企業インタビュー
[ サイレックス・テクノロジー株式会社 ]
「切れない無線」を実現する——サイレックスR&Dセンターの技術と環境

左から
サイレックス・テクノロジー株式会社 R&Dセンター センター長 兼 基本技術開発室長 三浦 秀和様
同社 業務支援センター 人材開発室 リーダー 望月 みわ子様
株式会社タイズ 担当コンサルタント 瀨脇 晴斗
日本有数のサイエンスシティ、京都府の学研都市「けいはんな」エリアに本社を構えるサイレックス・テクノロジー株式会社は、1973年に創業し、無線技術と組込み技術の豊富な経験を活かし、ハードウェア・ソフトウェア・クラウドを一体で提供する研究開発型企業です。「切れない無線通信」の創造を掲げ、Wi-Fi、ローカル5G、Wi-Fi HaLow™などのネットワーク製品に加え、無線環境の監視や最適化を行うクラウドサービスを組み合わせることで、医療や産業分野で“確実な接続性”を高品質で実現しています。
設計から運用までを一貫してサポートし、現場の信頼性と生産性向上に貢献しています。
なかでもR&Dセンターは、お客様や当社企画部門の要望を整理し、最適な形に仕上げて確実に製品化する中心的な開発組織です。
今回は、そのセンターで働く技術者と採用担当者に、仕事のやりがいや育成の取り組み、技術を楽しめる環境、そして自由度の高い職場風土についてお話を伺いました。
01. 入社動機と会社の魅力——キャリアの軌跡

――まずはお二人のご経歴をお伺いします。
三浦様: 新卒で1998年に入社しました。当時の社名は「日本コンピューター工業株式会社」。大学ではソフトウェアを研究し、プログラマー志望でした。合同企業説明会で、プリントサーバーの開発・販売に注力する同社を知り、「おもしろいものづくりをする会社だ」と直感。面接では、開発出身の社長の熱量と風通しの良い雰囲気に触れ、「ここなら自分の考えを形にできる」と入社を決意しました。
入社1年目の夏からプロジェクトに参画し、製品の中核部分の開発を担当しました。翌年には米国で2〜3か月の開発業務も経験しました。以後、コア技術やOEM開発を重ね、10〜15年目頃からマネジメントへ。現在はR&Dセンターのセンター長兼、基本技術開発室の室長を務めています。
望月様:2019年4月に中途入社しました。通いやすさが入社の動機でしたが、入社後すぐに、理系企業ならではの面白さと妥協しない技術文化に惹かれました。育休などの制度を当たり前に活用できる風土、人間関係の良さも大きな魅力で、直近では厚生労働省が認定するくるみんマークも取得しました。サイレックスは5社目になるのですが、最も長く勤めています。
総務を経て、2021年頃に人事へ。現在はリーダーとして、採用や企画を中心に担当しています。
02. 無線の不安定を“安定”へ——徹底した最適化


サイレックス・テクノロジー本社
――御社の事業の強みを教えてください。
三浦様: 有線・無線機器を自社製品とOEMの両輪で磨いてきた経験から、“確実で安定した接続”に強みがあります。企画・開発・生産まで一貫対応できる体制を備え、「切れない無線空間」を実現します。現場での“切れない”をお客様と一緒に実現する姿勢を評価いただいています。
――これまでの主力領域とお客様像を教えてください。
三浦様: 主力はオフィス領域の「ワークプレイス」です。たとえばスキャナーなどのオフィス機器に無線技術を組み込み、利便性と信頼性を両立させています。ほかにも海外の医療機器メーカーや、親会社である村田機械株式会社向けの案件では各工場への横展開が進んでいます。
――オフィス機器の領域で選ばれている理由や差別化のポイントはどこでしょうか?
三浦様: 環境に左右されやすい無線の安定を確保し、“切れない”を徹底している点です。加えて、お客様の機器や要件に合わせた最適化・カスタマイズまで踏み込めることが大きな差別化要因になっています。こうした品質と技術支援への姿勢が高い評価をいただき、長期にわたり継続採用いただくケースが多いのも特色です。
――今後伸ばしていきたい領域を教えてください。
三浦様: 医療や工場・物流領域です。従来の“有線=切れない”を無線でも実現し、無線ならではの機動性で生産性向上に貢献します。
無線×AIの取り組みも進行中で、医療・工場分野での活用を見据え、基本技術開発室が具体化を進めています。

主力製品のディスプレイコーナー
03. 想像を超える、一気通貫のものづくり——横断連携で新たな価値を

――R&Dセンターの概要とミッションを教えてください。
三浦様: 開発・技術部門として、お客様や当社企画部門の要求を正確に捉え、確実に製品・サービスへと実装するのが基本です。同時に、新技術の探索・実装にも注力し、その成果を社内外へ提供します。
ミッションは、変化の速い時代の潮流を取り込んで発想へ転換し、医療・工場領域で新しい技術やサービスを生み出すこと。無線×AIといった新たな価値創造も、R&Dセンターが牽引しています。
――R&Dセンターはどのような組織構成ですか?
三浦様: 「4+2」の体制です。ユニットが4つに分かれており、①ハードウェアを含む開発、②村田機械向けの工場製品、③アクセスポイントなどの無線インフラ、④クラウドを含む広域ネットワークです。
「+2」は基本技術開発室と、R&Dセンターの運営を担う管理部門です。
――開発部門のやりがいや、それを支える体制を教えてください。
三浦様: 最大のやりがいは、お客様の「そんなことまでできるのですね」という驚きに立ち会えること。想像を超える最適化や実装が実を結んだ瞬間こそ、積み上げてきた技術が報われるときです。
無線の技術は難易度が高いですが、お客様から「サイレックスの製品は壊れず安定しているから安心」というお声を頂戴しています。製品そのものを高く評価いただけるのは本当に嬉しいですし、開発メンバーの努力の賜物ですね。
当社は企画・設計・実装・検証・第三者評価・製造移管まで一気通貫で関われます。開発からも改善提案を主体的に出せる土壌があり、営業に同行して現場で要件を深掘りする機会もあります。
人員は、ハードはユニット1に集約し、ソフトは各ユニットに分散しています。ハード寄りのご相談にはハードが一次対応し、ソフトの部分はソフトの担当が一緒に詰めます。
同一フロアで声を掛け合い、複数の技術を横の連携で組み合わせて仕上げるイメージですね。
――横連携だからこそ実現できた事例はありますか?
三浦様: クラウド×自社製品の連携プロジェクトです。クラウド側と製品側の開発チームがタッグを組み、構想から実装まで約3年かけて共同開発しました。これは工場の無線環境を可視化・改善するソリューションで、現場機器で無線状態を収集しクラウドへ送信、現状分析から改善提案までを提示します。
無線の知見が要であるため、無線専門チームが並走し「この症状ならこの対処」といった現場ナレッジをアルゴリズムやUIに反映していきました。
――新規事業にはよく取り組まれているのでしょうか?
三浦様:そうですね。Wi-Fiだけでなく、ローカル5Gや長距離無線にも取り組み、お客様に最適な方式を常に検討しています。新規事業は要素技術チーム発のアイデアから走り出すケースが多いですね。
――R&Dセンターとしてのビジョンを教えてください。
三浦様:チームのメンバーには、技術者として新しい技術への興味を“種”として育ててほしいと思っています。その関心を「世の中やお客様に本当に必要か」という視点へ発展させ、プロトタイプで素早く具現化し、反応を踏まえて磨き込む——ショールームのように実際に“触れて確かめる”場を整え、良い手応えが得られれば製品化へとつなげていく。この流れを継続的に回し、興味から価値へ、価値から事業へと確実に橋渡ししていきたいと考えています。
04. 現場に早期参画し、全体像を掴む——任せて育てる成長設計

――R&Dセンターの雰囲気を教えてください。
三浦様:2階のワンフロアに全員が集まるフラットで風通しの良い環境です。製品をきっちり仕上げることは大前提ですが、会話が活発で和気あいあいとした雰囲気です。技術好きのメンバーが多く、来社いただいたお客様からも雰囲気の良さを評価いただいています。
――メンバーの年代や組織構成はどのようになっていますか?
三浦様:全体で約110名。年代は20代25%/30代30%/40代30%/50代以上15%の構成です。
全4ユニットのうち、ユニット1は約40名で、ハードウェアと製品検証、加えて一部のソフトウェアメンバーが所属します。他の3ユニットは各20名規模で、その他の人員は基本技術開発室と管理部門です。
――入社後、どのように仕事を任せていくイメージですか?
三浦様: 全体研修後、配属先でOJTを行います。先輩社員が1名ついて、開発・製品・技術の基礎をキャッチアップ。一定の理解ができた段階でプロジェクトへ参画し、実践で伸ばしていく方針です。早期参画のほうが全体像が腑に落ちやすいですから。プロジェクトの流れを掴んだら段階的にリーダーも任せていく——そんなイメージです。
若手の方の場合も同様ですが、まずは小規模案件の一部からスタートし、慣れに応じて担当範囲と規模を広げていきます。
――プロジェクトのチーム人数はどれくらいですか?
三浦様: 多くて10名強です。コンパクトな編成で意思決定が速く、横連携もしやすいのが特徴です。
――中途入社の方は、入社後どのくらいでプロジェクトに携わるのでしょうか?
三浦様:平均で半年ほどです。即戦力として期待する一方で、過度なプレッシャーや放任はしません。レビューとフォローを厚めに行い、早期から安心して実務に入れるよう支援します。

R&Dセンター職場風景
05. 制度は柔軟、評価は公正——海外協業で広がる挑戦と成長の機会

――出張の頻度はいかがでしょうか?
三浦様: 出張は少なめです。お客様とのやり取りはリモートが中心で、直接訪問は年1〜2回ほど。東京などの展示会に行くことはありますが、長期出張はほぼありません。
例外として、検証目的の短期出張があります。村田機械の事業所(愛知・犬山、三重・伊勢)で1〜2週間、先方と共同で評価を行うケースです。
――1人あたりの担当案件数を教えてください。
三浦様: 基本は1〜2件です。ハードウェア担当ですと3件を並行することもあります。
――残業時間や働き方の柔軟性について教えてください。
三浦様: 残業は平均で月15時間前後。繁忙期に増えることはありますが、技術職としては少ないほうだと思います。
望月様:働き方としては、時差出勤で始業・終業を前後にずらすことができます。有給は1時間単位で取得可能で、飲み会やライブなど私用にも柔軟に使えます。テレワークは月5日まで全社員が利用でき、事情があれば追加も相談可能です。自由度の高さは好評ですね。
――周囲の環境の魅力を教えてください。
三浦様: 学研都市に位置し、研究施設や公的機関が周辺に多く、協業しやすい環境です。たとえば、株式会社国際電気通信基礎技術研究所様とは頻繁に連携し、当社製品を常設して研究開発に活用いただいています。
望月様: 最寄り駅の学研奈良登美ヶ丘駅や祝園駅からは社用バスを運行しています。神戸や滋賀から通勤しているメンバーもおり、バス利用で比較的アクセスしやすいです。遠方で通勤が難しい方向けに社宅制度も導入しています。
――海外拠点との連携はいかがでしょうか?
三浦様: 週次でリモートの定例会を実施し、米国・インド拠点と進捗共有しています。Teamsやチャットも活用し、距離を感じにくい運用です。
また、インドは開発専任体制です。こちらで設計した案件をパーツ単位・プロジェクト単位で委託し、双方で仕上げます。日常的に関わる機会がありますね。
年1回は社内コンペ「E1グランプリ」を開催。開発者に限らず「こんなものを作りたい!」というアイデアを提案し、プロトタイプを持ち寄って投票します。インドからの参加もあり、表彰では大いに盛り上がります。
――中途入社の方のキャリアパスについて教えてください。
望月様: 挑戦を歓迎する文化なので、新技術に触れる機会が多く、手を挙げた方にチャンスが回ってきます。新事業の立ち上げ期が重なれば、その分野のパイオニアになれる可能性もあります。
スペシャリスト/ジェネラリストの両コースがあり、専門性の追求も、教育・マネジメントや管理職へのステップも用意しています。
三浦様:体感ではスペシャリスト/ジェネラリストの比率は半々。若手のうちは技術を磨き、のちに「その技術で何を成すか」を軸にマネジメントへ進む方もいます。制度だけでなく、自然に選択できる文化が根付いています。
――評価・目標管理はどのような運用ですか?
望月様: “結果”と“結果までのプロセス”を合わせて成果と捉える成果主義です。全社KGIを起点にKPIを設定し、半期ごとに振り返るサイクルで運用しています。KGIは各階層に連鎖し、最終的に個人目標へ落とし込みます。会社全体が同じ方向を向ける設計です。
上司との1on1は週1回。業務はもちろん、プライベートの相談もしやすい雰囲気です。
――学習支援や資格支援はありますか?
望月様: 会社指定の外部研修の受講機会があり、社内研修も随時実施。合格時に受験費用を会社負担とする資格もあります(対象は規程あり)。
教育予算も確保し、開発を支える学習投資を強化しています。人材開発支援助成金の活用も整備中です。
社内には“教えたがり”の社員が多く、聞けば徹底的に答えてくれます。技術を楽しみながら学びたい方に、ぴったりの環境です。
06. 「好き」が出発点——ものづくりを楽しむ人が輝く職場

――社内で活躍している方の共通点を教えてください。
三浦様: まずは“ものづくりが好き”であること。ここが出発点だと思っています。経歴やバックグラウンドは本当にさまざまで問題ありません。入社後の教育やOJTで土台を作り、個性ごと力を伸ばしていけます。
また「この技術がないと入れない」といった必須条件も基本的にはありません。社内のスペシャリストがしっかり伴走し、段階的にできることを増やせる体制です。
無線は一般的に触れる機会の少ない特殊領域ですが、入社後に腰を据えて学んでいただければ十分に活躍できます。
望月様:「まずやってみよう」と一歩踏み出せる方が伸びています。失敗もプロセスとして評価されますし、部署の垣根が低いので、周囲を巻き込みながら前に進める方は活躍の幅が広がりますね。
――どういう方が向いていますか?
三浦様:部内では、ドローンを分解して技術検証する“試して学ぶ”取り組みも実施しています。こうした環境を楽しいと思える方には、非常に合う職場だと思います。
望月様: 創業50周年を機に、未来に向けた「silex Core Values」を策定しました。どれか一つでも共感いただけるなら歓迎です。
中でも “Enjoy the Moment”——何よりも楽しむことを忘れずに挑戦していく、というメッセージが象徴的な価値観。仕事も技術も楽しめる方には、きっとフィットする会社です。

「silex Core Values」からイメージを膨らませた作品の壁画
――エンジニア視点で、御社で働く魅力は何ですか?
望月様:当社は、エンジニアが力を発揮しやすい“ちょうどいい規模感”の組織です。中小企業ならではの柔軟さに加え、親会社である村田機械の安定した事業基盤があるため、事業の先行きを過度に心配することなく、自由度高く開発に打ち込めます。これは、エンジニアにとって大きな魅力だと考えています。
また、大手企業では“大勢の中の一部”と感じることもあるかもしれませんが、当社では違います。人数規模的にも一人ひとりの意思が反映されやすく、村田機械も当社の主体性を尊重してくれます。不必要な制約に縛られることなく、裁量を持って開発を前に進められます。
――最後に、応募を検討されている方にメッセージをお願いいたします。
三浦様:ものづくりが好きな方に、ぜひ来ていただきたいです。私たちは“無線のプロ集団”。無線に関わることを一つでもやってみたい、技術で社会に貢献したい——そんな志を持つ方を歓迎します。
いま無線はあらゆる分野に広がり、可能性はどんどん大きくなっています。日常で当たり前に使われる技術だからこそ、実はとても奥が深い。そこにワクワクできる方なら、きっと楽しめます。
「技術をもっと伸ばしたい」「仲間と一緒にプロダクトを形にしたい」——そう思える方、ぜひ私たちと一緒に挑戦しましょう。
望月様: 社歴・学歴・年齢は問いません。意見をオープンに言える空気があり、個々の強みを発揮でき、成果がきちんと評価される環境です。そんな環境でチャレンジしたいと思ってくださる方を、お待ちしています。
