてほしい」といつもお願いしています。慣れる前だからこそ見える視点を大事にし、改善につなげたいと思っています。
奥中様:建築部門ではローテーションで異なる部署を経験する社員も多く、他部門の良い取り組みを積極的に意見でき改善につなげる風土があるので、キャリア入社者の方にとっても意見の通りやすさや風通しはよいと思います。
――キャリア採用を進めるにあたり、風土の変化もあったと思いますが、キャリア採用の目的は何でしょうか?
木場様:目的は大きく2つあります。
1つ目は人材の確保です。現在、大型の建設プロジェクトが計画されており、今後も人手が必要になる見通しです。
2つ目は組織の活性化です。キャリア入社の方は、それぞれ前職での経験や考え方を持っています。その経験や考え方が新しい視点となり、関西電力の強みや課題を浮き彫りにしてくれます。良い点は伸ばし、課題は直す――そうした循環が、組織を前向きに変える原動力になっています。
キャリア採用は昨年から本格的に始まり、これまでに12名ほどが入社しました。
――キャリア入社者からの意見で印象的だったことはありますか?
木場様:多いご意見の一つは「自分たちでやりすぎでは?」という意見です。
私たちは“自前主義”の文化が強く、何でも自分たちで進めようとする傾向がありました。そこで、自分たちで行っていた事務的な業務を外部委託に切り替えつつあります。結果として、本来業務により集中できるようになりました。
また、「議事録を細かく書きすぎている」との指摘もありました。
今では、お客様との打ち合わせ以外は録音とAIを使い、結論だけを残す形に変更し、会議の効率が大きく上がりました。
こうした提案をきっかけに意見が出やすくなり、組織をより良く変えていこうという雰囲気が生まれています。
松岡様:私も、前職がコンサル会社だった方から多くの刺激を受けています。
「効率化」「高度化」の取り組みを進める中で、社内にはなかった視点をたくさんもらいました。異なる業界の経験を持つ方と一緒に働けるのは、とてもありがたいですね。
04. 仕様や方針を自ら決められる、発注者の大きな魅力
――発注者側で働く魅力と得られるスキルについて教えてください。
奥中様:プロジェクト全体の舵取りを担える点です。設計方針や進め方を自分たちで決め、関係者と調整しながら最適な答えを導きます。建築設計の知識だけでなく、プロジェクト調整能力や説明能力が自然と鍛えられます。
松岡様:自分たちで仕様や方針を決められるのは大きな魅力です。
たとえばZEBを目指した設備設計など、目的を自ら設定し、運用・保守まで関わります。建物のライフサイクル全体を見渡す力が身につきます。ゼネコンは完成後の運用を外部に任せることが多いですが、私たちはその知見を次の設計に直接活かせます。これは発注者ならではの強みです。
また、新しい試みを取り入れるプロジェクトが多く、常に挑戦できる環境であることも魅力です。例えば、環境問題の解決には、建築の力が欠かせません。ZEB化や再生可能エネルギ ーの導入など新しいことに挑戦できるチャンスがたくさんあるのも嬉しいですね。
――詳細設計などの実務は協力会社に任せるのでしょうか?
奥中様:計算作業そのものはゼネコンや設計会社に委ねますが、発注者として「どんな考え方・条件で設計しているのか」を必ず把握します。原子力規制庁等の社外の関係者に説明する立場なので、ロジックを理解したうえでアウトプットを確認・監督する・説明する責任がありますね。
――新しい技術の導入についてはいかがでしょうか?
松岡様:社内に検証用フィールドを設けて試験導入を行います。
実際に使ってみて効果を確認したうえで、全社展開します。
自分たちで検証しながら導入できるのは、発注者側だからこそできる進め方です。
――キャリア入社後のキャリアパスを教えてください。
木場様:基本は新卒社員と同じで、ローテーションをベースにしています。
電源別の職場や業務系の建物など、特色のある現場を幅広く経験しながらスキルを磨きます。
構造やエネルギー分野に強みがある方はそれぞれの得意分野を生かす領域を軸に他領域も経験しながら、マネジメント力を磨いて役職へとステップアップしていくイメージです。
また、ローテーションの目安は約3年です。
1年目で学び、2年目で実践、3年目で改善や挑戦――そんな流れで成長していくイメージです。固定観念を壊し、新しい発想を生む機会としても重視しています。
勤務地や業務は、年1回の希望申告をもとに上司と相談して決めます。
勤務地の申告は例えば、「①遠隔地勤務不可」「②配慮してほしい」「③どこでも可」の3段階で、申告を尊重しながら、人財配置を検討しています。
――奥中様と松岡様は、これからどんな経験やキャリアを描いていきたいですか?
奥中様:これまでいろいろな部署を経験してきましたが、今後はまだ関わったことのない分野にも挑戦してみたいですね。
松岡様:私は長くエネルギーマネジメントに携わり、データ分析やツール活用で業務を早く回す力を磨いてきました。今は部門全体の業務効率化に取り組んでおり、これまでのスキルが役立っています。今後は、事務処理など皆が困りやすい業務を仕組みで解決する側にも挑戦していきたいです。
05. 新設案件も視野に、活躍のフィールドはこれからさらに拡大

――求める人物像を教えてください。
木場様:新しいことに前向きに挑戦できる方です。私たちのやり方にとらわれず、キャリア 入社の方の経験や文化を活かして部門を一緒に成長させていける方を歓迎します。
奥中様:今後原子力の新設など、前例のない業務も控えています。ルールがない中で自ら考え、周囲と連携しながら進められる方が向いていますね。
松岡様:遠慮せず意見を言える方ですね。関西電力は歴史が長い分、良くも悪くも“型”があります。「ここは変えた方がいい」「これはやめた方がいい」と率直に言ってくれる方と一緒に働きたいです。
――応募を検討している方にメッセージをお願いいたします。
木場様:発注者として、舵取り役を担い、計画から更新まで建設のサイクル全体を見渡せます。ゼネコンやデベロッパーとは違うやりがいがあります。共感いただける方はぜひご応募ください。部門の一員として一緒に働ける日を楽しみにしています。
奥中様:原子力・水力・火力など幅広い建物を扱えるため、設計スキルを大きく伸ばせます。原子力の新設案件も控えており、今後さらに活躍の場が広がります。ぜひ一緒に挑戦しましょう。
松岡様:事業領域が広いので、建築のご経験があれば活躍の場は必ずあります。当社にない新しい価値観を持つ方と働けること、いい刺激をいただけることを楽しみにしています。ぜひ来ていただけると嬉しいです。