企業インタビュー
[ 住友電装株式会社 ]
“新車のその後10年”を担う派生開発拠点――住友電装 長崎ソフトセンターの役割と魅力

左から
株式会社タイズ 担当コンサルタント 竹内 一心
住友電装株式会社 電子事業本部 システム設計統轄部 第1システム設計部 部長 駒谷 政男様
住友電装株式会社 電子事業本部 システム設計統轄部 長崎ソフトセンター センター長兼グループ長 黒﨑 郁之助様
住友電装株式会社 電子事業本部 システム設計統轄部 長崎ソフトセンター 稲垣 亮祐様
住友電装株式会社は、ワイヤーハーネス事業をコアに、自動車用電線やワイヤーハーネス用部品、エレクトロニクス製品の製造・販売を行っています。
住友電装は住友電工グループの一員として、「住友ハーネス事業(自動車ワイヤーハーネス事業)」の中核を担っています。
今回は、電子事業本部 システム設計統轄部の長崎ソフトセンターで働くお三方に、長崎拠点で車載ソフトウェアに関わる魅力や派生開発の特徴、職場環境について、お話を伺いました。
01. 長崎の自動車ソフト開発拠点で活躍するお三方のキャリアパス
――まずは、ご経歴をお聞かせください。
黒﨑様:新卒で住友電気工業株式会社に入りました。理由はシンプルで、「大阪で就職できそうだったから」です。
大学では制御工学を学び、交通管制システムに興味を持って応募しました。最初は大阪製作所で、警察の交通管制センター側のソフトウェア開発を担当していました。
その後、四日市に異動して株式会社オートネットワーク技術研究所で初めて車載の仕事に就きました。全く別の世界で最初は戸惑いましたが、比較的自由にやらせてくれる文化がありました。車を1台買ってきて分解するという機会があり、構造から徹底的に学べたのは大きかったですね。今の仕事にもかなり活かされています。
そして2011年に住友電装へ移り、ゲートウェイ開発を担当。2014年に長崎拠点へ異動し、3年弱勤務したあと名古屋に戻りましたが、「やっぱり長崎で働きたい」と希望して、2020年に再び長崎へ。
仕事のしやすさや、人間関係を含めた雰囲気が自分に合っていたのが大きいです。イベントや飲み会などで自然と仲良くなれる環境があって、「この空気の中で仕事がしたい」と思いました。
今はグループ長として、各プロジェクトのマネジメントやオフショア開発拡大の企画・調整を担当しています。
加えて、大学や自治体との窓口、名古屋・三重からの来訪者対応なども、私の役割になっています。
稲垣様:愛知県出身で、大学ではソフト寄りの学部でした。父がトラック運転手だったこともあり、「就職するなら自動車系かな」という想いがありました。
そこで、ソフトの知識を活かしつつ自動車に関われる会社を中心に受けていました。いくつか内定をいただきましたが、最終的な決め手は、私が入社した2017年が住友電装の“創業100年目”だったことです。
製造業で100年続く会社はそう多くないので、「せっかくなら100年目のタイミングで入社したい」と覚悟が固まりました。
配属以来、一貫してボディーECUを担当していて、長崎に来てからも基本的には同じ領域を見ています。
駒谷様:前職では車載Tier1サプライヤで車載ECU向けシステム・ソフト開発に長年従事していました。2020年に住友電気工業に入社し、現在は住友電装の名古屋オフィスへ出向してシステム設計部の部長を務めています。名古屋の自部署から長崎ソフトセンターに複数プロジェクトで開発依頼をしている関係から、長崎ソフトセンターの開発方針作成に関わっています。
02. 2013年4月に誕生した長崎ソフトセンターとは

――長崎ソフトセンターの組織体制や、立ち上げの背景をお聞かせください。
黒﨑様:長崎ソフトセンターはシステム設計統轄部の直轄組織で、2013年4月に開設しました。最初は20名ほどの小さなオフィスでしたが、人員増に合わせて移転し、今は50名強の規模です。最近はベトナムでのオフショア開発も併用し始めています。
開設の背景には、名古屋でのエンジニア採用の難しさによる人材不足と開発費の高騰がありました。そのため、地方拠点を作り、コストを抑えながら開発リソースを確保しようと考えました。
候補地を検討する中で、長崎は大学が多く人材はいる一方で地元就職が少なく流出している状況でした。加えて、長崎市の「新しい産業を誘致したい」という強い意向と優遇措置もあり、最終的に長崎を選びました。
――自治体や地元の支援機関との連携についても教えてください。
黒﨑様:長崎県、長崎市、長崎県産業振興財団、それから「NISA(長崎県情報産業協会)」と連携しています。
採用面では、長崎大学や長崎県立大学からの入社が多いですね。長崎大の情報系、長崎県立大の情報セキュリティ学科出身者など、地元で育った技術者が長崎で働ける場として機能していると思います。
――名古屋と長崎の人材交流について教えてください。
黒﨑様:拠点立ち上げ時は名古屋から長崎に来てもらったり、逆に長崎側が名古屋へ出張したりと、行き来しながらできることを増やしてきました。
車全体を見る機会を増やすために、某OEMメーカーの九州生産拠点での実車評価や、大阪・名古屋での実車評価にも長崎のメンバーが参加しています。
――今後の長崎ソフトセンターの組織としての展望についてお聞かせください。
黒﨑様:人数は今後も増やしていきたいと考えています。単に作業者を増やすだけでなく、管理やマネジメントを担うプロパーも必要です。
名古屋の案件をもっと長崎で受けたいものの、人手不足で対応しきれていない部分もあるため、組織自体をさらに拡大していきたいですね。
03. 新車の“その後10年”を任される、長崎拠点の派生開発

――長崎ソフトセンターで担っている開発業務についてお聞かせください。
黒﨑様:長崎で担っているのは派生開発で、大きく分けると「ボディーECU」「セントラルゲートウェイ」「PDB」の3つです。
ボディーECUは、リモコンやスマートキーでのドアのロック/アンロック、ワイパー、ヘッドライトやテールランプ、室内灯のオン・オフなどをまとめて制御するECUです。ユーザーが車に乗り込んでエンジンをかけるまでの“触ったら何かが動く”部分の多くを担っていて、長崎の開発業務の約7割を占めています。
セントラルゲートウェイは車両内の通信を中継・制御するECUで、ボディーECUに次ぐ割合を占めています。
PDBは「パワーディストリビューションボックス」の略で、半導体リレーを制御し、アクセサリーやランプ類など車両各所に電源を配る“電源ターミナル”のようなユニットです。
――派生開発の流れや特徴を教えてください。
駒谷様:まずは、名古屋で新型車向けの大規模な開発を行います。その後は、約10年間にわたって機能追加や設定値変更などの改修が続きます。これが派生開発で、そのフェーズを名古屋から引き継ぎ、長崎で担当しています。
特徴は、短納期でスピード感が求められることと、複数車種を並行して開発することです。ゲートウェイであれば、一部だけ変える「定数変更」の案件が多く、仕様書を受け取ってからリリースまで短期間で開発を行っています。
――担当分けはどうされていますか?
稲垣様:ボディーECUの窓口はOEMごとですね。ただ、ソフトウェア設計の部隊はOEMで分けず、横断で担当しています。
――複数製品の掛け持ちか専任での担当、どちらのイメージでしょうか?
黒﨑様:どちらもいますね。派生開発の小さな案件をいくつも並行で回す人もいれば、稲垣がやっているボディーECUのように、それだけで大きなプロジェクトになるケースもあります。
――担当する製品のローテーションはありますか?
黒﨑様:人とタイミング次第ですね。状況を見て別製品をお願いすることもあります。新しいプロジェクトが立ち上がったときに適性を見て割り振っていくイメージです。
――OEMメーカーとのやり取りは日常的に発生するのでしょうか?
稲垣様:名古屋ほどではないかもしれませんが、私はほぼ毎日会議をしています。仕様や進捗の確認に加えて、ボディーECU特有の「複雑さ」の相談が多いですね。
ボディーECUは構成が入り組んでいて、OEMのご担当者でも全体像をつかみきれないことがあります。仕様書は先方が作られますが、「これで本当に動くか」「こういう機能を実現したい」といったご相談をいただき、こちらで修正してお返しすることもよくあります。
――どの製品もV字モデルでの開発なのでしょうか?
稲垣様:ECUごとに中身は違いますが、V字モデル自体はほぼ共通です。
新卒の頃はコーディングから入り、徐々に設計・要件定義など上流工程へステップアップしていきます。長崎ソフトウェアセンターに来られるキャリアの方は、最初から上流寄りに入ってもらうことが多いですね。
――ソフトウェア開発でやりがいを感じる瞬間を教えてください。
黒﨑様:ゲートウェイでいうと、某OEMの車にはほとんど住友電装のものが載っています。「自分が関わった製品が、ほぼ全部の某OEM車に入っている」と思えるのは誇らしいです。
稲垣様:自分の担当した機能が載っている車を見かけたときに、「この車、パパが作ったんだよ」と家族に言えるのが嬉しいですね。
――ECUがどんどん集約されていく流れの中で、会社全体としての技術的な強みや将来性について教えてください。
駒谷様:当社はもともと「電線」がルーツで、車のインフラ系を支える会社です。通信や電源管理は特に強みがあり、その周辺のECUをTier1として、ソフトとハード一体で提供できるのが特徴ですね。
いわば「車の中の縁の下の力持ち」で、自動運転やメーターパネルのような派手さはありませんが、ヘッドライトの自動点灯やキーロックの制御など、見えないところで重要な機能を支えています。
電線も電源管理も車内通信も、車がある限りなくならない領域ですし、「なくてはならないインフラを作っている」という意味で、将来性は高いと考えています。

住友電装が派生開発を手がけるECU
ボディーECU/ジャンクションボックス
04. アットホームで“風通しの良さ”が魅力の職場環境

――名古屋拠点と長崎拠点で、雰囲気に違いはありますか?
黒﨑様:ありますね。名古屋は一言でいうと「テンポが速くて、ドライで合理的」。
長崎はアットホームで、プライベートの交流も多く、イベントの参加率も毎回高いです。
ただ、仕事のプロセスや品質基準は名古屋と同じですし、どちらにもそれぞれの良さがあります。私は両方とも気に入っていますね。
稲垣様:長崎拠点はとにかく風通しが良いです。普段は各自の仕事に集中していますが、いざピンチのときには、みんなでフォローし合う雰囲気があります。
――コミュニケーションについてはいかがですか?
稲垣様:話しかけやすい雰囲気です。拠点間や部署間のコミュニケーションもスムーズですね。
――新卒で入社されて、「こういうところがいいな」と感じたポイントを教えてください。
稲垣様:一番は、やりたいと言えば若手にもチャンスをくれるところですね。大企業ではありますが、自分から手を挙げれば任せてもらえる雰囲気があります。
私は3年目のとき、「お客様(某OEM)の現場も見てみたい」と雑談レベルで話していたら行かせてもらえることになり、3年間出向させてもらいました。
「やりたい」と言ったことに対してチャンスを用意してくれるのは、この会社の大きな魅力だと思います。
逆に、「これはあまりやりたくない」という希望も割と通ります。「やりたい」「気が進まない」という個人の意思を、ある程度尊重してもらえている感覚があります。
――残業時間や、フレックス・在宅勤務について教えてください。
黒﨑様:長崎拠点の残業は月平均で20時間前後です。
在宅勤務もフレックスも、事前に連絡すれば問題なく使えるので、みんなかなり柔軟に働いています。
稲垣様:私はフレックスを使って朝に子どもと過ごす時間をしっかり取るようにしていますね。
駒谷様:早めに帰ることもできますし、会社全体として「家庭の事情にも配慮する」という文化がありますね。
――名古屋・大阪から来られて、生活面はいかがですか?
黒﨑様:とても快適です。車があれば基本困りませんし、駅前なら車なしでも生活できます。
スーパーの刺身もおいしいですし、寿司屋もリーズナブルでコスパがいいです。
――プライベートはどのように過ごされていますか?
黒﨑様:旅行や温泉、それから釣りですね。長崎に来てから始めたんですが、社内にも釣り仲間が多くて、教えてもらいながら楽しんでいます。
稲垣様:長崎はイベントの「混み具合」がちょうどいいんです。花火大会も少し遅れて行っても普通に見られるくらいです。
高速道路が大渋滞しにくいのも助かります。東海圏の渋滞を知っている身としては、本当にストレスが少ないですね。
――長崎に来る前と、来てからの印象の変化を教えてください。
黒﨑様:最初は正直ネガティブでした。大阪から遠くなりますし、友人やゴルフ仲間もみんな大阪なので「不便だな」と。
でも来てみたら一気に評価がひっくり返って、「もう大阪に帰らなくてもいいかな」と思うくらいです。会社の人と月1でゴルフにも行けて、楽しんでいます。
稲垣様:私は自分で希望して来ているので、最初からポジティブでした。 長崎から名古屋に戻った人がみんな「長崎めっちゃいいよ」と言っていて、それなら自分も経験してみたいと思っていました。
「会社の辞令で九州に行けるなんて、旅行もしやすいしラッキーだな」と思っていましたね。
05. 背中を押してくれる風土――主体的な学びを支える教育制度

――勉強会や展示会への参加について、会社からの働きかけはありますか?
稲垣様:あります。案内が来て、行きたいと手を挙げれば基本的に通ります。積極的に学びたい人には、ちゃんと背中を押してくれる雰囲気ですね。
――入社後の教育体制について教えてください。
駒谷様:会社として、いくつかの研修プログラムが用意されています。
まず1つ目はキャリア採用者向け研修です。入社時の会社の仕組みの説明を含めた研修に加え、半年〜1年後にフォローアップ研修があります。
2つ目に、ソフトウェア部門の方には開発手順やプロセスをまとめた資料をお渡しします。一般的な車載ソフト開発で求められる標準がまとまっているので、それを読めば土台を押さえられるようになっています。
3つ目は社員向けのeラーニングで、通信やソフトウェア技術などの基礎を学べる講座が多数あります。
4つ目はオンライン教育サービス「Udemy」の活用です。法人アカウントを契約しているので、希望すればアカウントが付与され、業務時間中に受講することも可能です。やる気のある方には、かなり学びやすい環境だと思います。
――OJTでの研修になるのでしょうか?
黒﨑様:そうですね、基本はOJTです。プロパー社員の下に付いて仕事を覚えていく形で、期間としては1年弱、しっかりと伴走します。
――評価基準や評価制度についてお聞かせください。
駒谷様:評価はMBO型で、「チャレンジシート」という名称で運用しています。
期初に「何をいつまでに、どのレベルまでやるか」を本人が書き、上司とすり合わせます。期中に進捗面談、期末に自己評価と上司評価を行い、その結果をもとに人事評価が決まります。
シンプルに言うと、「チャレンジシートに書いた目標をどこまで達成したか」が主な評価軸ですね。
06. 長崎で暮らしながら車載ソフトの最前線へ──仕事も生活も大事にできる環境

――一緒に働きたい方や、長崎ソフトセンターに合う方の人物像を教えてください。
黒﨑様:一言でいうと「真面目で明るい人」です。プロジェクトを前に進めるためには、コツコツ取り組んで、周りとコミュニケーションを取れる人が力を発揮しやすいですね。
長崎では派遣社員の方をマネジメントする立場になる可能性も高いので、なおさら「人と話すのが苦ではない」方が向いていると思います。
駒谷様:住友電装には「SWS WAY」という行動原則があり、「プロフェッショナル」「チームワーク」「チャレンジ」の3つを大事にしています。面接でも、共感してもらえるかはよく見ていますね。
特にチームワークは重視していて、1人で黙々と完結させるのではなく「チームで成果を出す」という考え方がベースです。同時にダイバーシティも推進しており、家庭の事情や働き方の違いをお互いに認め合う風土があります。
逆に、「とにかく高速でトライ&エラーしたい」という人だと、少し物足りなく感じるかもしれません。ドライバーの命にも関わる製品の開発をしているため、品質第一です。スピード感を持ちつつも、品質へのこだわりをしっかりと持った方が合うと思います。
――活躍している方の共通点があれば教えてください。
黒﨑様:自分から勉強して動ける人ですね。前向きに仕事に取り組んでいる人は、やっぱり伸びています。
稲垣様:自分の担当範囲だけに閉じず、領域外のところにも興味を持って踏み込める人です。少しずつ守備範囲を広げていくうちに全体について詳しくなって、その領域のキーマンになっていくイメージですね。
――求めるスキルはありますか?
駒谷様:「C言語でソフト開発をしていたこと」です。一般的なECUのコードは、基本はCかモデルベースなので、そのどちらかの経験が欲しいですね。
車載以外でも、組み込みソフトウェアの経験がある方は歓迎です。半導体検査装置や工場設備向けの制御ソフトなど、検査ソフトの開発をされている方も十分対象になり得ます。
――文系の方でも基礎知識がある方であれば問題ありませんか?
黒﨑様:はい、全く問題ありません。長崎ソフトセンターでも、文系出身で活躍している派遣社員の方がいます。
――最後に、応募を検討されている方へメッセージをお願いいたします。
黒﨑様:ワークライフバランスが本当に良いです。仕事にはちゃんと責任を持ちつつ、終業後や休日の時間もきちんと確保できます。
家族との時間を大事にしたい方や趣味も楽しみたい方には相性のいい拠点だと思います。長崎ならではの暮らしやすさもありますし、楽しい雰囲気で仕事ができるので、ぜひ一緒に働きましょう。
駒谷様:長崎で車載ソフトに携われる環境は、本当に貴重だと思います。
長崎での生活を楽しみながら車載ソフトウェア開発のど真ん中に関われるので、少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひチャレンジしてみてほしいです。