挑戦者から戦略的な技術者集団へ——ニューフレアテクノロジーが歩んだ四半世紀と次なる成長戦略

挑戦者から戦略的な技術者集団へ——ニューフレアテクノロジーが歩んだ四半世紀と次なる成長戦略

電子ビームマスク描画装置で世界トップクラスのシェアを誇る半導体製造装置メーカー、ニューフレアテクノロジー。同社は従業員数1,000名を超えており、年間100名以上のキャリア採用を計画しています。

2002年の創業から約四半世紀にわたり培ってきた技術力と組織文化、そして異業界人材も含めた採用強化の背景について、常務取締役の大歳研司様に話を伺いました。

01. 顧客の指導から対等な議論へ——世界トップシェアを支える技術力の源泉

顧客の指導から対等な議論へ——世界トップシェアを支える技術力の源泉

ニューフレアテクノロジー 常務取締役 大歳研司様

——電子ビームマスク描画装置で世界トップクラスのシェアを築かれていますが、この技術的優位性はどのようにして生まれたのでしょうか。

当社の主力製品である電子ビームマスク描画装置は、1976年から株式会社東芝と東芝機械株式会社で開発を始めました。その後1995年、NEDOプロジェクトを通してEBM-3000の開発を本格化させました。加速電圧50kV、近接効果補正機能、ステージ可変速、高電流密度などの技術を武器に、先端半導体メーカーで採用いただき、事業の足掛かりをつかむことができました。50kVを採用した電子ビームマスク描画装置はシェア拡大に大いに貢献し、初の輸出機の出荷を経て当時の描画装置のトップシェアを獲得、そして2002年には東芝機械の一事業部から分社し、株式会社ニューフレアテクノロジーが設立されました。

特筆すべきは、創業初期におけるお客様との関係性です。外販経験が乏しかった私たちに対して、お客様は辛抱強く指導してくださいました。米国の半導体メーカーでは、我々のようなベンダーを指導する文化が徹底しており、担当メンバーは技術面だけでなく、品質管理やビジネスの進め方についても本当に徹底的に教わりました。この経験が、当社の品質重視の企業文化の礎となっています。

マルチ電子ビームマスク描画装置

マルチ電子ビームマスク描画装置

——当時の受注獲得に向けた取り組み方について教えてください。

当時も現在も受注を獲得する上で競合は存在しますが、2000年頃は、とにかく競合に負けたくないという思いで開発に取り組んでいました。本当に必死だったと思います。気がついたらシェアという形で成果を結んでいました。

初期の頃は本当にがむしゃらで、先が見えない中で一生懸命やっていました。今は技術力がついてきたので、自分たちの強みを生かした戦略を立て、競合他社を分析して戦略的に臨んだりできるようになりました。方向性がかなり明確になってきて、ずいぶんスマートになったと感じています。

——お客様との関係性も変化してきたのでしょうか。

大きく変化しました。以前は指導を受けるという形でしたが、最近は発注元とベンダーという関係性はありつつも、対等にしっかり議論できるレベルになってきています。弊社のエンジニアは最先端のメーカーとの議論の場に参加することで、多くのことを吸収できますし、活躍を通じて経験が蓄積するようになると、直接お客様とやり取りする立場になり、さらに成長できます。

——研究開発投資についての考え方をお聞かせください。

半導体業界では、研究開発を継続することが、競争力を維持するための必須条件です。当社は収益の変動にかかわらず、売上高の10%以上を研究開発費に投資する計画を立てています。2030年に必要な装置に向けた開発は、既にスタートしています。先を見据えたロードマップを作成し、そこから逆算して必要な技術開発を進めているのです。

基本的な考え方として、必要な開発費はしっかり確保するという姿勢は創業時から変わっていません。確保できる範囲で、かつ必要な額は、開発費を計上するという方針を貫いています。

02. 自然と生まれた「フラットさ」——真面目に挑戦し続ける組織文化

——御社の組織文化について、「フラット」という評価を聞きますが、これはどのように形成されたのでしょうか。

実は私たちはあまりフラットだという認識を持っていませんでした。インターンシップの学生から「ニューフレアはフラットですね」という声が漏れ聞こえてきて、初めて気づいたという経緯があります。外からの評価によって認識した形です。

この文化が生まれた背景には、東芝の研究所と東芝機械のメンバーが一緒になったという経緯があると思います。研究所は元々フラットな雰囲気でしたし、当時のメンバーはみんな若く、お互いに議論をぶつけ合わないと物事が進まない状況でした。上司も非常にフレンドリーで、上司に意見することも普通にありました。そうした関係性がずっと続いてきたのだと思います。

——組織文化を語る上で、他に特徴的な点はありますか。

当社には非常に真面目な文化があると思います。何よりコンプライアンスを徹底する姿勢が強いのではないでしょうか。

品質についても同様です。先ほどお話したお客様からの指導によって、品質の重要性が技術部門を中心に全社へ徹底されました。品質をしっかり確保していくという姿勢を、長年にわたって受け継いできています。

——一方で、挑戦を続ける姿勢も重視されているとお聞きしました。挑戦には、ある程度の失敗もつきものかと思います。社員の挑戦を、どのように後押しされていますか。

失敗した時にどう次の手を打つかを重視しています。半導体業界では2年ごとに世代が進むため、大きな失敗をすると次の世代の装置を逃してしまう可能性があります。そのため、事前検討をしっかり行い、計画通りに進められるよう努力する意識は強いかもしれません。

重要なのは、計画通りにいかなかった時のリカバリー体制です。計画通りにいかないことがわかった段階で、それを責めるのではなく、納期に向けて何をすべきかを全員で考えます。対策を立てて計画を作り直し、新たにスタートを切る。そういう修正力、リカバリー体制はしっかりしていると自負しています。担当者が孤立しないよう、ゴールから逆算してチームでしっかりと形にする体制を整えています。

03. 一人ひとりのキャリアを支える——経営層が本気で取り組む人材育成とキャリア支援

一人ひとりのキャリアを支える——経営層が本気で取り組む人材育成とキャリア支援

——年間100名以上の大規模採用を計画されていますが、人材育成についてどのような取り組みをされているのでしょうか。

当社では、半導体製造装置業界に限らず、幅広い業界から未経験者も含めてキャリア採用を拡大しています。経験の有無に関わらず、従業員には当社で働くことで成長でき、業務を通じて結果として成長を実感できる体制づくりを目指しています。

その施策の中核となるのが、NFT-WBC(NFT-Well Being Committee)という教育委員会です。この委員会では、各階層に必要なスキルをマップ化し、そのスキルを取得するための教育プログラムを準備しています。半年に1回、全ての取締役と部長を集めて委員会で議論しながら、何をすべきか、どう進めるべきかを検討・実施する仕組みです。

この委員会の特徴は、部長クラスが議論する前に、役員が集まって準備を行うという点です。部長に何を投げかけるのか、部長から上がってきた意見に対してどう対応するのかを、役員全員で議論しています。ウェルビーイングをしっかり実現するために、経営層が本気で取り組んでいるのです。

——キャリアパスの構築についても、かなり力を入れて取り組まれているとお聞きしました。

はい、今まさに人事システムを刷新している最中です。これは非常に重要な取り組みだと考えています。
組織の拡大に応じた、人事制度のアップデートは欠かせません。当社の「良い」と言われている文化を継承しながら、より良い仕組み作りを技術者に偏ることなく、役員も交えて検討・実施しています。試行錯誤する部分もありますが、すべての従業員の意見をフラットに取り入れることを心掛けています。

具体的には、ローテーションや画一的なキャリアパスではなく、個々のキャリアパスに沿って、目指す方向性に合わせた経験を積めるスキームを作ろうとしています。基本的な考え方として、トップダウンで一律に決めるのではなく、個々のキャリアパスを詰めながら、その人に合った道筋をナビゲーションしていく仕組みです。個々の社員が幸福感を持って仕事に取り組めることを目指して、一人ひとりに寄り添ったキャリア形成を支援していきたいと考えています。

——役員と社員が直接対話する機会も設けているそうですね。

はい、定期的に対話の場を設けています。例えば、新しく主任になったメンバーと役員が2対3、あるいは3対3程度で対話する機会を作っています。あらかじめテーマを提示しておき、それについて話してもらいながら役員と対話する形です。

この取り組みの目的は双方向のコミュニケーションです。一つは、経営層が何を考えているかを伝えること。もう一つは、担当ベースの皆さんが何を考えているか、どういったところに不満を持っているか、あるいはどういうところが良いと捉えているかを聞き取ることです。どれだけ率直な意見が聞けるかはわかりませんが、こうした場を通じて相互理解を深めていきたいと考えています。

——異業界からの転職者も積極的に受け入れているそうですね。

当社は総合科学・総合工学の結集によって装置を開発しています。多様な技術の融合が求められるため、異業界からの転職者も多く活躍しているのです。

具体例を挙げると、自動車業界からはエンジンのハード設計開発経験者が装置内部の機構ユニット開発を担当し、IT業界で大規模ソフト開発に携わっていた方が装置の高速大容量データ処理のソフト開発を手がけています。電機業界からは、制御システムのソフトウェア開発経験者が、製造装置の調整ソフトウェアの開発実装やデータ解析等の業務を担っています。

——個人の成長を支えるという観点で、働き方についてはどのような制度がありますか。

キャリア形成を支援する上で、柔軟な働き方ができる環境は非常に重要だと考えています。当社では在宅勤務やフレックスタイム制度が既に定着しており、コアタイムもありません。そのため、仕事を中断して子供を迎えに行き、戻ってきてから再開するといった働き方も可能です。午前中はクリーンルームでの実験のため出社し、午後は在宅で業務を行うなど必要に応じた柔軟な働き方もできます。
コロナ禍を機に働き方が大きく変わりましたが、コロナ前に戻すのではなく、良い面をしっかり継続する形で現在の体制を整えています。個人の都合を許容できる範囲でしっかり尊重し、業務に取り組んでいます。

04. 描画装置に次ぐ事業戦略——三事業で目指す次のステージ

描画装置に次ぐ事業戦略——三事業で目指す次のステージ

——現在の事業ポートフォリオと今後の戦略について教えてください。

当社は現在、電子ビームマスク描画装置(描画装置)、マスク検査装置(検査装置)、エピタキシャル成長装置(エピ装置)の3事業を展開しています。事業ポートフォリオのキーポイントは、描画装置の優位性維持と成長、そして検査装置とエピ装置の成長です。

それぞれの市場は、いわゆるブルーオーシャンではありません。しかし各装置の市場は確実に存在しています。その市場の中でどのようにシェアを拡大し、維持するかを念頭に置いて戦略を考えています。レッドオーシャンではありますが、確実な市場があるからこそ、いかにシェアを取っていくかという戦略を立て、しっかりと実行していくことに手ごたえを感じています。

——各装置の現状と戦略について、具体的に教えてください。

描画装置では、VSB(マチュアノード向け)で優位なポジショニングにあります。マルチビームの先端対応は競合他社との競争状態ですが、マチュアノードとの連携によってより優位な立ち位置を確保できないか検討しています。

検査装置は現在、市場における認知拡大のフェーズにあります。私たちの装置自体の価値を認識していただき、その成果を市場にアピールすることに注力しています。一方で、お客様の求める世代と装置がマッチするよう、先端特化型だったポートフォリオも広げています。それによって、お客様との接点も増えています。

エピ装置については、高速回転に当社の強みがありますが、それだけで勝てるわけではありません。競合他社が出来ること、お客様から要求されていることは基本的に実現できるようにならなければなりません。その上でどう差別化していくかを考えて行くことが大切です。お客様と具体的な協議しながら、当社の特徴をアピールしつつ、お客様の要望にもしっかり応えていくという形で進めています。

——みなとみらいの新拠点についてお聞かせください。

当社の事業では、装置開発が極めて重要です。しかし近年、事業が急速に拡大し人員も1,000名を超える規模となり、開発環境の拡充が不可欠となりました。そのため、さらなる事業成長に向けて新杉田地区の開発・製造スペースを強化・拡充します。これに伴い、主に間接部門を中心にみなとみらい地区に執務スペースを確保し、成長機会を逃すことなく事業を進めていきます。

みなとみらいの新オフィス

みなとみらいの新オフィス

——最後に、転職を検討されている方へメッセージをお願いします。

成長と協調の意志がある方を求めています。キャリアの可能性は示すことができますが、あくまで可能性です。場や機会を活かせるか、機会を掴めるかは、本人の意志と行動次第だと考えています。

当社の装置は大きなシステムであり、開発、製造、販売、保守、いずれの業務においても他のメンバーや他部門との連携、協調が不可欠です。自身の成長と成功が会社の成長と成功に繋がり、さらにはその成功が次の活動の原資となって、新たな成長と成功に踏み出す。そうしたサイクルの中で、成長と協調の意志を持って一緒に活動していただける方を待っています。

事業面では、2024年度の営業利益率は10%台後半ですが、他の大手半導体製造装置メーカーに肩を並べる水準に引き上げていきたいと考えています。そのためには、市場で価値を認められつつある検査装置とエピ装置が、市場で確固たるポジションを確保していくことが不可欠です。描画装置メインからの脱却を図り、三つの柱に育てていきます。

描画装置を含むすべての事業で確固たるポジションを確保するため、技術開発を継続しその成果を装置に実装し、市場に投入していきたいと考えています。そのために、これから来ていただく方と一緒に、強みをどんどん作っていきたいと思っています。「これまでの強みや資産にこだわらず、新しい強みを自分たちの手で生み出すんだ」というバイタリティのある方に、ぜひ来ていただきたいですね。

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佐藤 真大跳

株式会社タイズ

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