企業インタビュー
[ 株式会社豊田自動織機 ]
世界基準の“乗り心地”を量産で実現する――豊田自動織機 コンプレッサ生産技術部の挑戦

株式会社豊田自動織機 コンプレッサ事業部 生産技術部 電動組立グループ 高嶋大樹様
株式会社豊田自動織機は、1926年創立の「トヨタグループの源流」となる企業です。繊維機械からスタートし、現在ではフォークリフトや自動車部品、繊維機械など幅広い分野で事業を展開。特にフォークリフト、カーエアコン用コンプレッサ、エアジェット織機は世界トップシェアを誇ります。売上高は約4兆円、従業員数は7万人以上のグローバル企業として、世界各国の産業と暮らしを支えています。「発明と挑戦」のDNAを受け継ぎながら、環境配慮や自動化といった新しい時代のニーズに応える技術開発を続けています。
コンプレッサ事業部は、カーエアコン用コンプレッサを主力製品として、設計から製造までを一貫体制で取り組んでいます。
その中で生産技術部電動組立グループは、HV/PHVやEV向けの電動コンプレッサ組立ラインの新規立ち上げや既存ラインへの新機種取り込みを行っています。
今回は生産技術部電動組立グループの高嶋様に、生産技術者として働くやりがいや電動組立グループの風土について、お話を伺いました。
01. 「経験が活きる」と直感——工場見学が入社の決め手
――まずはご経歴をお伺いします。
2013年に新卒で入社し、現在12年目です。入社以来ずっと生産技術に従事し、主に組立工程を担当してきました。コンプレッサの組立ライン立ち上げや既存ラインの機種取り込み・改善が中心です。若い頃から北米など海外での立ち上げも経験し、今はEV向けコンプレッサの新ライン立ち上げを担当しています。
――豊田自動織機を志望したきっかけや入社の決め手は何ですか?
大学時代、NHK大学ロボットコンテストに参加し、ものづくりの面白さに強く惹かれました。その活動を通じて豊田自動織機とつながりが生まれ、工場見学に伺ったことが志望のきっかけです。
コンプレッサの組立ラインを見学した際、ロボットの活用や自動化の工夫に触れ「自分の経験が活かせる」と直感しました。更に現場の雰囲気も良く、社員の皆さんが楽しそうにやりがいを持って働いている姿を見て、ここで働きたいと強く思いました。
02. 組立の最前線――デジタル×自動化の実践に挑む

――生産技術部電動組立グループの役割やミッションをお聞かせください。
EV向け電動コンプレッサ(モーター搭載型)の組立ラインを準備し、未来のモビリティを支えることが主なミッションです。新しいラインの立ち上げや既存ラインへの新機種導入を推進し、工程の自動化による省人化を実現することで、生産現場の効率化に挑戦しています。さらに、デジタル技術を積極的に活用し、生産準備期間の短縮を目指すことで、スピードと品質を両立させる革新的なものづくりを進めています。
――部署全体の人数や、中途社員の方の割合を教えてください。
電動組立グループはバランスの良い年齢構成で、20代4名、30代3名、40代4名、50代3名です。
キャリア採用を本格的に開始して間もないため、キャリア入社者の比率は生産技術部全体でおよそ5%程度です。
――電動組立グループはどんな雰囲気ですか?
調和を重視し、コミュニケーションが活発な職場です。品質保証や保全、営業企画、製造部など社内のさまざまな部署と密に連携し、合意形成を図りながらプロジェクトを進めています。そのため、個人プレーではなく、チームで協力して仕事を進める文化が根付いており、雰囲気の良いグループだと自信を持って言えますね。
――現在はどんなミッションに取り組んでいますか?
生産準備期間の大幅な短縮に挑戦しています。従来は新ラインの立ち上げに約13か月を要していましたが、2030年までに約7か月へ短縮することを目標としています。単に従来業務の改善でスピードを上げるだけでは達成できないため、デジタル技術やシミュレーション技術を最大限に活用し、業務の進め方そのものを革新する取り組みを進めています。
さらに、残る手作業工程をヒューマノイドロボットに置き換えることで自動化を進め、いわゆる“ゼロヒューマン工場”の実現に向けた検討も強化しています。こうした取り組みを進める一方で、工場全体のCO₂排出削減にも注力し、生産性と環境配慮の両立を目指しています。
――実現に向けた難しさはどこにありますか?
一番の難しさは、シミュレーションと実機の整合を取ることです。すべての物理現象を完全に再現しようとすると、シミュレーションの難易度や計算時間が膨大になります。一方で、簡素化しすぎると現実とのギャップが大きくなってしまいます。現場で使えるレベルの“ちょうどいいバランス”を見極めることは、まだ試行錯誤の段階です。
――最新設備や技術に触れる機会は多いですか?
もちろんです。展示会や社外研修への参加が推奨されており、そこで得た技術や製品について「自分たちの業務にどう活かせるか」をすぐに検討します。優れたセンサーや新しい技術を見つけた際には、すみやかに設備やラインへの導入を検討します。事前検証から実際の設備への導入、評価までを一部署で完結できるのが大きな特徴です。最先端の設備に深く関わり、評価まで自分たちで行えることは、この仕事ならではの大きな魅力ですね。
――海外でのご経験についてお聞かせください。
北米・ミシガンに長期出張した際、日本のラインをそのまま持ち込んでもうまくいかないことを痛感しました。体格や作業習慣、スキルなど前提条件が異なるため、設備側が作業者に歩み寄る工夫が必要だったのです。
日本では、ベテランがラインを熟知していることでスムーズに稼働するケースが多いですが、海外では転職が一般的な文化のため、人の入れ替わりが早く、ノウハウの継承が難しいという課題があります。だからこそ、メンテナンスしやすい設計や、スキルに依存しない誰もが維持管理が容易な設備づくりが重要だと学びました。
――部署内の海外経験者は多いですか?
海外経験者は非常に多く、むしろ海外経験がない人の方が少ないくらいです。主な拠点は北米(ミシガン、ジョージア)、ドイツ、中国、インドネシアで、出張は2〜3週間、長期出向は3~5年ほどになります。
私自身、ミシガンへの出張は当初4か月の予定でしたが、プロジェクトを最後までやり切りたいという思いから延長を申し出て、最終的には約10か月滞在しました。希望すればチャレンジを後押ししてもらえる雰囲気があるのも、この部署の魅力です。
――会社や部署として、挑戦を後押しする風土なのでしょうか?
そうですね、前向きなチャレンジを後押しする風土があります。やりたいことがある場合、その効果を定量的に説明できれば、必要な予算やサポートを受けることができます。挑戦に対して非常に寛容で、積極的に取り組める環境だと思います。
03. 世界の乗り心地を量産で変える――電動コンプレッサ生産技術の醍醐味

――グループごとで、生産ラインの立ち上げや改善など、担当する業務フェーズに違いや特徴はあるのでしょうか?
現在、私が所属する電動組立グループでは、新しい生産ラインの立ち上げを中心に取り組んでおり、直近1年間はその準備に注力しています。グループごとに、新設ラインの立ち上げを担当するチームと、既存ラインの改善を担当するチームに分かれています。
――現場とデスクワークの比率はいかがですか?
比率はタイミングによって変わりますが、平均すると現場とデスクワークはおおよそ半々です。新しいラインの立ち上げ時期は現場での作業が中心となりますが、構想検討や予算策定のフェーズではデスクワークが中心になります。状況に応じて、現場とオフィスの両方で幅広い経験を積めるのが特徴です。
――これまでで一番やりがいを感じた仕事について教えてください。
最もやりがいを感じたのは、EVシフトが加速した2020年頃に、北米・ドイツ・中国・日本の4拠点で同時に生産ラインを立ち上げるプロジェクトに携わったことです。
それまで電動コンプレッサの量産は日本のみで行っていたため、海外でも維持管理できる仕様を新たに開発する必要がありました。そのため、全工程を一から見直し、日本で立ち上げるラインをグローバル展開用の“マザーライン”として標準化し、維持管理しやすい仕様を織り込みました。そのうえで製作し、他の3拠点にはコピーラインを展開しました。異なる規格や条件を調整しながら同時進行するのは非常に大きな挑戦でしたが、やり切ったときの達成感は格別で、ここ数年で最もやりがいを感じた仕事です。
――生産技術者として電動コンプレッサに関わる面白さは何ですか?
自動車の電動化が進む中で、コンプレッサの重要性はますます高まっています。電動コンプレッサは、車室内の空調だけでなく、バッテリー冷却にも使われる、EVに欠かせない存在です。
さらに、EVはエンジン音がない分、わずかな作動音や振動が乗り心地に直結します。そのため、組立後の検査では振動を厳格にチェックし、品質を確認したうえで出荷します。こうしたユーザーの快適性に直結する部分を担えることは、電動コンプレッサに携わる生産技術ならではの面白さだと感じています。
――世界シェア1位という、世の中への影響力が大きい製品に携わる面白さは何でしょうか?
成果が短期間で、しかも大きなスケールで現れることです。世界では年間約8,000万台の新車が販売され、そのうち当社のコンプレッサは約3,000万台に搭載されています。1本のラインで月10万台を生産するため、新設備の導入や改善を行えば、その効果は一気に広がり、数字として明確に見えてきます。膨大な台数を扱うからこそ、改善のインパクトが大きく、そこに面白さとやりがいがあります。
――御社で生産技術として働くやりがいを教えてください。
停止の多い設備の原因を見極め、論理的に仮説を立て、対策を考え実行し、その対策が的中して可動率や手戻りが改善する――そして現場から「助かった」と喜ばれる瞬間が、何よりのやりがいです。
――今までで一番大変だった経験についてお聞かせください。
正直なところ、私は「大変だった」とは感じた経験はありません。結果が出るまでには、失敗から学び直し、いったん元に戻してやり直す――そんなサイクルが続くこともあります。たとえば、部品を追加して改善できるはずが、別の不具合が発生したこともありました。人によっては大変に感じる場面かもしれませんが、私はそれを新たな発見として前向きに受け止めてきました。予想外の失敗から新しいアイデアが生まれ、まさに「怪我の功名」で当初の案よりも良いものができることもあります。
前向きな失敗を咎めない風土があるからこそ、このマインドで挑戦し続けられているのだと思います。
――電動組立グループで働くことで身につくスキルは何でしょうか?
設備自動制御用のプログラミングやロボット制御、画像処理技術、CAEシミュレーションなど、設備系のソフトからハードまで現場で活用できる幅広いスキルが身につきます。
さらに、製造ラインへの大規模な投資を扱う部署であるため、投資回収のシナリオや競争力ある生産を実現するための製造原価を常に考える機会が多く、経営者目線での仕事感覚も養われます。
加えて、安全性と作業性の両立を図るために、多くの部署や関係者と連携する中で、折衝力も鍛えられます。製品づくりの上流から下流まで広く関われる生産技術だからこそ、こうした総合的なスキルを身につけられるのが大きな魅力です。
――幅広いスキルを身につけるための社内教育や支援体制についてお聞かせください。
入社される方のバックグラウンドは多様なため、入社後の集合研修は非常に手厚く、機械・電気・情報の基礎をしっかり学び直します。
配属後はOJTが中心ですが、最近は教育の標準化も進めています。
具体例を一つ挙げると、業務の動画マニュアルを整備し、社内で誰でも閲覧できるように蓄積しています。さらに、新しく配属された方が動画マニュアルを見て「分かりにくい」と感じた点をフィードバックし、その内容を反映して更新する仕組みを整えています。こうした継続的な改善により、実務に即した“生きたマニュアル”として活用でき、新しく入社された方もスムーズに業務に馴染める環境を整えています。
04. オープンに、対等に、フランクに――相談し助け合えるチーム文化

――部署間の連携やコミュニケーションのしやすさは、業務にどのような影響を与えていますか?
当社では、生産技術・設計・営業・事業企画がワンフロアで隣接しており、密な連携が可能です。現在扱っている新製品は形状が特殊なコンプレッサですが、設計段階から擦り合わせができ、設計側の「この方法で作って問題ない?」という質問に即答できます。こちらからの「ここに基準穴が必要」といった具体的な要望も、その場で伝えられます。こうしたシームレスなやり取りにより、生産技術が開発の上流から深く関わり、効率的にプロジェクトを進められることが大きな強みです。
――部署内で、コミュニケーションについて意識していることはありますか?
特に意識して強化しているのが「傾聴」です。役職者ほどまずは最後まで相手の話を聞き、否定せず受け止める姿勢を徹底しています。直近の数年で心理的安全性を高める取り組みが進み、全社的にも“真摯にいろんな人の意見を聞いて最適解を探る”空気が根付いてきました。
――意見の対立や調整が必要な場面では、どんな工夫をしていますか?
一人で抱え込まないことを心がけています。ほかの部署との調整で行き詰まった場合は、すぐに上司やメンバーに共有し、部やグループの課題として一緒に考えます。オープンで対等、そしてフランクに相談できる風土があります。
個人の問題を組織で解決する体制が整っています。
――残業や休日出勤の状況について教えてください。
基本的には、定時退社を目指して業務を割り振っていますが、ラインの状況や業務の進捗状況によっては、個人のワークライフバランスも考慮の上、相談し、残業をお願いする場合もあります。
現在は新規ライン立ち上げに関わっているため、平日に設備調整作業が出来るので、休日出勤は少ないです。
一方、稼働中ラインの大規模工事は土日や長期連休にまとめて実施することがあります。その場合は同日数の代休をまとめて取得できます。
――育児や家庭との両立についてはいかがですか?
全社でフレックスタイム制が導入されており、ライフスタイルに合わせて出勤できます。育児中のメンバーも多く、チームでフォローし合うのが当たり前という風土が根付いているので、お子様の突然の体調不良にも柔軟に対応できます。
――キャリア入社の方の受け入れ体制はいかがでしょうか?
新卒・キャリアに関係なく、配属後は受け入れ教育及び職場でのOJTを行い、また動画マニュアルを活用し学んでいただきます。教育をきちんと受けた状態で業務に入ることができ、業務に携わった後は、定期的な上司との面談により、困り事などをフィードバックする体制もあります。
05. 自ら「こうしたい」を描ける前向きなチャレンジャー求む
――部署で活躍している方の傾向を教えてください。
チャレンジに前向きな方、いい意味で楽観的に挑戦できる方が活躍していますね。
――キャリア入社の方の前職で多い業界はありますか?
自動車業界に限らず、製造業出身が多いです。例えば食品の研究職出身など、技術職の方の入社が多いですね。コンプレッサの専門知識は入社後に学べるため、ベースとなる論理的思考力を持った方が集まっている印象です。
――一緒に働きたい方の人物像をお聞かせください。
チャレンジ精神があり、「こうしたい」を自分で描いて前向きに業務に当たれる方です。
――最後に、応募を検討されている方にメッセージをお願いいたします。
「いいものを作りたい」「改善のアイデアを試したい」「新しいことにチャレンジしたい」という想いをお持ちの方にとって、コンプレッサの生産技術部は面白さと手応えのある職場です。働く環境や福利厚生も整っており、周囲には現場経験豊富で、専門性の高いメンバーが揃っていて、いつでも相談・協力できる環境があります。私たちと一緒に挑戦してくださる方にぜひ来ていただけたらと思います。