企業インタビュー
[ ヤマハ発動機株式会社 ]
企画からシステム設計までを担う、モーターサイクルの電装電子“上流開発”の仕事とは|ヤマハ発動機 モビリティシステム開発本部

左から
ヤマハ発動機株式会社 モビリティシステム開発本部 システム開発部 設計21グループ 東 祥太様
ヤマハ発動機株式会社 モビリティシステム開発本部 システム開発部 プロジェクト3グループ グループリーダー 大橋 直人様
ヤマハ発動機株式会社 モビリティシステム開発本部 システム開発部 プロジェクト2グループ プロジェクトチーフ 村田 真章様
株式会社タイズ 担当コンサルタント 田村 彩奈
株式会社タイズ 担当コンサルタント 安達 篤史
株式会社タイズ 担当コンサルタント 竹内 一心
※所属・役職および組織名称は、取材当時の情報に基づいています。
ヤマハ発動機株式会社は、モーターサイクルを主軸としたランドモビリティ事業に加えて、マリン事業やロボティクス事業、アウトドアランドビークル事業、さらにはファイナンス事業など、多軸に事業を展開しています。
モビリティシステム開発本部 システム開発部は、車両の電装・電子(EE)領域を担当し、企画からシステムレイヤーの設計までを担っています。
今回は、モビリティシステム開発本部 システム開発部のお三方に、完成車メーカーで働く魅力とモーターサイクルのシステム開発に携わるやりがい、部署の雰囲気や開発の体制について、お話を伺いました。
01. サプライヤーからヤマハ発動機へ――転職理由は「エンドユーザーに近づきたい」

――まずは、皆様のご経歴を教えてください。
大橋様:前職は四輪の部品メーカーで、3〜4年ほど実験・評価を担当していました。部品評価を続ける中で、完成車やエンドユーザーまでの距離を遠く感じるようになり、もっと完成車に近い場所で、大きなシステムに関わりながらものづくりがしたいと思ったのが動機です。
加えて当時は、システム制御の重要性が増すと考えており、職域を広げる形で応募しました。面接でお会いした方――入社後の直属の上司になる方との相性が非常に良く、「この人と働きたい」と思えたことも決め手でした。
入社後は2年ほど制御設計を担当し、その後コンポーネント設計へ。企画から生産まで一気通貫で見るプロジェクトチーフの経験を経て、現在は基幹職として、グループ全体のマネジメントを行っています。転職時に目指していた働き方に、かなり近づけている実感があります。
村田様:前職はサプライヤー側でソフトウェア設計を担当していました。「ソフトだけでなく、もっと広い範囲のシステムを見たい」「車両というお客様に近いところでやりたい」と思い、転職しました。
入社の入口は、バイクが面白そうだと率直に感じたことです。バイクに関わるキャリアを考える中で、ヤマハ発動機は自由度が高く裁量も大きそうだと感じたのが入社の決め手です。
入社後はソフトを担当した後、発電機まわりの制御やシステムにも携わり、現在はプロジェクトチーフとして業務をしています。前職に比べて裁量は大きく広がりました。決められたプロセスの中で積み上げるというより、「次はどんなワクワクを届けよう」と、作り方まで含めて考えられる環境です。
東様: 前職はサプライヤー側で、ブレーキの制御設計を担当していました。OEM企業との共同開発に関わる中で、完成車側の役割や仕事の進め方を知り、「自分も完成車側でやってみたい」と思うようになったのが、ヤマハ発動機への転職のきっかけです。
入社後はシステムに関わる機能設計を担当し、その後、電子制御サスペンションの制御設計や車内通信の設計に携わっています。
02. EE領域の上流開発を担うシステム開発部――企画を設計へ落とし込む中枢とは

――システム開発部の役割と、プロジェクト2グループ、プロジェクト3グループ、設計21グループについて教えてください。
大橋様:システム開発部は、車両の電装・電子(EE)領域を担当し、企画からシステムレイヤーの設計までを担う上流開発の部署です。企画内容を具体的なシステムやコンポーネント設計へ落とし込み、開発全体へつなげています。
PJ2/PJ3グループはプロジェクトチーフ(PC)が集まるグループで、EEシステムの企画に始まり、車両開発の上流から下流、生産までを一気通貫でマネジメントしています。グループは、大型モーターサイクルはPJ2、小型モーターサイクルはPJ3、その他RVは別グループといった形で商材ごとに分かれています。
そして設計グループは職務ごとに分かれており、エンジン制御システム、車体制御システム、ワイヤーハーネスといった構成です。
一方、設計21グループは、サスペンション制御等の車体制御システム開発と車内ネットワーク設計を担当しています。
開発プロジェクトでは、PCの下に各領域の設計者が入り、一つの車両機能を作り上げます。車種開発のタイミングで必要な人が集まり、PCが全体をまとめていくイメージですね。
――部署の年齢構成はどのようなイメージでしょうか?
大橋様:年代別の構成は10~20代が16.1%、30代が39.8%、40代が29.3%、50~60代が14.8%となっており、比較的バランスが取れています。
プロパー社員は70%、中途社員は30%ですね。
――業務で使うツールを教えてください。
大橋様:職務によって違いますが、共通して使うのはオフィスツールです。ワイヤーハーネス領域だとCR-5000やNX、シミュレーションではMATLAB/Simulinkのようなツールを使っています。
――設計や作業を外部に委託して「自分では手を動かさない」ケースもありますが、御社はいかがですか?
村田様:自ら手を動かして設計・検討する場面は多いですね。職務によって分担はさまざまですが、会議で取りまとめるだけではなく、社内で作り込み、コード化してシステムとして成立させるところまで踏み込むことが多いです。
――モーターサイクルの制御システム開発ならではの面白さ、難しさはどんなところにありますか?
村田様:モーターサイクルの領域では、EEシステムの進化・複雑化が年々進んでいます。そうした中で、新しい技術の搭載に挑戦できる点は、大きな面白さの一つです。
難しさであり、同時に楽しさでもあるのは、四輪に比べて車両が小さく軽い分、制御の変更による反応がより敏感に出ることです。狙い通りに反応が返ってきた時の手応えは大きい一方で、わずかな調整が挙動に影響するため、設計・検証には高い精度が求められます。
また、モーターサイクルは車両全体を見渡せる規模感であることも特徴です。開発者自身が全体像を把握しながら関与できるのが醍醐味だと思います。
加えてコミューター領域ではコスト制約が厳しいケースも多く、既存技術の組み合わせで「簡便さ」や「楽しさ」といった価値をどう実現するかが問われます。限られた制約の中で知恵を絞る点は、難しさでもあり面白さでもあります。
――技術的に向き合うことが多い課題は何でしょうか?
大橋様:システムが複雑化する中で、制御干渉の扱いや原因部品の特定といったテーマがホットになりやすいですね。コストやサイズに加え、場合によってはメーカー側のレイアウト制約もある中で、どう価値を実現するかは繰り返し向き合う課題だと感じています。
――技術的な提案や改善案を出すときのプロセスを教えてください。
東様:開発モデルごとにチームが編成され、定期的にミーティングが開かれます。そこで議題として挙げることで意見を共有し、実車両仕様への変更案として提案できます。
過去にFI系の制御システム設計を担当していた際は、排気量違いによる影響を踏まえた仕様提案を行い、採用された経験があります。
03. 思い入れが示す“モーターサイクル開発の醍醐味”――責任ある立場で、価値を形にして世に出すまで

――大橋様がこれまで携わった仕事の中で、最も情熱を持って取り組んだ業務についてお聞かせください。
大橋様: 一番印象に残っているのは、先代NMAXのプロジェクトですね。当社の屋台骨になるモデルですし、課題を抱えたまま進めなければならない局面が多かった。そんな中で、初めてプロジェクトチーフ(PC)として任せてもらった案件でもあり、責任ある立場で最後までやり切れた、印象深い経験です。
――楽しかった、というよりは別の感情ですか?
大橋様:「何とかして、最後まで踏ん張り切った」という印象です。難しい問題に直面して、社内メンバーだけでなくサプライヤー企業、さらには他社の有識者の方にまで教えを請いました。時間的な制約がある中、「どうにか立ち上げよう」という一体感もありました。本当に大変でしたが、その分、やり切った実感は大きいですね。
――そのご経験によるご自身の変化や、成長について教えてください。
大橋様:NMAXはグローバルモデルなので取引先も工場も一気に増え、海外工場も含めて関わる範囲が大きく広がりました。その分、求められる視点もコミュニケーションの幅もガラッと変わった感覚がありましたね。
メンバーや関係者を巻き込みながら、「誰にどう動いてもらえば前に進むのか」を常に考え、前向きに動いてもらえる働きかけを意識していました。
企画の最上流から生産までを見る中で開発プロセスへの理解も深まり、PCになってから一気に成長した実感があります。
――コンポーネント設計の立場でも、車両全体に関わることはできるのでしょうか?
大橋様:PCは全体を見渡しやすい役割ですが、コンポーネント設計だからといって車両全体が見えないわけではありません。結局は本人次第で、受け身ではなく「もっと関わりたい」と動けば、部品設計の立場でも関わりは広げられます。コンポーネント設計にもPCにも、それぞれの良さがありますね。
――村田様の思い入れのある仕事について教えてください。
村田様:一番印象に残っているのは、「TRACER9 GT+ Y-AMT 」をリリースまで持っていけたことです。PCとして「TRACER」シリーズの2023年リリースのモデルと、2025年リリースモデルの「TRACER9 GT+ Y-AMT 」を担当してきました。
今回はこれでもかというくらい機能をアップデートしていて、サスペンションの次はブレーキ、さらに通信、と1日の中でテーマが目まぐるしく切り替わる。企画から量産まで約3年かかりましたが、最終的に量産までたどり着けたのは大きかったです。
――大型のシステムならではの面白さは、どんなところにありますか?
村田様:何かが起きたときに、関係するコントローラーがとにかく多いんです。まず「何が起きているのか」を丁寧に捉える必要がある。例えばエンジンが止まっても、「エンジンが悪い」で簡単には片づけられない。その難しさが、面白さでもありますね。
扱う範囲が広い分、同時にいろいろな領域を見るので、人によっては大変かもしれませんが、私にとっては幅広いテーマに触れながら進められるところが魅力です。
――コミュニケーションや情報の取り方で、心がけていたことを教えてください。
村田様:意識していたのは大きく2つです。1つは、できるだけ直接会いに行くこと。対面だと「実は……」という本音や重要な情報が、ふと出てくることがあるんですよね。
もう1つは、情報を「どこまで取るか」を決めることです。何でも追いかけるときりがないので、今回やりたいことに必要なラインを見極めて、いったん区切るようにしていました。
――東様の思い入れのある仕事を教えてください。
東様:まさに今取り組んでいる、車内通信ネットワークの設計です。二輪の車内通信は歴史的に見ると四輪より浅く、管理のスキームについてはまだ実設計やプロセス寄りの部分が残っているのが現状です。そういうところで困ることが多いので、スキームや流れを整えていく活動を続けています。まだ道半ばですが、一番力を注いでいるテーマですね。
――転職して、成長できている実感はありますか?
東様:あります。前職の知識は確実に活きていますし、決定的に異なるのは裁量の大きさです。意思決定に関わる人や、車両・車体の設計を担当する人たちと調整しながら、例えば「もっと楽に走れるように、このシステムで何ができるか」というように、抽象的な要件を具体的な技術に落とし込んでいく。そこが前職にはなかった面白さであり、やりがいですね。

04. 相談できる仕組みと空気感——開発現場のコミュニケーション設計

――残業や出張、休日出勤の有無について教えてください。
大橋様:働き方は個人の裁量に任せているケースが多いです。開発状況によっては残業が必要なタイミングもありますが、一段落したら有給休暇を取るなど、全体として自由度は高いと思います。休日出勤は基本的にありません。
――家庭との両立など、ライフスタイルとのバランスが取りやすい環境でしょうか?
大橋様:担当業務にもよりますが、在宅勤務やフレックス勤務など選択肢は比較的広く、ライフスタイルに合わせて調整しやすい環境だと思います。
そのうえで仕事はチームで進めるので、上司や同僚、開発関係者とは事前にしっかり共有・相談しながら進めています。
――相談のしやすさについて、他社との違いを感じることはありますか?
村田様:あります。前職では直属の上司に相談する場面が多かったですが、今はどちらかというと、開発に向けて集まったチームの中で相談しながら前に進めることが多いです。
――困ったときや判断に迷ったとき、相談できる環境はありますか?
東様:開発モデルごとにチームを作っており、開発部門のほか、サービス部門など他部門メンバーもアサインされています。定期的にチームミーティングがあるため、さまざまなジャンルの困りごとをその場で相談できる環境です。
――日々の開発業務の中で、上司や先輩とはどのようなコミュニケーションを取っていますか?
東様:部署にもよると思いますが、私のチームは出社率が高いので、何かあれば直接話しに行くことが多いです。
一方で在宅勤務が多いチームでは、Teamsチャットなどを使ってコミュニケーションを取っています。
とても話しやすく、ちょっとしたことでも気軽に相談できます。仕事の話だけでなく、他社のコンセプトモデルや業界の記事など、業務外の話題を交わすこともよくあります。
――新卒入社と中途入社で、働き方や期待値に違いはありますか?中途入社者への教育やサポート体制についても教えてください。
東様:一番大きな違いは、仕事を任せられるスピード感だと思います。中途入社の場合は即戦力として期待される部分が大きく、基本的には入社後早い段階から仕事を任されます。
新卒のようにテーマ設定がある体系的なOJT制度はありませんが、教育担当に近い形で先輩社員が付き、フォローを受けながら業務を覚えていくことが多いです。必要なタイミングで相談しながら進められるので、感覚としてはOJTに近い形で仕事を身につけていけると思います。
05. 幅広い領域の開発現場で、発信して動ける人がチャンスを掴む

――「裁量が大きい」点以外で、御社で働く魅力について改めて教えてください。
東様:大きく2つあります。
1つ目は働きやすい環境です。有給も取りやすいですし、フレックスもかなり使いやすい。子どもを送ってから出社するなど、ライフスタイルに合わせて調整しやすいですね。 もう1つは完成車メーカーならではの魅力です。自分が携わった車両に、実際に「乗り手」として触れ、その仕上がりを体感できる。ものづくりが好きな人には大きなやりがいだと思います。
――村田様は現場によく足を運ばれているとのことですが、一緒に働くなら「こういう人だと仕事がしやすい」「ぜひ仲間に来てほしい」という人物像はありますか?
村田様:個人的には、「いろんなことに興味を持って動ける人」ですね。例えばサスペンションに取り組んでいるときも、ブレーキをかけたらどうなるか、車両の動きがどう変わるか、と関連領域に目を向けられると、知識の幅も影響範囲も広がっていきます。
当社は外から見ると大きな会社に見えるかもしれませんが、実際は人数も限られていて、四輪のOEMと比べると規模は小さいです。だからこそ一人ひとりが担う範囲も広い。興味を持って広げていける人は合うと思います。
東様:裁量がある分、興味の幅が狭いと仕事の範囲も小さくなりがちで、良いものづくりにもつながりにくいです。だからこそ、関心を広げて自分の言葉で発信できる人は活躍できると思いますし、一緒に働きたいですね。
――転職して良かった点を教えてください。
村田様:一番は、やりたいことができている点です。製品を通じてバイクの楽しさを届けたいという思いが実現できる環境があります。システムはどんどん進化しているので、それに関わりたい方には良い職場だと思います。
東様:やれることの幅が広がって、やりたいことに挑戦できています。「これを作りたい」と思ったときに、技術的な実現方法を提案できる。そこがやりたかった部分なので、入って良かったなと思っています。
大橋様:2人と重なるところもありますが、完成車メーカーとしてエンドユーザーに商品や感動を届けられる達成感は大きいですね。
私自身「やりたい」と思ったことを発信するタイプなので、やりたいことができている実感があります。手を挙げればチャンスを掴める会社ですし、そこが転職して良かった点です。専門性で悩みすぎるより、「やりたい」という気持ちがあるならチャレンジしてほしいです。
――最後に、応募を検討されている方にメッセージをお願いいたします。
大橋様:先ほども触れた通り、システム開発部は職務領域がとても広く、求められる専門性は担当領域によって少しずつ変わってきます。
ただ、一番大事だと思うのは「自分なりのこだわり」や「熱意」を持っていることです。何に対してでもいいので、譲れない軸がある方は確実に活躍できると思います。
自由に意見を言える雰囲気はありますが、言わないとチャンスを取りに行けない面もある。だからこそ、自分から発信して動ける方にとっては、本当にやりたいことができる会社です。ぜひそうした志を持つ方をお迎えし、共により良い製品づくりを追求していければ嬉しいです。