品質保証部のあるべき姿とは?品質改善に役立つ考え方

品質保証の仕事内容は、出荷する製品における品質の担保とトラブルの再発防止です。 企業にとっても重要なポジションですが、現実的には業務内容やクレーム対応で多忙となり、働き方を見失う方もいるようです。 そこで、今回の記事では、品質保証部のあるべき姿について改めて見つめ直そうと思います。

この記事は約7分で読み終わります。

タイズは無料の合格相談を実施しております。大手メーカーとの太いパイプと、技術職への深い知見には自信があります。メーカーへの転職に興味があれば、お気軽にご相談(無料)ください。

無料相談する

品質保証部の現実

品質保証の役割を十分に理解していたとしても、なかなか理想の働き方ができないジレンマを抱えることがあります。それは、品質保証の仕事自体に求められるレベルが高いことが原因です。

まずは、そんな品質保証部の現実を確認していきましょう。

製品の不具合が改善しない

品質保証部は安定して高品質な製品を提供するため、常にさまざまなチェックを行いながら不具合が出ないように取り組み、トラブルに対しては迅速に対応しなければなりません。

しかし、実際にはすぐに改善できないようなトラブルやクレームが発生します。不具合に対する解決方法が見つからず、頭を抱えている担当者も少なくありません。

製造コストの削減が求められるうえ、短い納期での対応も多く、対策を考えようとしても「この工程ではコストがオーバーする」「納期までの時間がなく安全が担保できない」といった課題も発生します。

品質保証部の本来の役割としては「不良率に関わらず、製品サービスそのものが本当の意味での顧客ニーズ・要望に適した製品になっているか」を調べる必要があります。しかし、実際には、なかなかそこまで手が回らないのが現状です。

解決が困難な不具合や要望への対応が求められ続けるなかで、品質や市場価値の高さなど本来追求すべき保証活動に費やす時間が限られる傾向にあります。

クレーム対応に追われがち

クレーム対応は品質保証部を代表する業務のひとつですが、次々に入るクレームの対応で1日が終わり、日常業務ができないということも少なくありません。

検査や監査の準備など重要性の高い業務を抱えていても、クレーム対応に追われていると品質に関わる作業が後回しになることもあります。

ひとつひとつのクレームに対して真摯に対応したからといって、必ずしもその件数が減るとは限りません。

実際には丁寧な対応を行いながら原因を追求することが重要で、クレームの発生状況を集計・分析し、品質保証体系のどこに問題があるかを特定した上で再発防止策を思案・実施することが必要です。

しかしその時間を十分に確保できない場合もあり、結果的に悪循環を引き起こしているケースもあります。

製造部との軋轢がある

品質保証部は、製品の欠陥などの不具合が発生したときに製造部へ指摘し改善してもらう必要があります。

発生したトラブルはほかの部門と協力して解決する必要があるものの、製造部としては作業が増えて残業になる可能性もあるため嫌厭されがちです。

品質保証としての役割は企業にとっても重要で、品質を高めて維持することはブランドの信用にも関わります。

しかし、現場からは単に仕事を増やす存在と認識される場合もあり、十分なコミュニケーションと信頼関係の構築ができていないと、他部門への指示や指摘は大きなストレスを感じる部分です。

ほかの部門と軋轢が生じていると問題解決もスムーズに行えず、結果的には業務時間やそれぞれの負担も増えやすくなります。

製品だけではなく、現場スタッフとも向き合いながら品質保証の仕事を行わなければなりません。

目標レベルが高い

同じ企業の中でも、部門によってそれぞれ評価を受ける基準に違いがあります。

例えば製造部では製造コストを下げること、設計開発部では新製品の開発などが分かりやすく、比較的プラスな評価を受けやすいです。

これらのように定量的な評価が行われている一方、品質保証部では以下のような目標設定がされ、定性的に評価される傾向があります。

・出荷後の不具合件数0
・出荷後の事故費用・回収不能コスト0

この基準では、不良品を出さないことが最低限で当たり前になりがちです。

加点式ではなく減点方式で評価される仕事といえ、目標を達成したとしても賞賛されにくい立場にあります。

トラブルや不良品をなくすという目標は非常にレベルが高いにも関わらず、まっとうな評価が受けられずにやりがいや達成感が得られないという人も少なくありません。

品質保証部は製造工程の中でも裏方の役割で、自身の力で課題解決が達成できたというような分かりやすい経験がなければ、モチベーションを維持するのも難しいでしょう。

また、トラブルやクレームがほとんど発生しない平和な会社だと評価が得られにくい傾向にあります。

品質保証部のあるべき姿

品質保証の責任範囲は、単純に製品が基準を満たしているかだけではなく、顧客が満足できるかどうかも含まれています。

これは会社の信用性にも関わる重要な責任で、顧客を満足させるためには品質保証部としてどうあるべきかを考えなければなりません。

品質保証部の考え方

国際規格の「ISO9001」は品質に関連することで有名ですが、2000年には大幅な改訂が行われ、製品の品質保証だけではなく顧客満足が目的に追加されました。

当然、品質保証部としても顧客の満足を第一に考えることが大事で、企業のことを考慮しつつ顧客目線でいることが最重要とされます。

満足が得られるためには、品質を改善できるノウハウや知識が必要になり、あらゆる顧客ニーズを適切に把握しながら価値を提供することが大切です。

品質保証活動で重要なこと

品質保証は「悪いものを世に出さない」ではなく、そもそも「製造段階で悪いものを作らない」ことを目指します。

品質保証活動では不具合やトラブルに対して先手を打ち、上流の設計や開発段階を重視することによって質を高めていく考え方が重要です。デザインレビューや試作、初期流動管理などを重点的に行い、さまざまなリスクを軽減しつつ顧客の満足を得られる品質を実現します。

量産開始後は自主検査や工程能力管理などをしっかり行うことで、トラブルを最小限に抑えて安定した品質を維持することを目指します。

強い品質保証部になるために今からすべきこと

品質保証部が力を発揮できなければ、製品の品質や企業の損失、顧客の安全性などにも悪影響を与えます。では、どうすれば「あるべき姿」を実現できるのでしょうか。

ここからは、企業において理想的な品質保証部となるために、取り組むべきことを紹介します。

製造工程を理解する

開発の流れを把握していないと、製造工程で起こるトラブルの原因追求や対策を考えられません。

また現場を理解していない状態で他部門に指示や指摘を行っても、信頼が得られず説得力に欠けるためスムーズなやり取りが難しくなります。

知識やスキルも大切ですが、まずは自社の全体の流れをしっかりと身につけていくことが大事です。

分析手法を習得する

品質保証はさまざまな分析手法を駆使して、状況を見極めながら適切な判断を行う必要があります。具体的には、以下のような知識・手法を習得し、現場で活かせるようにしましょう。

・PDCAサイクル
・QC7つ道具
・5ゲン主義
・なぜなぜ分析

また製造に関わる材料の知識や、有害成分の制限である「RoHS指令」に関する知識も必要になるため身につけておきましょう。

品質保証で必要とされる知識については、こちらの記事が参考になります。扱う知識がほとんど同じ「品質管理」で扱う知識体系について解説しています。

QC検定の勉強方法|品質管理に活かせる知識を習得するには

社内での関係構築

不良を出さないためには、組織横断的に仕組みをつくる必要があります。

製造部や開発、品質保証部が単体で行動しても高品質な製品はできません。各部門が目的に向かって協力することが大切で、会社全体でスキームを構築していくことが重要になります。

そのため、品質保証部には社内での折衝能力や各部門との関係構築が求められ、適切な指摘ができる高いコミュニケーション能力が必要です。

クレーム対応の履歴を確認する

発生したクレームに対応するだけではなく、社内のこれまでのクレームや、他社でのトラブルに関するデータを確認することが重要です。

どのような内容に対して対応したかなどをチェックしておくことで、同じような不具合を出さないための対策法が考えられます。

また、同じようなクレームが続く場合は会社の信用問題にもなるため必ずチェックしなければなりません。

まとめ

品質保証部は、顧客満足を第一に考えながら製造段階でのミスが起こらないよう品質を追求し続けるのがあるべき姿だといえます。

しかし、解決が困難な不具合や多くのクレーム対応によって時間に追われ、思い描いた働き方になっていない方もいるでしょう。

できる限り状況を改善するためには、自社の製造工程を把握し直してしっかりと分析手法を身につけ、各部門との適切な関係構築に努めることが大切です。

無料相談する

SNSでシェア

この記事を書いた人

プロフィール写真

安達 篤史

株式会社タイズ

これまで17年間、転職エージェントのコンサルタントとして従事し、これまで1,000名以上の転職支援を実施。
技術系を中心に幅広い知識・経験があり、納得感のある転職を実現している。

安達篤史のプロフィールはこちら

送信中です