企業インタビュー
[ 株式会社神戸製鋼所 ]
製鉄所の基盤を支える設備部 キャリア採用者が多様な設備領域で中長期的に成長する神戸製鋼所

左から
株式会社タイズ 担当コンサルタント 高山 聡
株式会社神戸製鋼所 鉄鋼アルミ事業部門 加古川製鉄所 設備部 設備技術室 長橋信彦様
株式会社神戸製鋼所 鉄鋼アルミ事業部門 加古川製鉄所 設備部長 田中貴雄様
株式会社タイズ 代表取締役 今井 良祐
神戸製鋼の鉄鋼アルミ事業部門において「製鉄所内の設備のプロ集団として知識・技能・技術・経験を駆使して収益を追求する」をミッションに掲げる加古川製鉄所 設備部。企画検討、基本設計、メーカー選定、詳細設計、建設工事、試運転まで一貫してプロジェクトに関わり、製鉄所の全設備を管轄することで幅広い技術に携われる環境で働くことができます。
キャリア入社者が大型プロジェクトを担当できる挑戦環境と、困ったときは全員で助け合い、答えを導き出す協力的な職場文化について、神戸製鋼所 鉄鋼アルミ事業部門 加古川製鉄所 設備部長の田中貴雄様と、設備部 設備技術室 長橋信彦様に伺いました。
01. 年間数百億円を動かす設備部は、キャリア入社3年目でも大型プロジェクトを担当できる挑戦環境

——まずは、お二人のご経歴と現在のお役割について教えてください。
田中様:私は前職で10年間エンジニアとして、フィルムプリント基板の設備を担当していました。より大きなことがやりたいと思い、2006年に神戸製鋼に入社し、約8年間設備技術室での業務に携わった後、当時の神戸製鉄所(現:神戸線条工場)の設備室長に任じられ、神戸製鉄所内の設備保全業務をマネジメントの立場で経験しました。その後、2023年4月から加古川製鉄所の設備部長を務めています。
現在のミッションは、会社収益に貢献するプラントエンジニアのプロ集団を作っていくことです。私たちは加古川製鉄所の全ての設備を管理しており、既存設備をいかに安定的に稼働させるか、投資案件をいかに効率的に遂行するかというところで、会社に貢献することが求められています。
長橋様:私は前職で10年ほど200〜300m級の大型商船のエンジン周りの設計をしていました。前職で関わりのあった神戸製鋼に興味を持ち、転職活動を経て2022年5月に神戸製鋼に入社しました。現在は設備技術室で、各設備の改造や新しい設備を導入する業務を担当しています。
——設備部として、担当領域や業務の進め方について他社との違いや特徴的な部分はありますか?
田中様:我々が重視しているのは「各担当者の領域の広さ」であり、設備におけるゼネラリストを育成することです。設備部では設備のプロ集団として「知識・技能・技術・経験」を駆使して収益を追求することを目指しています。そのために自分の専門ではない設備領域も経験し、知識・スキルを増やしていってほしいと思っています。また、他社では新しいプロジェクトを本社部門が主導して進めることがあるそうですが、神戸製鋼は事業所が企画検討、基本設計、メーカー選定、詳細設計、建設工事、試運転まで一貫してプロジェクトに関わって進めることができます。また、設備部では製鉄所の全設備を管轄しており、幅広い技術に携われるため、プラントエンジニアとして総合的な知識と技術スキルが身につきます。このように組織間の役割の垣根がなく、業務を執り行えることは大きな特徴かと思います。
プロジェクトの規模としては、数十億~数百億円の案件も豊富にあります。1人の担当者が10〜30億円規模を動かすことも珍しくありません。もちろん上司がついてのことですが、若手にも早い段階から大型案件を主担当として経験できるのも当社の特徴です。
02. 最新技術投資プロジェクトと脱炭素への挑戦
——現在注力されているプロジェクトや投資計画について教えてください。
田中様:大きく3つの柱があります。まず、加古川製鉄所は今年で55年目を迎え、ここ数年は老朽化した設備の更新にかなりの投資金額を投入しています。
次に戦略投資として、KOBEMAG®という高耐食めっき鋼板の自社一貫生産化プロジェクトが進行中です。これは約320億円をかけた大型プロジェクトで、2028年度の稼働開始、2029年度の自社一貫生産開始を目指しています。またKOBEMAG®は優れた耐食性を持つ合金めっき鋼板で、住宅・建築・自動車など幅広い分野で需要が見込める製品です。
そして3つ目がカーボンニュートラルへの取り組みです。UBE三菱セメント㈱とブラックペレットの共同事業化に向けて検討を始めています。ブラックペレットはバイオマス燃料である木質ペレットを炭化した、石炭と同等の発熱量を持つ脱炭素原燃料で、鉄鋼生産プロセスや火力発電所において使用することで、石炭の使用量を減らし、脱炭素化に資することができます。2026年には合弁会社の設立を目指しており、加古川製鉄所における使用に向けた検討を進めています。
——プロジェクトの体制はどのようになっているのでしょうか?
田中様:プロジェクトチームは案件にもよりますが、大型案件では5名程度で構成します。検討段階では少人数ですが、建設段階ではもう少し人数が増えます。その中には必ず若手も入れて、経験を積めるようにしています。
現在進行中のKOBEMAG®プロジェクトでも、入社3年目のスタッフも配置しています。若いうちから大きなプロジェクトに関わることで、将来的にプロジェクトを引っ張っていける人材に育っていくと考えています。
03. 技術力とコミュニケーション力、両方を重視
——どのような方に来ていただきたいと考えていますか?
田中様:何より重要なのは、「関係各所と密にコミュニケーションを取り、協調・協力しながらプロジェクトを推進できること」です。我々の業務においては社内のコミュニケーションはもちろん、社外のメーカーや施工会社とも連携することが多いです。そのような中でイニシアチブを取り、関係各所と円滑にプロジェクトを推進できる方はご活躍いただける可能性が非常に高いです。
そして新しい領域にチャレンジしたい人ですね。鉄鋼の設備は特殊で、全く同じ経験をしている方は同業他社にしかいません。ですから、ご自身がこれまで歩んできた道のりで培ったスキルを活かして、どんなことにチャレンジしたいかという考えを面接ではぜひお伺いしたいです。
それが仮にこれまでに経験の無い領域であっても結構です。入社してから自分がどれだけやりたいのかという意思が大切ですから、自分の意見を持った方に来ていただきたいですね。
——鉄鋼業界での経験が無い方でも、活躍できるのでしょうか?
田中様:はい。むしろ異業界の経験を歓迎しています。過去に当社にキャリア採用で入社した社員も廃棄物、水処理、発電、製糸など、鉄鋼業界未経験から活躍しています。プラントエンジニアとしての基本的な経験があれば、業界は問いません。
長橋も船舶エンジンという全く違う分野からの転職ですが、顧客や社内関係者と連携の上、要件定義・仕様策定を進めていたことや熱・流体・燃焼などの基礎工学的知識などプラントエンジニアとしての基礎があったからこそ、スムーズに適応できました。
——社員の成長を支援する取り組みについて具体的に教えてください。
田中様:年に2回、全スタッフと面談を行っています。80名全員のキャリアシートを確認し業務目標と成果、そして将来のキャリア希望を把握するようにしており、面談を通して将来のキャリアパスを一緒に検討しています。
一方で、部としては若手社員向けの勉強会を年4回ほど開催しています。具体的な例としては、軸受けメーカーやモーターメーカーを招いた技術セミナーが挙げられます。また、会社が必要だと判断すれば、本人が希望する研修や資格取得に対して、金銭面でも支援します。
また、現在の管理職の約3割がキャリア採用で入社した者です。入社後もキャリアアップしていく環境が整っていると言えるでしょう。
04. 困ったときに必ず助けてくれる人がいる文化

——職場の雰囲気や文化について教えてください。
長橋様:一言で表すなら、「人がとてもいい」ということです。実は転職の決め手もそれでした。神戸製鋼に転職した知り合いから話を聞いたところ、「人がいい。すごく優秀だけど、それを鼻にかけないで、自分が困っているときにはとても親身に教えてくれる」と言っていました。
実際に入社してみて、本当にその通りでした。自分が困ったときにすぐに「どうした?」と声をかけて助けてくれる人が多くて、現場で突発的なトラブルが起きたときも、「みんなで頑張ろう」という雰囲気で対処する場合も多々あります。
田中様:実際、我々の部署も決して最初から理想的な組織だったわけではありません。過去には組織運営上の課題もありました。そうした反省もあって、ここ2〜3年は上からの指示ではなく、スタッフ参加型の組織改革に取り組んでいます。
具体的には、部員全員が参加できる改善提案の仕組みを作ったり、若手からベテランまでがフラットに意見を言い合える場を定期的に設けたりしています。まだ道半ばですが、少しずつメンバーの意識が変わってきているのを感じています。
——前職との違いで印象的だったことはありますか?
長橋様:前職では社外のお客様に対してサービスを提供していましたが、今は生産技術などの社内がお客様です。同じ神戸製鋼の仲間として一緒に作り上げていくという感じで、遠慮なく本音で話し合えます。
一方で要求ハードルは高いですが、一緒に考えてくれる関係なので一人で解決しなければならないということはありません。お互いに持ちつ持たれつの関係であり、設備がしっかりしないと生産できませんから、誰もが協力的になるという側面もあります。
田中様:働き方については、時代の流れと働き方改革によって昔と今では大きく変わったと思います。工場は365日稼働していますが、突発的な呼び出しはそれほど多くありません。基本的には現場主体の保全室が対応し、設備技術室が呼ばれるのは設計を伴うような場合だけです。工事スケジュールは事前に決まっているので、その期間は忙しくなりますが、予定は見えています。
——入社後はいかがでしたか?
長橋様:まず、業務フローを理解することが重要でした。半年程度で大まかに把握できましたが、前職とはルールやシステムが違うので、仕事の進め方を一から覚える必要がありました。ただ、OJTで現場の方々が丁寧に教えてくれたので、難なく新しい環境でも馴染めました。
また、朝のミーティングでの情報交換も良い刺激となっています。例えば「街中を歩いていて、この構造はどう支えられているのか気になった」といった話から、みんなで技術的な議論が始まることがあります。そういう日々のコミュニケーションが刺激になって、日常的に技術的な視点を持つようになりました。
05. 成熟産業だからこその安定性と、神戸製鋼ならではの独自性
——鉄鋼業界の将来性についてお聞かせください。
田中様:鉄鋼業界は成熟産業で、人口減少に伴い生産量も減少していくことが予想されます。ただし、当社が作っているのは汎用品ではありません。神戸製鋼独自の商品もたくさんありますし、「神戸製鋼が無くなったら作れなくなる」という製品もあります。そういった社会に与えるインパクトを意識しながら仕事をしています。
また、視点を変えればコングロマリット経営の利点もあります。鉄鋼だけでなくさまざまな事業を手がけているので、一つの事業の業績が伸び悩んでも、他の領域でカバーできる安定性があります。
——神戸製鋼で働く魅力はどこにあるとお考えですか?
田中様:まず、若いうちから大型プロジェクトに関わるチャンスがあることです。他社と比較しても、当社の案件規模は大きいと自負しています。そして、先に述べたように一人ひとりのキャリア考え、支援する風土があることです。
長橋様:大手プラントエンジニアリング企業出身の方も多数在籍しています。そういった企業は海外出張が非常に多いのですが、こちらでは加古川製鉄所内の設備が対象なので、出張はほとんどありません。自分のキャリアと同じぐらい家族との時間も大切にしたいという方には非常に良い環境だと思います。
——最後に、転職を検討されている方へメッセージをお願いします。
田中様:重厚長大な鉄鋼業界において、神戸製鋼独自の技術と商品は健在です。素材系・機械系・電力といった多様な事業を軸に、KOBEMAG®の自社一貫生産やカーボンニュートラルの実現にむけて新しい分野への挑戦も続けています。また、組織運営の面でもボトムアップで改善する組織へとシフトし、その成果も出始めている状況です。
変革の過程にある組織だからこそ、新しいことにチャレンジしたい方には向いている職場ではないかと思います。既存の枠組みにとらわれず、自分たちで組織を良くしていこうという意識を持った方であれば、きっと活躍していただけるでしょう。
そして何より、キャリア入社でも早期から大型プロジェクトに中心メンバーとして参画できるのは貴重な機会です。長期的に成長していきたい方にはぜひ来ていただきたいですね。
長橋様:前職では個人プレーが中心でしたが、今は「チーム」で仕事をしている実感があります。困ったときに「どうした?」と声をかけてくれる人がこんなにいる会社は珍しいのではないでしょうか。技術者として成長したい、大きなプロジェクトに関わりたいという方には、本当にお薦めできる環境です。ただし、向上心を持って取り組む姿勢は必要です。常に学び続け、新しいことにチャレンジしたいという方であれば、きっと活躍していただけると思います。ぜひ一度、この雰囲気を味わいに来ていただきたいですね。