【イシダメディカル(株)】代表取締役に入社~新会社設立までのエピソードをインタビュー!!

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イシダメディカル株式会社

代表取締役 最高経営責任者 國崎嘉人様

01. 会社概要

食品業界向け包装・計量機器メーカー世界2位「はかり」のイシダが出資し、2020年4月に設立された新会社。

「世界中の患者さんと医療従事者の医療現場での課題を革新的に解決し、バイタルデータの収集と提供を通じて疾病予測につなげ、世界の人々の健康に貢献する」というミッション・ステートメントのもと医療機器の開発を進めています。その第一弾として、全身麻酔手術患者の尿量と血尿の度合いを自動計測する世界初の医療機器の開発に成功。日本と米国で販売を予定しています。今後は、他のバイタルサインを記録可能な医療機器を開発し、データのプロバイダーのような存在を目指しています。

また、現場主義を徹底しており、病院内に研究開発のラボがあることから、医療従事者の課題に対して、企画から製品開発に携わることができます。さらに、個人の想いや成長を非常に重んじる社風であり、そのために、必要な「環境」や「道具」はサポートする体制が整っております。したがって、「新しいものを開発したい」というチャレンジ精神・熱意をお持ちの方にはオススメの会社です。

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02. ご経歴について

國崎様のご経歴をお聞かせください

神奈川県藤沢市の出身で、地元の県立高校を卒業して立命館大学経済学部に入学。1999年に大学を卒業し、株式会社イシダに新卒で入社しました。就職を意識し始めた頃は山一証券や日本長期信用銀行の破綻、大手都銀の合併などが相次ぎ、大企業は潰れないという神話が崩れ始めた時期でした。そこで長く生き残るはどんな会社なのだろうと考えて、世の中になくてはならない製品を作っているメーカーだと思ったのです。

それで就職活動では堀場製作所や京セラ、キーエンスなど独自技術とトップシェアを持つメーカーに絞って応募しました。その中で一番フィットしたのがイシダでした。他社では機械的に選考が進みましたが、イシダの人事課長は私の話をよく聞いてくれて、何よりウマが合いました。熱心に誘っていただきましたし、一番早く内定をいただいたので、選考中だった他社はすべて断ってイシダへの入社を決めました。

イシダの事業内容にも魅力を感じましたね。当時からつくっていた秤は絶対必要なもので、世の中から無くなることはない。秤にはお馴染みの体重計やトラックの重量を量るものから細胞分析用の天秤などいろんな種類がありますが、イシダは食品を量る秤メーカーとして、昔も今もグローバルでトップシェアを誇っていることにも惹かれました。

入社してからのご経歴を教えてください。

文系出身だったので配属は営業部門か管理部門のどちらかでしたが、私は営業職を志望しました。入社後は志望通りに営業職として横浜営業所に配属となりました。実家に戻らないつもりで京都の会社に就職したのですが、結局実家から通うことになりましたね(笑)。両親は喜んでくれたと思います。

そこから3年ごとにいろんな部署を経験しました。2002年には東京支社に異動になりました。メーカーの営業には3種類あって、一つはユーザーを直接担当、二つ目は代理店を担当、三つ目は機種担当で一つの機種を担当し、その機種のプロッフェショナルとなって代理店や直販の営業に同行して提案を行います。

機種担当営業を究めると開発やマーケティングの担当となります。

私は横浜にいた時はユーザー担当の営業で、東京支社に異動した後、機種担当の営業となりました。

どんな機種を担当されたのですか。

担当したのは電子棚札でした。スーパーマーケットの商品棚のプライスカードをデジタル表示する製品で、1998年にイシダが国内で初めて発売。電子棚札の専門部署が東京支社にあったので、そこへの異動を志願して東日本の担当になりました。関東エリアから北は北海道までスーパーマーケット担当の営業と同行して提案を行う仕事を3年経験しました。

その後、東京支社の中に商品企画の部署を作るということで、私はその部署に異動となりました。そこでスーパーマーケットの業務改善を進めるシステムの商品企画を担当することになりました。何社かのお客様のところに伺って、商品企画を行った1年後に当時中部地区で約200店舗のスーパーを展開していた大手チェーンの本部の情報システム部に2年間常駐して、商品開発を行いました。

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03. 製品について

そこでどのような製品を作れられましたか?

POPやチラシの作成を省力化する販促システムと呼ばれるものを企画開発しました。当時そのチェーン店では月間特売の店頭のPOPを1カ月に40万枚印刷していましたが、それを地域本部や店舗のPOP担当者が同じ業務を手作業で行っていました。その省力化を図るため、本部の各部門バイヤーがシステムに商品情報を入力すればデータが自動的に印刷会社に送られ各店に配送する仕組みを作りました。店頭POPも各店舗でPOPのデザインを選択するだけで自動的にPOPが出来上がり、店舗で出力できるようにしたのです。また、同時にチラシの原稿を作成し、チラシ制作会社に連携する機能も実装しました。こうした販促システムを2年かけて私とSEの2人で作ったのです。

これまで、当たり前だと思ってやっている業務を分析して、人がやらなくてもよい業務をシステムに置き換え、業務を軽くして、人はよりクリエイティブな仕事にシフトさせる。これがキャリア通じて私が長く取り組んできた仕事です。

電子棚札はこれまで手作業で付け替えてきたプライスカードをデジタルに切り替えて、その業務を省力化しました。POPの付け替えは実は大変な作業なのです。

新人に店内のPOPを付け替えてと頼むとベテランの10倍の作業時間がかかります。商品の場所が分からないからです。スーパーマーケットの仕事は高いスキルが要求される仕事なんですよ。どこに何があって、在庫がどれだけあるのか、いつまでにどの商品をどれだけ発注すればいいのか、ものすごく頭を働かせないとできないからです。

そんな仕事の中でPOPやプライスカードの差し替えを新人でもできるようにしたのが電子棚札です。価格は無線通信で自動的に切り替わる。特売商品の電子棚札はピカピカ光るので、新人はそこに特売のPOPを付けていけばいいだけです。何千万円もかかるシステムですが、それ以上の業務効果があることをコンサルティングして全国各地のスーパーマーケットチェーンに導入していただきました。これらの仕事を通じて、業務効果を説明して考え方を分かってもらえる「提案の仕方」を身に付けることができたと思います。

その後、どのような業務をされましたか

2009年に京都本社の商品企画部に異動になり、関西に戻ってきました。いくつかの機種を担当しましたね。これまではお客様に近いところで商品の企画を行っていましたが、本社ではより専門的で開発部門に近いところで商品の企画を行うようになりました。この前のスーパーマーケットの販促システム開発で、私が要件を定義したWebアプリの企画を隣でSEがコーディングする業務を経験したことが役立ちました。本社での業務は70%が商品企画で30%は新事業開発でした。

これまでのイシダの顧客は食品メーカーやスーパーマーケットといった食品業界が中心でしたが、イシダの技術を食品以外の新しい分野に展開させる仕事も任されました。いろんな分野を探索していると、イシダの電子棚札が病院で使えるのではないかという可能性が出てきました。これが医療分野との出会いであり、後に新事業として花開くことになったのです。

具体的には電子棚札をどんなふうに展開されたのですか。

薬科機器の大手から問い合わせがありました。彼らが製造販売する注射薬自動払出装置に電子棚札を組み込みたいとのこと。

病院の患者さんは外来患者と入院患者の2種類に分けられます。外来患者は医師から処方箋をもらって、調剤薬局などで錠剤や散剤などの薬をもらいます。一方、入院患者には注射薬を点滴で投薬します。薬剤はアンプルやバイアルと呼ばれる薬瓶に入っていますが、これらの薬剤は何千もの種類があります。その中から薬剤部が医師の処方箋に合わせて患者さんそれぞれに必要な薬剤のセットを作っていくのです。

300床を超えるような大病院では、膨大な作業量になるためにこの作業を省力化する注射薬自動払出装置が導入されています。医師が電子カルテに処方オーダーを入力すると、そのデータが装置に送られて、必要な薬剤を自動的にトレーにピッキングして払い出されます。私たちの電子棚札はそのトレーに付けられ、名前、病棟、緊急・定時、冷所・常温保管などの情報が無線で書き込まれます。

実はセットされて病棟に送られた薬剤のうち70%は使われますが、30%は使われません。なぜなら、患者さんの容態は変化するからです。処方箋を作った時の容態よりも改善されれば使わなくていい薬剤の投与を中止したり、あるいは悪化した場合は新たな処方箋が必要になったりするのです。使われなくなったトレーは各病棟に積まれ、まとめて薬剤部に返品されますが、これまではセットした時に紙の書類が差し込まれていましたので、一見しただけでは返品する薬剤かどうかの区別がつかず、間違って投薬してしまうリスクがありました。

しかし、私たちの電子棚札を使えば、返品する場合にはデータを送れば即座に「返品」と表示されるので誤投与される可能性が極めて低くなります。

薬剤師の作業を省力化し、安全性を高めるという点が評価され、元々はスーパーマーケットのために開発した電子棚札は病院にも導入されるようになったのです。

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04. 新会社設立について

イシダメディカルが設立されたきっかけについてお聞かせください。

2015年に商品企画部に設置された新事業開発を担当するのマーケティング室の室長に任命されました。任命されてすぐに社長に呼ばれました。社長は「自分の代のうちに2つのことをやりたい」と言われました。

一つ目は今の食品機械事業の海外売上を50%にすること。二つ目がまったく新しい事業の柱を作ること。

日本の人口がピークアウトし、縮小に向かう環境に対応するために社長は2つのテーマを掲げたのです。人口が減れば食品も減り、秤も減る。当時のイシダは国内の売上比率が70%でマーケットは食品分野の製造、物流、小売だけでしたので、将来に向けてさらなる成長を遂げるには海外市場の拡大か事業の多角化が必要でした。「君は多角化を担当してほしい。新事業は医療・医薬分野でやりたい、それを任せる」との指示を受けたのです。

これがイシダで医療事業を始めるきっかけですね。

そこから新事業はどんな風にスタートしましたか。

社長から与えられたお題である「5年後に年間100億円の売り上げを達成できるビジネスプラン」を策定するために半年間の準備期間を与えられました。社内の様々な部門から5人を選んで検討プロジェクトチームを結成し、銀行やシンクタンクの戦略立案支援を得て、毎週会合したり様々な企業にインタビューに行ったりして計画を練り上げました。

そして、半年後の役員会で、自力成長で売り上げ20億円、残りの80億円はM&Aで行うというビジネスプランを報告しました。

それを受けて、2015年10月に実行部隊の専門部署、医療医薬事業企画室を5名のメンバーと共に立ち上げました。イシダの営業本部・開発生産本部・管理本部のいずれにも属さない社長直轄のプロジェクトチームとなりました。

製薬チームと医療チームの2チームをつくりました。製薬チームでは従来食品メーカー向けに販売していたウェイトチェッカーや錠剤計数機を医薬品製造の法令に適合させたり、新たに粉を量る秤であるロスインウェイトフィーダを開発して、製薬工場への提案を開始しました。医療チームでは注射薬自動払出装置のデジタルプレートやベッドサイドネームプレート、外来患者案内システムを開発して、病院への提案を行いました。

医薬チームの製品はイシダの食品機械を製薬向けに転用して開発しましたが、医療チームのベッドサイドネームプレートや外来患者案内システムなどは、イシダの技術を用いてゼロから開発しました。

その結果、2019年度の医療・医薬事業の売り上げ実績は18.5億に達しました。

イシダメディカルを設立し独立されるまでの経緯についてお聞かせください。

新事業開発に本格的に取り組み始めた2015年当時から社長の思いの中に新会社はあったと思います。私も5・6年で事業を大きくして独立するんだという思いを持っていました。

独立のきっかけになったのは、2020年1月23日の役員会でした。その場で私はそれまで開発を進めてきた医療機器「排尿計測記録システム」の追加投資について説明を行っていました。その企画案件に対し、役員の様々な質疑に回答した後、社長が「必要なだけお金を出すからベンチャー一号として独立して自律的に事業を進めてみないか」と言われたのです。

さらに「次の役員会で会社設立の事業計画を出してほしい」と指示を出されました。そこから2か月間は、会社設立のプラン作成に集中しましたね。結局、3月の役員会で承認されて、4月21日にイシダメディカル株式会社を設立しました。

この会社は医療機器事業に特化し、これまでのイシダで進めてきた医療・医薬事業はすべてイシダに残し、ゼロベースでのスタートを切りました。

事業資金にあたっては、君が白旗を上げるまで支援すると社長から言われたので、その本気度と信頼感に応え、私自身の決意を示すため、「イシダを退職して、転籍させてほしい」とお願いをしました。イシダに籍を置いたままだと出向扱いになります。通例では出向者は何年かするとイシダに戻ります。

その時のメンバーは医療機器をやると決めてから採用した医療業界のプロフェッショナルなメンバーであり、私は彼らの人生を背負うことになるので最後まで責任を持ちたいと考えたのです。また、もう一人の開発を担当している取締役もイシダを退職し、私と運命を共にしてくれました。

※國崎嘉人様が「イシダメディカルの今後の展開・社風・求める人物像」を語った記事はこちら

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國崎様と弊社コンサルタント横山(左)

05. 取材を終えて

今回、國崎様のお話を聞かせて頂き、國崎様の「イシダメディカル社」を通じて「医療従事者の方々を楽にしたい」という強い情熱を感じました。設立に至るまでの、ドラマのようなストーリー、大勢の人の協力・想いがあっての現在のイシダメディカル社があると感じました。

また、実際に開発者の方ともお話いたしましたが、イキイキと開発に打ち込まれておられ、非常にやりがいのある開発環境・内容であることが伝わってきました。アメリカを中心に事業も拡大していくといった魅力的なフェーズの企業様ですので、「チャレンジ精神」が旺盛な方をご紹介させていただきたいと感じました。

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この記事を書いた人

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横山 彰

株式会社タイズ

  • 関西メーカーへの高い合格率に自信あり。メーカーへの深い知見、太いパイプを活かした転職のご支援をさせていただきます
  • 「勤務地・給与」といった条件だけではなく「働きごこち・忙しさ・社風」など転職の軸を丁寧にヒアリングさせていただきます。
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